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【超ショートショート】(108)~事故物件?脚本家の未来とは?~☆CHAGE&ASKA『C-46』☆

大きな公園の横に建つマンション。
新しい住民が引っ越してきた。

(マンションのオーナーのご婦人)
「あなた?この物件をいたく気に入ったそうね。
不動産屋さんから聞いたわよ。
では楽しんでね。(笑)」

なぜ住民は、この物件を気に入ったのか?

新しい住民となる男は、
恋愛下手の売れない脚本家。
彼は、ある大きな脚本家の新人賞を受賞し、
映像化され、華々しくデビューを果たしていた。
そして、
新たな作品も方々から期待されていた。
特に依頼が殺到したのは恋愛もの。
だが彼は、恋愛下手だった。

脚本家の彼が気に入ったこの物件、
部屋は、要は事故物件のような取り扱い。

どんな事故があったのかと言うと、
それが彼の次回の脚本のネタ。

このマンションが立てられた1985年。
最初の頃に入居したある男がいた。
その男はサラリーマンで営業をしていた。
入居から半年。
男に彼女ができた。
彼女は足しげく彼のマンションに通い、
まるで奥さんの如く家事をした。
だが、男は営業マン。
時代はバブルということもあり、
接待漬けの毎日。
家に帰らない日もあった。
たとえ帰れたとしても、
あまりの酔いの様子から、
すぐにバタンキューと熟睡。
せっかくできた彼女は、
彼にとっての自分という存在理由を
次第に考えだし、
これまでの寂しさと我慢と不満が
積もりに積もって、
ついに心が折れてしまった。
「彼に私は必要無いんだ」と。
男が久しぶりの休日に、
彼女に連絡、デートに誘った。
待ち合わせ場所はマンションの横の公園。
そこで彼女は別れを告げた。
「もうあなたには付いていけない。
それにもう他の人とお付き合いしているの。
たぶんこのまま結婚すると思うわ。」
男は、あまりに突然の別れの宣告を受け茫然自失。
どうやって家に帰ったのかもわからない、
いつ夜になったのかもわからないまま、
夜9時になってようやく部屋の灯りを付けた。

以上のような恋愛ドラマが、
この部屋にはあった。
そして、
この部屋を退去した男の怨霊が残っているかは
露知らず。
ただただ、新しい男の入居者が現れると、
不思議な現象に見舞われ、
半年も経たずに退去していくというのだ。

不思議な体験?
そう!霊現象!?

なんてことではない。
彼女に振られた男は、
元気にこのマンションを退去し、
次の引っ越し先のマンションに入居して、
わずか1週間で彼女ができた。
もともとその彼女に言い寄られていたらしい。
なんとも憎らしい二股野郎だったというわけだ。

さて、二股野郎が残した不思議な現象とは、
こうだ!

新しい入居者の男たちが部屋にいると、
二股野郎の恋愛ドラマが、
新しい入居者をその二股野郎役として、
必死で彼女との別れを食い止めるべく、
画策する。
一種の恋愛ゲームがスタートする。
だが、どんなに努力しても結末は変わらない。
役どころを演じるだけにもかかわらず、
男たちは二股野郎よりも
本気で彼女を愛してしまう。
そして、二股野郎がしたことを、
客観的に見せられるために、
二股野郎への怒りと
結末が変わらない絶望で、
心を病む入居者も出た。
何人も出た。


以上のようなストーリーを脚本にするべく、
「まずは体験!」と、
喜び勇んで、この部屋に脚本家の男は入居した。
「僕は恋愛下手で彼女が出来たことは、
ここだけの話、ほぼ無いかもしれない。
だから、あんなことも、こんなことも、
できるかもしれないと思っている。
数人のここの入居者の男たちに取材をしたら、
みな一応に〈できる!できる!〉と話した。
それを聞いた僕が喜ぶと、一人がこう言っていた。
〈止めときな!あの部屋に住んだら、
もう二度と人を愛せなくなるよ!
恋愛はやっぱり本当の人間とした方がいい。〉と。
でも僕は仕事のために入居した。
それにどうしても恋愛をしてみたかったからね。(笑)」


脚本家の男が入居して半年後、
恋愛ドラマの脚本ができた。
そして、そのドラマは大ヒット。
映画にもなり、
また海外でリメークされ、
漫画や小説にもなり、
富を生んだ。

だが、その脚本家は、
売れっ子脚本家になれたと思ったら、
もう脚本を書くことが出来なくなっていた。
脚本家の男は、
あの彼女との別れを受け止められず、
一人引きこもり、
周囲を心配させた。

そんなある日、
脚本家の男の新しく入居したマンションに、
女優が初めて訪問した。
男が玄関を開けると、
もう恋が始まっていた。
その女優の容姿が、
あのマンションの彼女その者だった。
二人は、
脚本家の男が新しいマンションに入居して1週間、
初めて会ったその日に、
0日交際の結婚を決めた。

脚本家と結婚を決めた女優はもともと、
脚本家のファンだった。
女優になる前からファンだった。
脚本家の脚本でお芝居がしたいと女優になった。

脚本家は彼女のおかげで、
再び脚本を書き始めた。

次回作の脚本は、
脚本家を愛して女優になった女の話。

主役はもちろん!
脚本家が愛した最初の人間の女優の奥様だ
(笑)。


(制作日 2021.9.19(日))
※この物語はフィクションです。

今日は、
2001年9月19日発売 シングル
CHAGE&ASKA『C-46』
発売から今日で「20周年」になります。

それを記念して、
今日のお話を書いてみました。

『C-46』はせつない恋のバラード曲。
別れてしまった彼女を、
偶然見つけたカセットテープの録音した音源から
いろんな想いを巡らせる。

そんなせつなさをお話の最初のストーリーに
入れてみました。

脚本家の最後のお話は、
やっぱりハッピーエンドにしたい
私のただのクセです。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
CHAGE&ASKA
『C-46』
作詞作曲 ASKA
(2001.9.19発売)

YouTube
【CHAGEandASKA Official Channel】
『C-46』Music Video
https://m.youtube.com/watch?v=wBVW7UlNgts

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