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作家の夢と発表方法の模索──「書けば出版できる」幻想からの目覚め
「小説を書き上げれば、自動的に出版への道が開ける」と考えていた。今思うと雑すぎる考えだが。作品に絶対的な愛着があったし、完成させれば自然と誰かに見出されるものだと信じていたのだ。
小説を書くという行為そのものが「作家になること」とイコールだと思っていた。他の方法をあまり想定していなかった。
現実は、作品が仕上がっても出版関係者からオファーが来るわけでもなく、どこかに投稿するにしても、思った以上に選択肢は限られている。
さらに、作品をどうアピールするかまでは考えが及ばなかったため、当初は「書き上げること」をゴールとして動いていたにすぎなかった。
そんな私が、いかにして“書くだけではダメだ”と気づいていったのか。その過程を振り返りながら、これから小説家を目指す人や、同じような夢を抱く人に向けて何かヒントを残せればと思う。
小説家を目指した原点
「小説を書く=作家になる」という思い込み
私が小説を書き始めたのは、“物語を作ることで自分を保ちたい” というシンプルな理由だった。頭の中に浮かぶキャラクターたちを動かし、彼らが織り成すドラマを描き出す作業は、本当に楽しかった。同時に、「この作品が完成したら、自然と書籍化されて、自分はプロの作家になれるのでは」という甘い幻想も抱いていた。
振り返ってみれば、「小説家になるにはどうするか」など体系的に学んだことはなかった。出版社への持ち込みや新人賞への応募が王道ルートとは聞いていたが、どこか“自分とは別世界の話”のように感じていた。結局、作品をなんらかの形にしたい想いだけが先走りし、具体的な戦略はなかった。
完成させれば自然と道は開ける?
当時の私が信じ込んでいたのは、「面白い作品を書きさえすれば、どこかで誰かの目に留まる」という根拠のない思い込みだった。もちろん、作品のクオリティが高いことは大前提だと思うが、今考えると、それだけで出版の話が舞い込むわけではない。
書き手は、作品に絶対的な自信を持っていることが多い。しかし、出版社や編集者もビジネスとして書籍を扱うため、“売れる仕組み”や“ターゲット読者”が見えないと手を出しにくい。そこにはマーケットの原理があり、ただ「面白い」だけでは不十分なのだと、痛感することになる。
発表方法が決まらない葛藤
限られた選択肢──公募・Web小説・文学賞
作品が仕上がってきたころ、「どうやって読者の目に触れさせるか」を考え始めた。思いついたのは、Webでの公募や文学賞への応募、あるいは「Web小説として発表する」という数少ない手段だけだった。
それでもどの方向に進むか決められずにいた。私自身が「どこで誰に読まれたいのか」が明確でなかったからだ。
さらに言えば、作品を“読まれる”ためのアピール方法にも疎かった。当初は「書き上げるだけで精一杯」だったので、Xやブログで発信する余力すらない。
“出来上がったものを提出すれば、あとは評価してもらえるだろう”という受け身の姿勢に終始していた。今考えると、「届け方」を模索する視点が欠落していた。
書くだけでは終わらない──宣伝やブランディングの重要性
当然ながら、プロの作家でも出版社が販促に力を入れてくれないと、読者の目に触れずに埋もれてしまうケースがあるという。ましてや無名の新人が、出版未経験でただ作品を投げるだけでは、多くの読者を獲得するのは難しい。
そう気づき始めたころ、私は初めて「作品をどうやってアピールするか」を真剣に考えるようになった。ただし当時はまだ、「具体的に何をすればいいのか」はわからなかった。
SNSで作品の宣伝をする、電子書籍として自費出版する、コミュニティを作る…。それらの選択肢を試そうにも、どれが自分に合っているのかを見極める知識がなかったのだ。
作品発表の選択肢は思った以上に多い
創作活動をしていると、「出版」や「文学賞応募」以外にも多様なルートがあることに気づく。たとえば、
同人誌:イベントで頒布したり、BOOTHや通販サイトで販売する
電子書籍(Kindle など):個人で気軽に配信できる
Web連載:小説投稿サイトや自作サイトなどで連載形式にして読者を増やす
SNS連載:短文形式で日々投稿し、ファンを育てる
コミカライズや動画化:メディアミックスに挑戦する
作品がどういう形で読者に届けば一番魅力的に映るだろうか。いずれも一長一短はあるが、「書くだけで終わり」から脱却し、自分で“見せ方”をプロデュースする意識が重要だ。
“作品完成=ゴール”ではない
当時の私と同じように、「とりあえず小説を完成させればいい」と思っている創作者は少なくない。でも、現代では作品ができた先に、“届け方”が問われる時代だ。出版社や編集者に頼るだけでなく、自分で宣伝の手段を持つ必要がある。
たとえば、SNSやブログで執筆過程を公開したり、ファンとの交流を図ったり。電子書籍化して世界規模で販売してみるのも一つの手段だ。行動しているうちに、作品の新しい魅力に気がついてくる。
クリエイター同士の交流や情報共有
作品の発表方法に迷ったとき、似た境遇のクリエイターと繋がることで、多くのヒントが得られる。たとえば、SNS上の創作者コミュニティでは「どのプラットフォームで反応が良かったか」「どういった工夫でファンを増やしているか」といった情報が共有されていることも多い。
そこで得られる知見は、出版の道だけにこだわらない柔軟な発想を育んでくれる。
書くことがゴールではなかった
振り返ると、かつての私は「小説を書いて完成すれば、何とかなるはずだ」という思い込みに囚われていた。
作品をどのように届け、どのように宣伝していくかがますます重要になっている時代だ。書くこと自体がゴールなのではなく、いかに読者の元へ運び、読んでもらい、ファンを作るかが、次のステップになる。
書くことに集中したい。気持ちは痛いほどわかる。けれども、「どこへどう届けるか」「どうやって興味を持ってもらうか」を考える作業もまた、創作活動の一部だということを、今では強く感じている。
今日から4回にわたって、私自身が経験してきた試行錯誤や失敗談を通じて、“ただ書くだけでは終わらない”創作のリアルを伝えたいと思う。
次回は“小説をコミカライズしよう”と考えた経緯と、そこで初めて芽生えた“読者目線”についてお話しする予定だ。これから小説を書こうとしている人や、すでに執筆していて今後の展開方法を考えている人の参考になれば嬉しい。
▼サイト立ち上げ日記 その1
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