習作だった僕の神、終演。〜演出の感想その1〜
「習作だった僕の神」無事終演いたしました。
ご来場頂いたお客様、関係者、ありがとうございました。
お客様の反応を見ていると、多くの方の心に残る公演になったのかな、と思います。誇りです。
そんな演出や役者の裏話を残していきたいと思います。
写真はゲネ写真が来たら追加しますね。
「習作だった僕の神」の意味
「習作」ってなんぞや、と思われた方も多いかと思います。
意味的には「練習作」みたいな感じですね。
この言葉には、色々な意味が込められています。
「習作だった 僕の神」という晃希の言葉。
「習作だった僕 の神」という佐藤稔の言葉。
そして最後は
「秀作だった僕の紙」という佐藤紗良の言葉。
お客様の中で「白という漢字が使われてるのは偶然?」と仰った方がいらっしゃるのですが、
途中まで偶然です。
タイトルを横月と御徒町のドトールで決めた時は、私も気づいていませんでした。
けど、台本が上がって家で読んでいて
「白やん!!!!」と思ったのです。
白、本当はあんな感じに演出するつもりなかったんですよね。
もっと達観した感じにしたかった。
けれど、習作という漢字の中の白を見て
「この子をひとりの女の子として描こう」と思ったのです。
結果的には大成功だと思います。
紗良の生き様が、皆様の心を励ましたのではないか、と。
習作でも秀作でも神でも紙でも
自分はかけがえのないたったひとりで
その「自分という名の神さま」を信じていてほしい、と願うばかりです。
紗良、または白が起こした厄災
物語が1時間くらい進むと、同級生達にいじめられる紗良と後悔する稔の場面に差し掛かります。
私たちはあの場面を厄災と呼んでいて、本番前に必ず一回通していました。
あそこ10分もあるんですよ……体感短いですよね……
ちなみにA組で一回12分あった回がありました。音楽無くなったわ。
あの場面、解説という解説がない上に役者が感情の暴力をこれでもかというくらい振るってくるのでただ圧だけで理解してしまうと思うのです。
実は、この厄災、本番1週間前に足されたシーンです。
元々アンサンブルは出なかったし、何なら神楽も暁も出なかった。
紗良をいじめて、稔が「謝れない」と言って、姫に剣を渡して晃希と話して終わりだったんです。
あのシーン足して良かったなぁ。
一言しかセリフがないのですが、「先代」という役があります。
兵吾と仁那の父親ですね。逆キャストの兵吾が演じてます。
ちなみに名前は「ケンイチ」です。(横月と勝手に呼んでる)
先代と神楽は言わば盟友で、
「お前になら背中を預けられる」と先代は神楽に伝えます。
先代は、子供達を神楽に預けます。
なぜならば隣村(ニエが住んでいる村)と、厄災による食糧不足で戦争をしていたから。
結果、先代の村は勝利しました。負けた隣村は、賠償金とでも言うのでしょうか、生贄を姫が目覚める度に渡すことになります。
けれど、先代は村に帰って来なかったのです。
父を守らなかった神楽、父が死んだ原因となる厄災を起こした紗良を守った神楽は、仁那から恨まれます。
一方兵吾は、厄災の時5歳(!)設定なので、神楽をそこまで恨んでいません。
というか、厄災の記憶はない設定になってます。
後述しますが、ここの兵吾が2人とも天才なんですよね……音響やりながら兵吾しか見てなかった……笑笑
この厄災の原因、第一は紗良が「もう絵は描かない」と言ったこと。
絵を描かないということは、村から神がいなくなり滅びるということ。
紙を破くように破壊されていくんですよね、イメージとしては。
けれど、滅びる村を見て、紗良は「こんなの私は望んでいない」と思い、村は立て直す兆しを見せます。
しかし、その時現実世界で紗良は交通事故にあってしまいます。
これ、誤解されてしまったなぁと思ったのですが、
スケッチブックの世界で死んでも現実で死ぬことはありません。
佐藤稔の中で存在が消えるだけなので、現実の人物に影響はないのです。
じゃあ何で晃希は倒れたの?というのは
単にスケッチブックの世界にどっぷり浸かりすぎて現実で動けないだけなんですよね。
紗良はそのへんうまくやっていて、半分現実半分スケッチブックの中みたいなことが出来ます。お陰で事故っちゃうんだけどね。
その事故のせいで、また村は滅びようとします。
その時、紗良の世界と稔の世界が融合を始めます。
私はよく「ああ、私の世界侵食されたわ」と思うことがあるのですが、実はそれってあんまりないと聞いて、演出間違えたーと思いました。
稔が、紗良の世界を乗っ取り新しい神を立てます。それが姫です。
姫は、稔の記憶で、記憶を封じる為だけに存在します。
言わば、彼女は神らしい力は何も持ち合わせていないのです。
「姫が直接生贄を殺すなんておかしい」というご意見もあったのですが
佐藤稔以外が生贄を殺しても意味ないんですよね。
佐藤稔が決別するために、全ての記憶を背負った姫が殺すのです。
佐藤から姫に渡された剣は「理不尽と不条理の剣」というのが正式名称です。
理不尽と不条理で、己を守る。
きっと、誰もがそうしているのではないでしょうか。
その「理不尽と不条理の剣」で、姫は生贄達を殺していきます。
佐藤稔が幸せにならないために。
厄災が起きて、村人達は紗良を攻めます。
その時に、紗良の味方についたのが、暁と神楽でした。
ケガレの立ち位置がわからなかった、というご意見が多々見受けられたので解説しますね。
ケガレは、厄災の時に紗良を守った人物のことです。
作中では暁と神楽しか出てきませんが、多分厄災当時はもうちょっと居たんじゃないかな、と思います。
災いをもたらした裏切り者の元神の紗良を守ったことによって、彼らは反逆者として扱われます。
そして、紗良を白と穢れた色で呼び、名を奪い、過去を奪い、「そういうもの」として認識させるのです。
それが、「初めてのニエとなった娘」という意味。
言わば、「村を裏切った反逆者の仲間」なのです。
作中で稔がニエに「こいつらは村を裏切った反逆者だ」と言います。
これは、過去の暁と神楽であり、現在の兵吾と晃希です。
ケガレは弾圧されていきます。
村に出る時は仮面で顔を隠されて、村人からは恨まれています。
そんな2人は、紗良ととても仲の良い友達でした。
信仰という言葉では足らない、友情に近い何か。
恐らく、今で言う姫様と仁那と同じくらいの近さ。むしろもっと友達っぽかった。
ケガレは、どんどん村からいなくなります。
ある者は姫が作ったニエ制度に異議を立て、ある者は村を出ていき。
その中で残ったのが、暁と神楽だったのです。
暁は、村唯一の薬屋として、ケガレとは言えど村人と交流があります。
そして「魔女」と恐れられているので、村人達も簡単に殺すことはできなかったのです。
神楽は元傭兵で、もし次に隣村が攻めて来たら一番に飛び出させる要員。
……というのは表の理由で、神楽には先代から任された「仁那と兵吾を守る」という役割があるのです。
彼らは常にニエ制度に疑問を持ち、名前と人生を奪われた少女達を思いながら暮らしています。
神楽は「お前の望みは何だ」と何度も問います。
これはバ神楽2人とも共有してるのですが
神楽は以前に晃希と同じようにニエを助けようとした過去があります。
しかし、ニエは「死ぬことが私の望み」という言葉を残し、姫に殺されました。
神楽は、「次にもし生きたいと願うニエが現れたら、自分は絶対に救おう」と決意します。
だからニエに「お前の望みは何だ」と何度も尋ねるのです。
その望み通り、俺は共に進むぞ、という意味を含みながら。
暁も、この神楽の思いに賛同しています。
だから2人は、晃希に「神を殺すのを手伝ってくれ」と言われた時に
ついに、紗良が名前を取り戻すのか、という思いで協力するのです。
悲惨な場面で、Яealityらしさ全開のシーンでしたが
さまざまな人物の思いが交錯しています。
3000字を超えたので、第2弾に続きます。
いただいたお金は!!!全て舞台裏のためのお金にします!!!!殺人鬼もびっくり☆真っ赤っかな帳簿からの脱却を目指して……!!!