未遂
何か書きたい。何か書きたいと思った。ただ、書きたいと思うだけでは文章は紡げない。何について書こうか。冬の煙草の味? 最近あったこと? 何も書くような出来事は起こっていない。行動をしていないからである。していないというよりも、できないという方が、正しい気がする。
冬の晴れた空は目が眩むほどの快晴で、雲ひとつなく、まさに散歩日和といった感じだった。おまけに今日は風も強く吹いていない。絶好の機会だ。ただ、家から出るのはそんなに簡単なことではなく、着替えるのが面倒だったり、髭を剃るのが億劫だったり、いろいろな障壁が存在している。これを甘えだと言われたらそれまでなのだが、このような身体になってしまうと、それらはとても大きな壁に見える。僕は結局パジャマのままゲームをしていた。FC25。サッカーのゲーム。
Laura day romanceを聴き流していた。最近は音楽に助けられている。Laura day romanceだけが、僕を救ってくれるわけではない。羊文学やサニーデイ・サービス、きのこ帝国、サカナクションだって、いつだって僕を救ってくれる。音楽はいつでも「そこ」に居てくれる。作詞ができたらなぁと思う。作詞ができたら、見ず知らずの人に「この歌詞良いな」と思ってもらえたら、どれだけ嬉しいだろうか、考える。文章を書くのは好きなのに作詞ができないのは、少し違うと思っているが、いざ書いてみようと思うとキーボードをフリックする手が止まる。あぁ、考えることができないんだ。考えることができないから、詞が書けないんだ、と思う。第一、僕は楽器がこれっぽっちもできないから、作詞ができたとしてそれをメロディーに乗せることができない。できないことばっかりだなと思った。今の僕は、できないことが多い。
自傷行為をしようとした。去年の夏みたいに。煙草に火をつけ、ひと通り吸い終わったあとに、吸殻を肌に押し付ける行為。これが僕にとっての自傷行為だった。これを、またやろうと思った。思ってしまった。早速庭に出て、煙草を吸う。吸って吐いて、だんだん呼吸が荒くなる。心拍数が上がる。いざ吸い終えて吸殻を押し付けようと思ったとき、夏のことを思い出した。夏は左の手首に4箇所吸殻を押し付けた。5箇所だったかもしれない。痕になったのが4箇所というだけで、本当はもっとたくさん吸殻を押し付けていたかもしれない。その左手首を見て、「やめよう」と思った。今回はバレなさそうな右足の甲にしようと思ったけど、やめた。怖かった。あの肌の焼ける感覚、ジュッという音、水膨れした肌。あれを見るのはもうごめんだと思った。自傷行為ひとつもできない弱い奴になってしまった、とも思った。これは自傷行為そのものや、過去に自傷行為をした自分を褒めたりそういうことが言いたいのではない。ただその思いよりも、「怖い」、「嫌だ」が勝ってしまった。正直言うと、自傷行為は気持ちがいいものである。あくまで個人の感想だが、あの胸がスっとなる感覚、心の晴れ渡る感覚は、自傷行為でないと、自傷行為をするに至るまで追い込まれないと、得られないものだと思う。でもできなかった。怖かった。
自傷行為を企図するほど、自分は何に追い込まれているのだろうか。全くと言っていいほど検討がつかない。ひとつ言えるとしたら、休学を延長するかしないかの選択がもうすぐに迫っているということぐらいか。これか。早く休学を延長したいと、親に言わないと。けど、まだ言えない。言おうとすると緊張するし、喉になにか詰まったかのような錯覚を覚える。これは休学、退学を申し出たことのある人しか分からないと思う。この独特な辛さ。これさえ無ければ、無ければ、無ければ……。