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【超ショートショート】(43)~その扉の向こう側~☆The Light☆宮崎薫さんの曲より☆

光の入らない暗い部屋。

パソコンの画面の
ブルーライトを浴びる一人の女性。

七五三さんの時、
兄と一緒に着物を着せられ、
慣れない靴で、砂利道を歩く。
だけど、靴が合わず、
足の痛みで徐々に泣いていく女の子。
その景色を笑いながら見ていた父、
母は心配の表情だが、
寝息をたてる兄を抱きながら、起こすのに必至。
女の子が声を出して泣き始めて、
事の重大さに気づく父は、
すぐに女の子を抱きあげる。
でも、女の子は父に怒った表情を見せる。
「何ですぐに抱いてくれなかったの?
お兄ちゃんばかりズルい!」と。

微笑ましい家族のDVDに映る母は、
もう居ない。


高校生の頃、
入学してから気づいた、
自分には合わない学校。
毎日が苦しく、
クラスにも居場所はないと感じていた。

1年生の夏休みが終わり、
9月1日の始業式。
家は出たが、
学校に行けず帰宅。

母は学校からの連絡を受けて、
部屋まで怒りに来た。

少し押し問答となり、
母が転倒。
意識を失ってしまう。

その日の午後、
学校の担任が家庭訪問。
母が倒れているのを発見すると、
救急車を呼んだ。

一時的な脳震盪(のうしんとう)と
心臓の発作が重なって意識を失ったと、
担当医が警察と高校生の女性に話し、
事件性は無いことを証明した。


それから、
10年後、母は若年性認知症を患い、
家族旅行で出掛けた温泉地で、
行方不明となり、
翌日発見されるが・・・。


母の49日が終わり、
女性は、部屋から出ることがなくなった。
母を苦しめたのは自分だと、
高校生の頃から、
自分を責め続けていた。

食事は父が用意。
兄も様子を見に来るが、
家を出た少し他人になっていた。
幸せな家族を築く兄には、
こんな自分を見られたくないと、
いつも兄を追い返した。


女性には、
子供の頃の夢がある。

「自分の家族みたいな家族を作ること」

母は、お嫁さんに必要なこと、
子育てに必要なことを、
いつも教えてくれていた。
家族の誰よりも
女性の結婚を楽しみにしていた。


だが、
女性の恋愛はなかなか成就せず、
母に相談することもあった。
そして、
仕事も、希望の就職先に入れず、
やっと入社できた会社も、
世の中の経済の波を受けて、
リストラを繰り返した。

父は仕事を抱えながらも、
母の世話をしていたが、
ある日過労で倒れてしまう。

女性は、
自分に出来ることをやってみたが、
世の中の冷たさに、
心が崩壊してしまった。

そんな状況での母の事故は、
結局、女性を崖の上から、
突き落とす出来事となってしまった。


女性は、毎日パソコンを恋人に、
暇な時間をつぶす。


部屋から出られなくなってから、
約2年。

父が、母の遺品を整理していると、
認知症になってから書いた
母のノートを発見。

少し正常な意識の時に、
自分の名前や家族の名前を、
何度も忘れないように書いている。
それから、
ひょっとしたらと自分が
先に旅立つかもしれないからと、
母は我が家の家庭料理のレシピを
書き残している。
イラスト入りで。


父が母のノートとは別に、
父が母のノートからメモ書きした紙と
女性宛の手紙を渡した。

(父のメモ書き)
「ごめんね!学校なんか行きたくないなら、
あの時行かなくても良かったのに、
お母さんが無理やり怒ったから、
あなたを苦しめることになってしまった。
本当にごめんね。」

「好きな人にフラれたって話して、
お母さん、あなたに嘘をついたわ。
あなたの前では、フラれて可哀想って話したけど、
本音では、フラれて良かったって思ったのよ!
だって、あなたが幸せそうに見えなかったから。
結婚するなら、本当に、
心の底から好きな人としてほしいのよ、
お母さんは。」

「あなたが産まれる前に、
あなたを妊娠したことがわかってから、
お母さんもリストラにあっているのよ。
お母さんの頃は、子育てと仕事の両立とか、
男女平等なんて、言葉はあったけど、
本当にそうした会社はほとんどなかったわ。
だから女性が結婚したら、
仕事を辞めるのが当たり前だったのよ。
お母さん、あの頃の仕事が本当に好きでね。
辞めたくないと上司に言っても、ダメだったのよ。
でもあなたの時代は
子育ても仕事も両立出来る
世の中になると思ったけど、
そう簡単に変わらなかったわね。
あなたもリストラされるなんて思わなかった。
もう少し、あの時、
お母さんが優しい言葉をかけていたら、
あなたの苦しみを癒すことが出来たのに、
ごめんね。」

(手紙)
「明日からの家族旅行、
お母さん、絶対忘れないからね!
あなたと温泉に入ることも、
美味しい旅館の食事も、
絶対忘れないからね!
きのう、あなたの名前を忘れてしまって、
ごめんね。
お母さんは何度も名前を探したんだけど、
娘だってわかっているのに、
名前だけが黒く塗りつぶされて、
見つからなかったの。
本当にごめんね。
お母さんのこと嫌いにならないでね!

あなたの名前を付けたのはお母さんなのよ!
それは小さい頃に話したけど、
理由は話してなかったわよね?
忘れないように、
ここに書いておくね。

お母さんが子供の頃は、
貧乏で、大変だったの。
いつもいろんなことで、挫折したのよ!
だから、あなたが学校に行けないと、
引きこもった時、お母さん、
自分の小学生の時を思い出したわ。
自慢じゃないけど、
お母さんも引きこもった事あるのよ!

その時、
お母さんのお母さんが、
こう話したのよ。

~人生は長いのよ。
遠回りしてもいいから、
あなたの心の中にある
一筋の光を見つけなさい。
そして、
その部屋からあなたを出せるのは、
お母さんじゃないの、
あなた自身なのよ。
あなたが一歩踏み出すのが怖かったら、
お母さんも出来ることはするわ。
でも、その一歩踏み出すのは、あなた。
お母さんはこの扉のこっち側で待っているよ。~

お母さんのお母さんが話した、
「一筋の光」から、
あなたの名前を「光」にしたのよ。
あなたはお母さんの一筋の希望の光。
そのあなたが、
いつまでも苦しんでいるのは、
お母さん悲しい。
あなたの中にあった一筋の希望の光の
子供の頃の夢を果たしてほしいと、
お母さんは願っています。

こう書くと遺言みたいになるけど、
毎日毎日、光ちゃんのことを忘れて行くから、
遺言って思って読んでください。
毎日書くけどね(^_^)」


(お父さん)
「光、夕飯出来たぞ!
お兄ちゃんが子供たち連れてきたから、
一緒に光の誕生日祝いしたいそうだ。
だから、今日はこっちで、
みんなとご飯食べないか?」

(女性・光)
「・・・・・(考)」

その扉からこぼれ一筋の光が、
暗い部屋を照らす。

(兄の子供たち)
「あっ!光ちゃん、元気だった?(笑)
一緒に遊ぼうよ!(笑)」

(女性・光)
「うん。(嬉恥涙笑)」

(制作日 2021.7.16(金))
※この物語は、フィクションです。

今日は、
宮崎薫さんのお誕生日なので、
薫さんの曲『The Light』を参考に書いてみました。

歌詞
~~~~~
忘れられる 日を待つのは
終わりにしよう You gotta make up your mind
独りじゃないけど 一歩踏み出すのは
誰でもなく 自分だから

張り裂けそうなくらい 悔しくて 虚しくて
前に進めない ときもある
遠回りでもいい 見つけるの
私の奥にある 一筋の光を
~~~~~

ここにたどり着くように書いてみました。
物語の設定は、
いかようにも考えられますが、
どんな設定をしても、
結局、自分が一歩踏み出すしか、
人生を生きることは出来ないかもしれない。
そうしなきゃ、一筋の希望の光も、
見つけるのことも、
手に入れることも出来ないかもしれない。

宮崎薫さんの透き通る歌声の中にある
力強さは、聴く人の心を震わすと信じています。
ぜひ、一度聴いてみてください。
よろしくお願いいたします!

そして
宮崎薫さん
お誕生日おめでとうございます。
素敵な歌手になってくれて、
ありがとうございます。(笑)

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~~

参考にした曲は
宮崎薫 (Kaoru Miyazaki)
『The Light』
☆収録アルバム
『The Light』
(2019.12.18発売)
★『The Light』Music Video★
https://m.youtube.com/watch?v=LI4D26xQQs8

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