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避妊手術、どうしよう?その②

第2回:避妊・去勢手術にリスクは無いの? Part 1
避妊・去勢手術に関するリスクについて、まず聞くのは全身麻酔だと思います。ほかの手術でも獣医さんから説明を受けるので、ご存知の飼い主さんは多いと思います。ひめりんごと平蔵も、乳歯がかなり残ったので、全身麻酔で抜歯しました。

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一方で、素人はあまり聞かない印象を受けるのですが、中・長期的に健康面に与える影響の「可能性」も指摘されています。その主なものをご紹介します。なお、情報は主に日本とアメリカ、イギリスの大学や研究機関およびお医者さん、獣医さんなどが発表した論文や報告書をもとにしています。

リスクが上がると言われている病気
1)関節のトラブル
避妊・去勢手術を行った犬にヒザの前十字靭帯(ぜんじゅうじ・じんたい)断裂股関節と肘の異常形成など、関節まわりの疾患(しっかん)が多く発生する傾向が指摘されています。テキサス工科(Texas Tech)大学メディカルセンターが、2年間にわたって、ある整形外科専門動物病院のデータを基に行った調査では、以下のような結果だったそうです:

・調査した全3,218頭の中で、「前十字靭帯断裂」を起こした犬は3.48%
・り患率(病気の割合)が最も高かった避妊手術済のメス5.15%
・り患率が最も低かったのは未去勢のオス2.09%
・避妊・去勢済みの合計り患率は、未避妊・未去勢の全体の2.1倍

前十字靭帯

カリフォルニア大学デービス校・獣医学部は、14年半にわたり合計1,170頭のドイツシェパードを対象に、避妊・去勢と関節疾患などに関する調査を行い、その結果を2016年に発表しました:避妊・去勢手術を早期に行った個体にトラブルが多い傾向が読み取れます。

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2)骨の成長
避妊・去勢手術が、骨の成長に悪影響を与えるという報告もあります。人間も、「二次性徴」を迎えると成長ホルモンの影響で身長が伸びたり、色々からだが変わったりしますよね。で、それが終わると性ホルモン(特に女性ホルモン)の働きによって、「骨端線(こつたんせん)」という場所が閉鎖されて骨の伸びが止まるそうです。これは犬の場合も同じです。

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避妊・去勢手術が、特に幼い頃に行われることで、骨の成長を適切に止める性ホルモンの分泌が行われず、「通常でない成長パターンと骨格を呈することがある。その結果、特異なボディバランスになったり、軟骨および関節に問題を抱えたりする結果となり得る」という説があります。

これが、例えば「脛骨高原(けいこつこうげん)アングル」、つまり、すねの骨とふとももの骨の関節部(要するにヒザですね)の角度異常につながり、上に書いたような関節疾患の原因になっている可能性も指摘されています。

腓骨高原

動物の健康に関する研究を行うアメリカのモーリス動物財団で、2,800頭のゴールデンレトリーバーを対象に研究を行ったミッシー・シンプソン獣医師も、避妊・去勢手術によって切除される卵巣や精巣が、単に生殖機能だけでなくからだ全体に重要な役割を担っている可能性について語っています。

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筋肉量、腱(けん)や靭帯の強さ、および骨の成長に密接に関係しており、「これらのホルモンが無いと、身体的なたくましさに(マイナスの)影響を与え得る」と言っています。

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確かにな~…
私も含めてみなさん、中学に入る前後あたりから「二次性徴」は実体験してますよね。男子の声が低くなって、文字どおり男臭くなったり、女子の体形が変わったり。

ひめりんご父ちゃん、小学生の頃は朝礼でいつも一番前でしたが、中一の時に毎月1センチ背が伸びました!そんなことも考えると、性ホルモンの役割の大きさ、「確かにな~」、と思うわけです。(骨端版に根性がなく、みんなと同じタイミングで止まっちゃったので、結局ずっと一番前でしたが…^_^;)

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こうした避妊・去勢由来と考えられる関節系のトラブルは、大型犬だけで小型犬には起こらないという報告もあります。それから、わずか数パーセントの違いなので、あんまり心配する必要はないかも知れませんが、この辺の議論は、今後、ご紹介します。

次回は、そのほかに言われているリスク、ガンとホルモンのバランスについてご紹介します。