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departure-Ep8

Ep紹介:イギリスで初めて住んだ部屋は刑務所並みに狭い。そんな部屋を上手くデコレーションショーンする友達。スーパーマーケットでは目を引くものばかり。


スーパーマーケットについて。

色々なスパーがありましたが、イギリスで最も有名なのはテスコだと思います。

本当にテスコはどこにでもありました。

次に有名なのはセインズベリーかな、私の中では。

他にもアウディーとかモリソンズとか、ウェイトローズとか、マークスアンドスペペンさーとか、アスダとか、挙げればたくさんあるのですが、テスコの話します。

店舗の大きさにもよりますが、結構何でも売ってます。日本のスパーも最近そうなのかな。

食器とか、洋服下着、本、あと、グミやキャンディの量り売りコーナーがあったり、電気ケトルとかも売っていたかな。

あとは、エスニック食品、メキシコ料理、中華料理、日本食コーナーとかありました。

よくトルティーヤが入ってるタコスキットとか買っていましたが、結構高いんでうよね、そういうの。

テスコで買って良かったものは足元に置く小型の電気ヒーターです。

イギリスの家って、窓際とか壁に白いヒーターが備え付けられているんですが、なぜか、私が住んだ部屋はどれもそのヒーターが思うように動いてくれなくて、部屋が寒かったんですね。

友達の部屋とかに行くと、ちゃんとヒーターが作動していてめっちゃあったかいのに、私の部屋のヒーターは温度をマックスにしているのに、ヒーターに触ると、ぬるいみたいな。

というわけで、テスコで小型ヒーター買いました。

同じヒーターを買った友人はそれを足元用で使っていたけど、私は部屋全体を暖めるために部屋の中心に置いて使いました。

威力がかなりあったので、狭い部屋だと、余裕で全体を温めくれました。

第8話 Hooverでお掃除

一週間経ってそろそろ床が汚くなってきた。

私は廊下の端に 無造作に置かれた、Hoover(フーヴァー)、赤いボディに楕円形の大きな目が描かれている掃除機に目をやった。ふざけた顔をしているところが一番嫌いなポイント。

岩を引きずっているみたいに重たくて、しかも、全然吸えない、これを部屋まで引っ張って、掃除機をかける。

部屋を見渡してみる。

床は綺麗になった。それ以外は?
狭い部屋、大きな机、10センチしか開かない窓、シャワーとトイレが近すぎるバスルーム、スプリングが背中に感じられるマットレスに粗末なベッド。

留学生活なんてきっと誰もがこんな感じ。
森鴎外も、夏目漱石も、多分。

お金をかけたりすれば、結構マシになると思う。

例えば、私の斜め前の部屋のファラとか。

彼女の部屋をノックする。

「ねえ、入っても平気?」

「ちょっと、待って。」

ファラが出てくる。

「はい、どうぞ。」

ファラの部屋は寮に入ったその日に、彼女の母親と義理の姉によってバージョンアップがなされた。

まず、ベッドのマットレスは、Argos(アルゴス)で最も良いものに変えられ、布団と枕はマークスアンドスペンサーで調達された。

部屋の蛍光灯が嫌なので、机のスタンドの他に、フロアライトが一つ追加され、さらに、入り口近くに貼り付けるタイプの全身鏡が貼られた。

そして、彼女の部屋はこのフラットの中で今のところ、誰よりも快適になった。

暖色系のライトの色に包まれた部屋に入って、彼女のベッドの上に腰を下ろす。

弾力があって、少しお尻が弾む。ナイトテーブルの上には、英語タイトルのペーパーバックが置いてあった。

二人でベッドに寝っ転がって、YouTubeをみる。

ファラとは知り合って一週間になった。


彼女はサウジアラビア人の父親とベルリン出身の母をもつミックスで、黒くてたっぷりとしたウェーブヘアに、バサバサのまつ毛と大きな目を持った女の子だ。

夕方、ファラと、イジー(イザベラ)と、ナターシャと、四人でテスコに行くことになった。

テスコに入って早々、ベーカリーコーナにみんなで吸い込まる。

ノーラはチョコレートチャンククッキーの袋をつかむと、シールを破いて、中身を食べ出した。

「ちょっと、何やってるの?」

「後で払えばいいのよ。」

イジーは笑ってるだけし、ナターシャもフルーツのコーナーでぺたんこの桃を見ている。

ファラはクッキをー食べながら、1ポンド硬貨を入れて、大きなカートを取った。

「なんでカートを使うのに1ポンドが必要なわけ?」

「なんでって、持ってかれちゃうからよ」

「誰がカートなんか持っていくの?」

「誰っだって持っていくわよ。」

ファラは私にもクッキーをくれた。これがやわらかくて、あまりにも美味しかったので、私も一つ買うことにした。

夕食にテスコで買った鶏の胸肉を焼いてみたけれど、30分以上焼いても中まで火が通らない。

窓の外はもう暗くなっていて、料理している自分の姿が窓に反射している。

私は胸肉を切り刻んでもう一回焼いて、皿に盛り付け、塩と胡椒を振って食べた。

「うわっ、彼女の歌最高。」

ファラとナターシャはYouTubeでオーディション番組を見ている。

イジーは自分で音楽を聞きながら、夕食のシリアルを口に運んでいる。

そして、私の方を見ると、イジーはヘッドフォンを首にかけて、

「ねえ、これ知ってる?」

と私にPCを見せた。

そこには龍か如くのタイトル画面が開かれていて、イジーが目を輝かせるので、

「ああ、日本のマフィアのやつね」

とわたしは戸惑いながらも話を合わせた。

チキンはパサパサして、味気のないタンパク質の味だった。


夕食が終わったら、さっき、テスコで買った、ファミリーサイズのベン&ジェリーのクッキードー味をみんなで分けて食べた。

クッキードーとは、焼く前のクッキー生地のことで、これがめちゃくちゃ美味しい。

みんな、スプーンで、クッキードーの部分ばかり狙う。

コンロを使ったせいか、それとも窓際のヒーターのおかげか、部屋はこんがり暖かい。

窓には私たち四人が肩を寄せ合って、アイスクリームを夢中で食べる姿が映っている。

第8話を読んでいただきありがとうございます。PodcastとSpotifyでは音声でお楽しみいただけます。


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