オタク2人が映画について語り合ったら対話の重要性に気がついた話

前提

登場人物

私(オタク。映画は監督のメッセージ性を読み解くもの)
友人(オタク。映画は登場人物の心情を読み解くもの)

会話のきっかけ

共通の友人2人が恋人と分かれそうという状況で、相性の良い異性とはなにかという話から

本文

映画を観て?

映画を観たあとには何かしらの感想があるものだと思います。「ストーリーがおもしろい」とか「演出が良い」とかまあ人それぞれあるとは思います。この感想が全く合わない人や何にも出てこない人というのが世の中にはいます(オタク的に言うと出力がない人)。
先日このことについてオタクの友人と3時間語り合いました。非常に自分のためになったので備忘録としてまとめていきたいと思います。

映画の感想ってなんだよ

私は年に20〜30作品観るくらいのミドル層なのですが、人と映画を観に行ったときの感想の違いにショックを受けることがままあります。
人と映画を観たときは、少なからずその人の感想や意見を聞いて共感したり、インスピレーションを受けるものだと思います。でもそれが全く得られない人がいるのです。
例を出します。
私は以前お付き合いをしていた女性と「ラーゲリより愛を込めて」という映画を観に行ったことがありました。私は2回目の視聴で、ものすごく感動して映画館で号泣したので、ぜひ彼女にも観せたかったのです。映画を観終わり、彼女も感動してくれたかな、共感できるかなと期待を胸に感想を聞いたのです。しかし、彼女から出てきた言葉は「北川景子がすごく綺麗だった」というものでした。あっけにとられてしまいました。「そこ?」。
確かに北川景子さんはきれいな女優です。”しかしあの映画をみて一番最初に出る感想がそれ?なんかこう他にないの?”という感情でした。
その時の私は、「まあ、シベリア抑留の話は興味ないとわからないか」と無理やり自分を納得させましたがモヤモヤは残ったままでありました。

彼女は本当に何も感じなかったのか

おそらく彼女があの映画を観て何も感じなかったということはないでしょう。多かれ少なかれ、戦争の悲惨さや虚しさ、ラストシーンの感動などはあったと思います。
ではなぜ彼女の最終的な感想があれだったのか。これは私と彼女の映画に対するとらえ方の違いがあったからだと思います。
そしてこのとらえ方の違いは、いわゆる「価値観の違い」ってヤツにつながると思います。

映画をどう観るか

映画の観かたって色々あると思いますが、だいたい以下のような感じで分類分けできると思います。

  • ストーリーを楽しむ人

  • 登場人物の心情を楽しむ人

  • 非日常を楽しむ人

  • 監督などのクリエイターの制作意図をくみ取る人

  • 出演者(声優含む)を観る人

これ以外にも千差万別だと思いますが、私が言いたいのは”同じ映画を観ていても、観ている人によってとらえ方がぜんぜん違う”ということです。より正確に言うなら、そもそもの視点が違う、観ている世界が違うということだと思います。
私は映画にはメッセージ性を求めるタイプの人間です。その映画を観て何を感じ、どう自身にインストールするかを第一に考えて映画を観ています。
しかし、当然世の中には別の視点で映画を観ている人がいます。映画のメッセージ性を読み解くより前に出演者に注目する人もいるのです(前述の彼女のような)。

結局何が言いたいのか

と、うだうだ書いてきましたが、そもそもの会話の主題は”相性の良い異性とはなにか”です。結論をいいますと、”同じ世界を観ることができる人が相性が良い”となります。そして同じ世界を観ていることを確認するのに最適なのが映画だと私は思います。

人は思っているほど同じではない

人はなんとなく自分と他人にそこまで大きな違いはないだろうと思いがちです。しかし、実際は映画の感想のように全く同じ映画を観ていてもぜんぜん違う意見が出てくることがあります。そのような場合に、自分や相手の感性を疑うのは大きな間違いであると私は考えます。
先程から述べているように、そもそもの視点が違うのです。同じ映画を、同じ場所で、同じように観ても視点が異なっているのであれば、当然感想は異なっていきます。そしてこの”視点”は、それまでの経験や本人の性質によって成り立つものだと考えます。つまり、価値観ってやつですね。

価値観ってやつ

カップルが別れる理由上位の”価値観の違い”。

価値観:物事を評価する際に基準とする、何にどういう価値を認めるかという判断

(小学館:デジタル大辞泉より)

と国語時点には書いてありますが、映画の感想もこの価値観をもとに出力されるものだと思います。先ほどのラーゲリの例ですと、私は戦争の悲惨さやシベリア抑留の過酷さ、当時の未帰還兵の虚しさに注目して映画を観ていました。これは私の歴史観からきているものです。一方、彼女は出てきた俳優そのものに興味を示していました。それも一つの映画の観方だと思います。(逆に私は出演者にはあまり興味がないですしね)
ただこの観方の違いは大きな歪みが生まれてしまいます。絶妙に会話が合わないのです。この同じ体験をして感想が違うというのはかなりストレスです。それこそ相手の感性を疑うほどには。
今回は映画を例にしていますが、これは映画以外のあらゆる体験で起こりうることだと思います。こういう小さなストレスが大きくなって価値観の違いというやつになるのです。

じゃあどうすりゃいいんだよ

じゃあ物の観方が違うとわかり会えないのか?私はNOだと思います。
今回友人とこの話をしていたときに、友人とも物の観方の違いがあることが判明しました。
以前その友人に強く進められてネトフリアニメ、「サイバーパンクエッジランナーズ」を視聴いたしました。このサイバーパンクなのですが、私はラストの展開がどうしても納得がいかず、友人が勧めてくれたのですが”いまいち”という評価で終わっていました。
ここではネタバレになりますので具体的な内容については言及いたしませんが、ラストのストーリー展開がガタガタガタと駆け足に終わってしまった印象を受けていました。なんというか少し足りない、情報が足りないという印象です。私個人としてはもっと主人公とヒロインの心情のやり取りを観たかったという感じです。
このあたり友人との意見が割れていました。観たあとすぐにはいまいちだったという感想を友人に伝え話を終えていましたが、友人的には納得が言ってなかったようでこの度改めてお互いの解釈を確認してみました。
そこで一つ新しい発見がありました。それは私はこのアニメを主人公とヒロインの儚い恋愛劇(に近いもの)という観方で観ていました。しかし今回改めて聞いた友人の感想は”このアニメはナイトシティ(作品の舞台となる街)という街を描いた作品”というものでした。なるほどそういう観方があるのか。

人は観たいものを観たいように観る

サイバーパンクエッジランナーズは主人公のデイビットが”ちょっと危ないお姉さん”のヒロイン、ルーシーと出会って・・・というお話です。
この出だしで私はサイバーパンク+ラブロマンスという感じだと思いました。
しかし実際のところラブロマンスというよりは、ドキュメンタリー(?)に近いような大河ドラマに近いような、主人公のデイビットのナイトシティでの生き様を描いている、そのような作品となっています。そうなると私の認識(希望)と実際の作品でギャップが大きくなります。私はラブロマンスのつもりで作品を観ていたので、そのように作品を評価してしまい、最終的には”いまいち”という評価になってしまうのです。
つまり、私は観たかったラブロマンスがあまりなかったことに不満を覚えていたわけです。さらにたちの悪いことにそのような自覚は特になく、友人に意見をもらうまではそれ以外の視点で作品を観るということは一ミリも思っていませんでした。これは人間が自分の観たいように勝手に解釈してしまうことが原因だと考えています。そして、この勝手な解釈はちょっとしたことでブレるほど曖昧なものだと私は感じています。実際、友人に別の視点での観方を共有してもらい、作品に対する評価が変わりました。ラブロマンスにこだわらず、例えばデイビットの大河ドラマのような視点で観るとかなり面白い作品だと感じます。視点を変えると、それくらいその人の感覚を変えてしまうのです。

視点を変えると他人と共感できる

今回、私が視点を変えたことでお互いに「サイバーパンクエッジランナーズは面白い」という共通の認識をもつことができました。やはり自分が面白いと思ったものを他人にイマイチと言われるのは納得がいかなかった事もあったでしょう。これで友人と揉めたわけではありませんでしたが、お互いに感性を疑うこともなくなりました。
今回の例は同性同士の友情における話でしたが、当然恋人同士でも同じような理解を得ることはできると思います。ちょっとした視点で大きなすれ違いが起こってしまうのであれば、自分の感想を素直に背景も含めて説明するのは非常に有効的なコミュニケーションの方法だと考えます。

まとめ

以上が私が友人と話していて感じた、人間の感性の話です。人間なかなか自分の感性を疑いたくない気持ちはわかりますが、思っているより他人と感覚がずれていることはあると思います。感性がずれていることは悪いことではありません。むしろ全く同じ感性の人間に出会えることのほうが珍しいでしょう。大切なのは他人とどのように感性が違うのかお互いに知ることだと思います。そして、その感性の違いをわかりやすく発見するのに”映画”は最適なツールだと私は思います。

結論

価値観の違いを見つけるには映画を一緒に見ろ。
なんなら付き合う前のデートで映画を観に行け。

これが私と友人が導き出した一つのメソッドになります。
映画を観たあとの感想会で違和感を感じたら、”価値観”が違うかもしれません。

最後に、ここまで私の駄文に付き合っていただきありがとうございました。私的に非常にインスピレーションを受けた会話だったので思わず書き記した所存でございます。夜中に3時間話に付き合ってくれた友人に感謝し、もしこの文を読んでくださった方がいらっしゃるのであれば、何かしらのためになれば幸いです。ありがとうございました。



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