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きょうの日記: 本に挟まったレシートは

けっこう前に、赤瀬川原平の「芸術原論」を古本で買った。
古本屋にしかないだろう、と狙いを定めていたら、結局池袋のブックオフで出会った。

元気がなくて本を読めなかったのだが、また最近インプットのための栓が開いて、本を読めるようになった。積読してあった「芸術原論」を読み始めた。

途中、新品購入時のレシートが挟まっていた。
開いてみると、紀伊国屋書店で買ったもののようだ。日付は、2011年3月7日。

そのとき日本に住んでいたり、日本に縁があった人なら、少し身構えてしまう日付だ。

まさか数日後に、東日本が大変なことになるなんて、この本を買ったときには思わなかっただろう。

このレシートは「芸術原論」の中で、震災も疫病も生き延びてきたのだ。

この本を買った人は、最後まで読んだのだろうか。
地震の後にも読み続けたのか、しばらく経って読み始めたのか、直後から心を落ち着けるために読んでいたのか、はたまたレシートが挟まっていたところでやめたのか、レシートはただのメモで挟んでいたのか、、、
レシートを挟んだその瞬間と前後に広がる彼女もしくは彼の生活が、少しずつ解像度を上げながらこちらに向かってくるような感じがした。

一番よかったのは、そのレシートが赤瀬川原平とトマソンの邂逅(発見?)について書かれているところに挟まれていたことだ。

トマソンとは、赤瀬川原平が定義した無用の長物「超芸術トマソン」のことである。四谷の純粋階段などがその代表。

トマソンについてわかったからやめたのか?もう一度読みたかったのか?超芸術のレポートとかを書いていたのか、、、?
とにかくわからないけれど、震災の前にそういう生活があって、そして震災が起きて、おそらく購入者の人生も続いていったはずだ。

思いを馳せずにはいられない一葉のレシートであった。

いただいたサポートでココアを飲みながら、また新しい文章を書きたいと思います。