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ヒナドレミのコーヒーブレイク 11月・北の地にて
一雨ごとに、寒さが増して来た。この分では、今年も相当量の雪が降るかもしれない。北のこの地に越して来て1年になるのだが、寒いのには なかなか慣れない。寒がりの私が この地に越してきたのは、夫が友人の別荘を譲り受けたためだ。
庭のガラス戸を開け、外に出る。思った以上に寒くて、上着を取りに一度部屋へと戻った。上着を着て、再度 庭に出ようとした。庭の芝生に、茶色い色をした鳥が一羽いた。一瞬スズメかと思ったが どうやら少し違うようだった.。
この地に来てから、野鳥を目にする機会が増えた。夫が買いそろえた鳥の図鑑を引っ張り出して 調べてみようと思った。
私は、鳥に気づかれないよう そっとガラス戸を閉め、しばらくは家の中から鳥を見ていた。二階の書斎から下りてきた夫が すぐに「おう、ツグミじゃないか」とそれに気づき、ガラス戸に近寄った。次の瞬間、ツグミは大空高く 飛んで行った。
「コーヒーいれましょうか?」私が聞くと、夫は「そうだな」と答え、私たちは図鑑を見ながらコーヒーを飲んだ。
「ツグミは、ムクドリやヒヨドリと似ているんだよ」夫が言った。写真を見てみると、確かによく似ている。「ムクドリは灰色がかっていて、ヒヨドリは尾羽が長いから、それで見分けられる」
夫は鳥に関して とても詳しい。夫に言わせれば「ただの趣味だよ」と言うが、それ以上の知識があると 私は思っている。
鳥の話でひとしきり盛り上がった後のこと。最近めっきり日が短くなったこの季節だから 寒くならないうちに、と 私は庭の脇に置いてある薪を取りに行った。まだ11月の半ばだが、もうすぐ初雪が降るかもしれない。
私が薪を取ってくると、夫がまだリビングにいて「そういえばさ、ツグミは冬にだけ飛来する渡り鳥なんだよ。夏にはいなくなって 声を聞かなくなる。冬が終わると口をつぐむ鳥ということで、ツグミと呼ばれるようになったそうだよ」と教えてくれた。
夜になって外気が下がり、私は薪ストーブを点けた。オレンジ色をした火が、勢いよく燃え盛っている。
思えば、この地へ来て1年 色々なことがあった。季節が巡る度に 新しい発見があった。(私はここでこうして、夫と二人で美しい星を見ながら年を重ねていくんだわ)しみじみと、そう思った。そして星を見ようとカーテンを開けると、空から白いものが降っていた。「あなた 初雪よ、見て」私の声は、まるで少女のそれのように弾んでいた。
完