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長下肢装具に関する研究と実践報告のまとめ

はじめに

長下肢装具(Knee Ankle Foot Orthosis; KAFO)は、膝関節および足関節を固定・支持する医療用装具であり、特に脳卒中後の片麻痺患者やその他の重度下肢障害を持つ患者のリハビリテーションにおいて重要な役割を果たします。KAFOの使用は、患者の歩行機能の改善と日常生活動作(ADL)の自立を促進し、転倒リスクを軽減するために設計されています。本稿では、複数の研究と実践報告を基に、KAFOの効果、その移行期間に影響を与える因子、および実践における留意点について詳述します。

KAFOの重要性と役割

脳卒中後の片麻痺患者は、麻痺側下肢の筋力低下、関節の不安定性、バランス障害を伴うことが多く、これらが歩行能力に大きく影響します。KAFOは膝関節を固定し、足関節の安定性を向上させることで、これらの問題を補正します。栗田慎也と髙橋忠志の研究によれば、急性期病院でKAFOを作製した脳卒中片麻痺患者は、FIM(Functional Independence Measure)の歩行および階段のスコアが著しく改善し、退院時には装具の使用が減少することが示されています¹⁾。

KAFOの適応と使用目的

KAFOは、特に重度の下肢麻痺や膝関節の不安定性を持つ患者に適応されます。脳卒中後の片麻痺患者、脊髄損傷患者、筋ジストロフィーなどの神経筋疾患患者がその対象となります。

KAFOからAFOへの移行の意義

長下肢装具(KAFO)から短下肢装具(AFO)への移行は、リハビリテーションの進行における重要なステップです。KAFOは膝関節を含む広範囲をサポートするため、初期のリハビリテーション段階で使用されますが、患者の筋力やバランス機能が向上するにつれて、より軽量で装着しやすいAFOへの移行が推奨されます。田中周らの研究によれば、脳卒中片麻痺患者が長下肢装具から短下肢装具(Ankle Foot Orthosis; AFO)へのカットダウン移行期間には、入院時の半側空間無視(USN)の重症度が強く影響し、USNの重症度が高い患者ほど移行期間が延びる傾向があることが示されています²⁾。そして、上野奨太らの実践報告では、回復期リハビリテーション病棟におけるKAFOを用いた歩行練習の期間とその移行に関連する因子として、下肢Brunnstrom Recovery Stage、Scale for Contraversive Pushing(SCP)の合計点、FIM運動項目、年齢が挙げられました³⁾。

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