KAFOからAFOへの移行期間
タイトル
脳卒中患者における長下肢装具から短下肢装具へのカットダウン移行期間に関わる因子の検討 ~回復期リハビリテーション病棟入棟時の因子を用いて~
著者名
岸 広樹、渡辺 光司
雑誌名
東北理学療法学
公開年月日
2021年
研究の問いや目的
本研究の目的は、回復期リハビリテーション病棟に入棟した脳卒中患者を対象に、長下肢装具(KAFO)から短下肢装具(AFO)へのカットダウン移行期間に関連する因子を明らかにすることである。特に、入棟時の患者特性が移行期間にどのような影響を与えるかを調査した。
研究や実験の方法と結果
方法
対象は2017年1月から2019年12月までに当院回復期リハビリテーション病棟に入棟し、KAFOを必要とした脳卒中患者のうち、最終的にAFOへカットダウンし、歩行自立または監視レベルに至った38名である。患者特性として、年齢、性別、脳卒中の既往歴、脳卒中のタイプ(脳梗塞/脳出血)、病側、発症から回復期入棟までの期間、Fugl-Meyer Assessment下肢項目(FMA-LE)、感覚障害の有無、半側空間無視(USN)の有無、FIM運動項目(mFIM)、FIM認知項目(cFIM)を調査した。
カットダウン移行期間は、回復期入棟日からAFOのみの装具療法へ完全に移行した日までの期間として定義した。統計解析には単変量解析と重回帰分析を用い、カットダウン移行期間に関連する因子を特定した。
結果
対象者のカットダウン移行期間の平均値は50.9±27.8日であった。単変量解析の結果、FMA-LE、USNの有無、mFIM、cFIMにおいてカットダウン移行期間との有意な相関が認められた。重回帰分析の結果、カットダウン移行期間に関連する独立した因子としてFMA-LE(p<0.01)およびmFIM(p<0.01)が抽出された。これにより、回復期入棟時の下肢運動機能と日常生活動作の自立度がカットダウン移行期間に影響を与えることが示された。
研究や実験の結果から得られる影響
本研究の結果は、回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者のリハビリ計画において、KAFOからAFOへの移行期間を予測する際に重要な知見を提供する。特に、入棟時のFMA-LEとmFIMの評価が、移行期間の長期化を予測する指標として有用であることが示唆された。これにより、リハビリテーションスタッフは、患者の個々の状態に応じた効果的なリハビリ計画を立案し、歩行自立の達成を支援することが可能となる。
この論文の結論
回復期入棟時より歩行練習においてKAFOを必要とした脳卒中患者を対象に、KAFOからAFOへのカットダウン移行期間に関連する因子を調査した結果、FMA-LEおよびmFIMがカットダウン移行期間に関連する独立した因子として抽出された。これにより、回復期入棟時の麻痺側下肢運動機能および日常生活動作における運動項目の自立度が、移行期間の長期化に関連することが示唆された。本研究の知見は、リハビリテーション計画の策定や患者の歩行機能向上に役立つものである。