天使にかける声1

「やめろー!なんでこんなことするんだ! 殺す気か!?」

とか

「いいのかそんなこといって? 俺がお上にいって処分してもらうぞ」

とか

「本当にあいつ嫌い。早く死ねばいいのに」


 これはとある場所で聞こえる声達。

 とある場所とは病院。

 一つ目の声は自分で痰が出せない患者様に吸引行為を行った時のもの。自分で痰が出せない患者をそのままにしていると、痰が気管につまり下手すれば死んでしまう。そのため看護師は器具・機械を使い、チューブを鼻や口に通して吸引圧をかけ痰をとる(吸引、という手技)。吸引をやられるほうとしては、チューブが鼻やのどにあたり痛い上、チューブが気管に入るとむせ込みが起き息ができなくなる。なので吸引が好きな患者はなかなかいないだろう。意識がはっきりしている患者様は必要性を説明をすれば、大体の方は渋々了承してくださる。

 問題は認知症など意識がはっきりしていない方達。この方達は吸引の必要性を説明しても理解ができない。理解ができないからって吸引をやらないわけにはいかない。しなければ死ぬかもしれないからだ。しかし実際に行うと冒頭の声になる。吸引を嫌がり、叫ぶ。看護師にも暴力を振るう。看護師は言われるまま、されるまま。命を救っているというのに責められ、看護師の顔はゆがむ。

 そもそも痰が自分で出せないということは痰を出す身体的力がないか、痰を出すことを忘れてしまった方、あるいはその両方。つまり吸引が必要なのは多くは認知症などの意識がはっきりしない方達なのだ。それは病棟によっては過半数を超える人数になる。当然一人の看護師が一勤務に担当する患者様に吸引が必要な方がいない日はほとんどない。そして吸引は患者様の個人差はあるが2~5時間おきに1回は必要になる。つまり看護師は一勤務に何度も吸引をし、そのたびになじられ下手をすれば暴力をふるわれる。それが今の看護師をとりまく日常の一場面。

 今後も二つ目の声、三番目の声を通して看護師の実際を書いていきたい。

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てんぺい@看護師兼宇宙一幸せな随筆家
幸せです! 奥様に大福を、愛娘ちゃんにはカワイイ洋服を購入させて頂きます🌟 さらに良い記事をお届けできるよう頑張ります♪