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海外取引上のトラブル(1)

今までは様々な観点から、トラブルはなるべく内部に留めていたのですが、こちらではこういった話題も率直に取り扱いたいと思います。

なお、以下は過去に生じたことであり、取引先を悪意をもって非難するものではありませんこと予めご了承下さい。

あくまでも、取引上に生じたことのある問題と、その原因と対策について考察した内容となっております。

①品質の問題

色々な原因がありますが、制作に限って言えば、個人差が出やすい製法、扱い難い材質、そして経験の少なさは、品質の安定度を低下させます。

例えば、材質の例ですと、比較的軽微なものになりますが、黒檀鳥木という素材の表面に、ごく浅い亀裂が見られるケースがありました。

これは乾燥が要因で、湿度の高い南方で採れた材料を、低湿度の北方で加工することによって発生するとのことでした。

対策としては、作業場の湿度の調整などがありますが、その他、油を染み込ませておく等を次回使用する際は試すつもりです。

もっとも、そもそもとして、より難易度の低い、あるいは各工房の慣れた手法や材質を選ぶのも、無難な選択肢ではありますが、なかなか捨てがたいこだわりや材質もあるので、あまり保守的にはならないようにしたいとも思います。

他には、現地における、梱包を原因とした国際輸送中の破損や、検品不足などは比較的見られますが、これらに関しては、それぞれ、個包装にしたり、クッションを増やしたりする。現地での検品の他、当店での検品を念入りに行い、仕様と不良を分類するなどの方法を採っています。

②素材間違い

例えば、模造刀で、以下のケースがありました。

非磁性の軟質ステンレス(オーステナイト系)で依頼 → 完成品は強磁性の刃物用ステンレス製(マルテンサイト系)

これは当店としては最も深刻なトラブルの内のひとつで、過去に複数件、経験がありますが、いずれのケースでも、共通して、温度差がその背景にありました。

当店では、材質に関して、特に初めて制作を依頼する業者様へは、工業規格の確認や、理由の詳細な説明を、動画を交えて行うのですが、それでも、淡々とやりとりをしていると、誤解というよりは、大丈夫だろうという感覚で、素材がその業者様にとって扱いやすいものに変更されたり、他には、そもそも実際にはできないが、できるとして受けて、そのまま取引が進んでしまったりする場合がありました。

自分にとって重大でも、伝え方により相手にとっては些事に感じられるということは、よくあることですが、海外との取引だと様々な背景の違いがあるので、その確率は高まるものだと考えます。

そのことを踏まえ、現在は、このような事態にならないために、初めての制作依頼に際しては、より強く伝える他、制作前と完成後に、規格のより念入りな確認と使用する材質の磁性チェックを動画で行って頂くなどの方法を採っています。

ただ、ある程度取引先の選択肢が固まってきたので、模造刀に関しては、必要にならない限りは、今後しばらくは新規開拓はしない予定です。

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