装具切替の予測因子
タイトル
脳卒中片麻痺患者における長下肢装具処方例でのカットダウン移行期間に影響を及ぼす入院時因子の検討
著者名
田中 周、武藤 友和、吉田 真一、鈴川 活水
雑誌名
理学療法科学
公開年月日
2017年
研究の問いや目的
本研究の目的は、長下肢装具(KAFO)から短下肢装具(AFO)へのカットダウン移行期間に関連する入院時因子を特定することである。特に、脳卒中片麻痺患者における入院時の身体機能や認知機能が、カットダウン移行期間にどのように影響するかを検討する。
研究や実験の方法と結果
方法
対象は、2012年4月から2015年8月までに当院回復期リハビリテーション病棟に入院し、KAFOが処方された後にAFOへカットダウンした脳卒中片麻痺患者43人である。対象者は、再発した症例や両側大脳障害を有する症例、入院中に急変した症例を除外して選定された。
調査項目は、年齢、性別、発症から入院までの期間、発症からKAFO完成までの期間、入院からKAFO完成までの期間、カットダウン移行期間、病型、感覚障害の有無、半側空間無視(USN)の種類と重症度、下肢Brunnstrom Recovery Stage(BRS)、motor Functional Independence Measure(mFIM)、cognitive FIM(cFIM)である。USN重症度は福井の片側性視空間失認の重症度分類に基づき、grade0からgrade5までの6段階で評価した。
統計解析には、カットダウン移行期間と各因子の相関をSpearmanの順位相関係数で検討し、関連する因子の独立した影響度を評価するために二項ロジスティック回帰分析を実施した。
結果
対象者の平均年齢は65.8±13.1歳で、カットダウン移行期間の中央値は48.0±20.4日であった。カットダウン移行期間を基準に、早期カットダウン群(48日未満)と遅延カットダウン群(48日以上)に分類した。
相関分析の結果、カットダウン移行期間と関連があった因子は、USN重症度、下肢BRS、mFIM、cFIMであった。二項ロジスティック回帰分析の結果、USN重症度がカットダウン移行期間に対する独立した規定因子として抽出され、USN重症度が高いほどカットダウン移行期間が長期化することが示された(オッズ比2.785、95%信頼区間:1.266-6.128)。
研究や実験の結果から得られる影響
本研究は、脳卒中片麻痺患者において、入院時のUSN重症度がKAFOからAFOへのカットダウン移行期間を予測する重要な因子であることを示した。この結果は、リハビリテーションプログラムの計画や装具処方において、USNの重症度を考慮することで、より効果的なリハビリテーション計画を立案できることを示唆している。特に、USNの重症度に応じた適切な治療アプローチを実施することで、カットダウン移行を迅速に進めることが可能となる。
この論文の結論
本研究の結果から、脳卒中片麻痺患者におけるKAFOからAFOへのカットダウン移行期間に最も影響を与える因子はUSN重症度であることが明らかになった。これにより、入院時のUSN重症度を評価することで、カットダウン移行期間を予測し、リハビリテーションプログラムをより効果的に計画するための有用な情報が提供された。今後の臨床では、USNの重症度に応じた包括的な治療アプローチが求められると考えられる。