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繁殖を禁じられたブリーダー⑦:今、私たちが見ている生体販売の問題

前回は、ノルウェー動物保護協会(NSPA)の基本的な姿勢をご紹介しました。動物たちの健康と命を守るという目的を常に意識し、その実現のために論理的なコミュニケーションを理性的に行っています。現状を否定するだけでなく、「じゃぁ、どうすべきなのか?」、つまり解決策も科学的根拠に基づいて提案しています。1859年の設立以来、建設的な活動を続けることで広く社会的な支持を得ているのがNSPAです。

そんな姿勢から、私たちが参考にしたいことを考えてみました。特に“生体販売”の是非や“保護犬”のお迎えについては、論理的で理性的に、丁寧な議論が大切だと思う今日このごろ…。

現在、日本で行われている生体販売には問題が少なくないことは以前もご紹介しました。ただ、よく聞く「生体販売禁止!」という主張には疑問を感じるケースがあります。そこにいく前に、まず今回はペットショップや繁殖業(≒生体販売)の課題を改めて整理しました。

問題が多い生体販売

犬を中心に、愛玩動物(ペット)の販売やそれを目的とした繁殖を法律で禁止すべきという意見があります。これまでもご紹介してきましたが、確かにペットショップやブリーダーさん繁殖業者の“今のやり方”には問題がとても多いと感じます。(ここでは、“プロ”意識のあるブリーダーさんと “繁殖業者”は別の存在として考えます。)

大きな問題のうちの1つは、無秩序な繁殖による遺伝性疾患のまん延です。(詳しくは↓こちらを読んでください)

もう1つは、ビジネスとして疑問の多いペットショップの料金システムです↓

大手ペットショップからお迎えした柴犬の“さくらちゃん”たち3きょうだいやチワワのコタロー君が亡くなったのは、繁殖に起因する遺伝性疾患が原因です。
(↓さくらちゃんをご紹介)

(↓コタロー君をご紹介)

そのほかにも、お迎え直後に体調を崩す子犬が多いことを複数の獣医さんから聞きました。寄生虫による下痢などが特に多いそうです。

命に対する敬意の欠如

繁殖業者の“生産”(<= 敢えてこう表現します)方法に問題の根源があるでしょう。そうした業者や競りあっせん場(= オークション)から、ペットショップ運営企業が子犬を“仕入れる”際の見極めもできていません。“入荷”後のケアなど、“品質”管理にも改善すべき点が多いのが分かります。
 
繁殖業者などの“取引先”に対し、ブリーディング方法や適正飼養に関する指導を行うペットショップもあります。でも、ごく一部に限られますし、内容や頻度が十分なのかも大いに疑問です。

メーカー(= 繁殖業者)にも
流通業者(= 競りあっせん場)にも
販売会社(= ペットショップ)にも
品質(= 健康状態)に関する意識が
圧倒的に不足している

と感じます。
 
販売においても、本来は事業者が負担すべき(= 販売価格に含まれているはずの)コストを追加請求するのが一般化しています↓。

さらに高額な“補償”料や、非常に限定的な遺伝子検査も、お店側のマーケティングや「何かあった時」に備えた免責のための施策である印象が強いこともご紹介しました↓。

飼い主となるお客さんに対して、そして何よりも子犬という命に対して、最低限のレスペクト(敬意)が欠如していると言えるのではないでしょうか

専門家としての誇りは?

ウチの平蔵が首に抱えている爆弾(= 環軸椎不安定症のリスク)も、繁殖兼販売業者による無秩序な繁殖による遺伝性疾患です。(<= 化学的根拠に基づいて断言します)

彼らに最低限の知識とモラルがあったなら、

大切な家族の
命の灯が
突然消えてしまう不安

を抱えながら私たちが生活することはなかったでしょう…。血のつながった "お姉ちゃん" が1歳に満たないパピーの頃に首の痛みに苦しんだり、突然死したりすることもなかったのではないかと思います↓。

追加料金や補償のシステムについては、ビジネスのやり方として100%否定はできません。でも、重篤な遺伝性疾患やお迎え直後からの体調不良は業者に非があります。もちろん、生まれた直後には分からないトラブルもありますが、そのレベルではないと思います。

繁殖屋をはじめ、ペットショップで働くバイヤーさんや獣医師は本来プロであるはず

ご自身のお仕事に、専門家としての誇り、または最低限のこだわりをもって欲しいというのは過剰な期待でしょうか?
 
寄生虫のチェックや投薬は基本中の基本です。生まれつきの病気も含め、遺伝に関してはインターネットなどで詳しく分かりやすい情報が簡単に手に入る時代です。時間も費用もほとんどかかりません。"心"を求めるのは難しいとは思いますが、

まずは“ビジネス”に取り組む姿勢から、
やり直していただけないかな…

みんながハッピーで利益も増えるしくみ

そうした姿勢が信用を生み、最終的には利益率の高い効率的なビジネスにつながるはずです。例えば、「〇〇さん(= ペットショップやブリーダー)なら元気で可愛い子犬がいる!」といった評判(≒ブランド力)がつけば、お値段が高くても売れると思うのです。

今でも、正直なところあまり評判の芳しくないペットショップチェーンの店舗で軽く100万円を超える“ティーカッププードル”が数十万円の“別料金”付きですぐに売れてしまうわけで…。
 
ワンコが元気なら飼い主は幸せです。飼い主がHappyなら繁殖屋もペットショップも嬉しいでしょうし、なによりも儲かるでしょう。良いことしかないと思います。

そこまで言うと、まぁ、ちょっと単純化し過ぎではありますが…。基本的には、ポジティブな循環ができるんじゃないかと思います。

生体販売を犯罪にすべき???

こんな感じで改善すべき問題は山積みだと思います。でも、生体販売やそのための繁殖を一律に全面的に禁止すべきというあまりにも単純な主張には疑問を感じます。

ペットショップ経営や繁殖事業そのものが絶対的な悪であり、違法なモノ、つまり“犯罪”とすべきだというのは極論ではないでしょうか?

なくすべきは、「品質を軽視した大量生産」を行っている現在の業界姿勢であり、生体販売そのものではないはずです。大切な目的が、ズレてしまっているような…。
  
次回は、冒頭で書いた「生体販売禁止!」という主張について考えたいと思います。特に、「欧米では」というコトバ…。とても不可思議に感じます。

専門家としての知識と経験をもって犬の繁殖をされている“ブリーダーさん”もいらっしゃいます。そこでは、いっぱいの愛情に囲まれて心身ともに健康な犬が“家族”として誕生しています。子犬をお迎えした飼い主さんとは親戚のように付き合っておられますし、何かあった時には全面的にサポートして終生大切にします。そうした方々も含めた形で乱暴に否定することは、問題解決につながらないのでは?何よりも、命を語る丁寧さと優しさが感じられないのです…。