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バリューを大切にして組織文化を育てていく

こんにちは!プロダクトマネージャーのひまらつ(@himara2)です。

多くの会社では「バリュー」が設定されています。会社として何を大事にしているか、メンバーにどう動いて欲しいのかを定義したものですが、このバリューはなかなか扱いが難しいと思っています。
バリューを意識せずとも日々の仕事は回ります。バリューは抽象的で人によって解釈が異なることもあります。バリューを意味あるものとして保ったり、組織に浸透させたりするのは労力が必要です。しかし、今の会社で3年近く働いてみて、バリューはその労力をかけるだけの価値があるなと感じました。

このnoteでは会社が定めるバリューの意義、浸透のさせ方について整理してみます。

バリューは組織の行動指針

バリューはその組織の行動指針を定義したものです。何かを達成するために仕事をしているとき、多くの場合で複数の選択肢があります。Aを選んでもBを選んでもゴールに行ける、そのときどちらを選択するか?この判断の拠り所になるのがバリューです。

バリューが浸透した組織ではメンバー各自が判断を下せます。会社として何が大事かが明確になっており、どのような行動が望ましいかをメンバーが理解しているからです。逆にバリューが形骸化していたり、バリューに反する行動でも評価されているような環境では、メンバーは何が正解か自分で判断できません。そうなると上司に毎回どの選択肢が良いか確認することになります。些細なことでも毎回確認するのは、怒られることを避けるのには有効かもしれませんが、判断の速度が低下して競争力が落ちていってしまいます。

前職のヤフーでは「迷ったらワイルドな方を選べ」と言われていました。どちらの道でもゴールに辿り着ける場合、ワイルドな方を選ぶ。そういう文化だと宣言されると、組織はチャレンジが推奨される雰囲気になっていきます。Googleには「Don't be evil(邪悪になるな)」という行動規範がありました。力を持ったプラットフォーマーは手段を選ばず成長しようとすれば、簡単にユーザーから搾取できてしまいます。低きに流れぬよう、誇れる判断を推奨するためのモットーです。

バリューをどう定めるか?

企業の文化を表すバリューはどう定義するのが良いでしょうか?それは元々組織の持っていた性質を言語化するのが良いと思っています。

何を良いと思うか、どういう会社にしたいかは根源的な思想です。後付けでこねくり回して生まれるものではありません。創業者や初期のチームが元々備えている性質を深掘りし、より強く意識していきたいものを言語化すると上手く定義でき、違和感なく浸透できると思っています。なんとなく無意識に思っていたことを言語化し、これが会社のバリューだ!と宣言する。明示的に掲げられ、折に触れて引用されることで組織の意識に深く根付いていきます。何を良しとする会社なのかを内外に示すこともできます。

私が働くmicroCMSという会社では、「オープンでいよう」「誠実に振る舞おう」「本質を見極め行動しよう」「気づきを伝えよう」という4つのバリューがあります。オープン、誠実、本質というのは元々創業者はじめ初期のチームが備えていて、良いと思う思考や行動を言語化したものです。表現は少しずつチューニングされてきていますが、大元のメッセージは定めた初期の頃から変わっていません。

いま意識して欲しいことをバリューで伝える

4つ目の「気づきを伝えよう」は前述の3つとは違い、最近定められた新しいバリューです。最近microCMSはエイチーム社にグループ会社としてジョインしました。プロダクトの力のみで成長してきたフェーズを終え、ビジネスサイドが急速に立ち上がりつつある状況です。組織の人数も増え、隣のチームの仕事が見えづらくなる。そんな中でもお互いに関心を持ち続け、これまでのようにひとつのプロダクトを信じるワンチームとして動きたい。そういう思いから追加されたのが「気づきを伝えよう」のバリューです。

自分の専門外のことにコメントするのは勇気が必要です。とっくに考慮済みかもしれないし、的外れかもしれない。言い方を選ばずに言えば自分がバカだと思われるリスクもあります。自分の本業ではないので口を出す義務もありません。そんな状況では何か気づいてもコメントせず、ただ自分の仕事に集中する方向に考えるのは自然なことだと思います。

しかしmicroCMSが目指すチームの姿はそうではなく、お互いに気づいたことはフィードバックし合い、それを真摯に受け止めて改善できるチームでした。職種ごとに分断されるのではなく、異なる観点からのコメントも歓迎したい。実際何かを専門にしていると知らぬうちにバイアスが構築され、その領域の常識を疑いづらくなっていく経験は多くの人がしているのではないでしょうか。グループジョインして環境が大きく変化するタイミングだからこそバリューを追加してメッセージを伝える。これは良いバリューの使い方だなと思いました。

バリューをどう浸透させるか?

バリューは行動指針であり、ルールではありません。それに違えたとて罰せられることはありません。バリューに外れた行動を叱るのではなく、バリューに沿った行動をみんなで褒めることが浸透につながります。

またmicroCMSの例ですが、microCMSではSlackに「#microcms-value」というチャンネルがあり、バリューを体現したと思われた行動がそこに流れていく仕組みになっています。具体的には「ナイス誠実」「ナイスオープン」「ナイス本質」「ナイス気づき」というSlackのリアクションスタンプがあり、そのリアクションをつけることでSlackメッセージが自動で流れます。直接チャンネルに誰々の行動が素晴らしかったと書き込むこともあります。このチャンネルを見ていると他チームの活躍や素晴らしい行動を知ることができ、普段関わらないメンバーへのリスペクトが醸成されます。リアクションは誰でも気軽につけられます。各々のメンバーが感謝や尊敬を込めてスタンプをつける。つけられた方は良い仕事をできたと誇らしく思え、ポジティブなフィードバックの雰囲気が広がります。

バリューは言葉で表現されていますが、言葉は儚いものです。自分を正当化するために解釈をずらしたり、都合の良いように意味を変えたりが容易にできてしまいます。バリューを意味あるものに保つために大事なのは行動で示すことです。特に初期の頃は創業者やマネージャー陣の行動が大きく影響すると思います。失敗を素直に伝える、素人な質問をする、そしてそれを真摯に受け止めて改善する。組織構造の上側に位置する人が率先してリスクを取り、バリューに従う行動が安全でリスペクトされる行動であることを体現する。これが初期には重要な気がしています。

バリューについて議論することも重要です。例えばミーティングのなかで、「これってどうすることがオープンなんですかね?」のような発言が参加者から出たりします。このとき、そのシーンでの"オープン"な行動は何なのかを参加者で話し合いますが、この時間がとても大事な気がします。バリューが浸透している組織でも各々の考える基準は少しずつズレていきます。明確な基準を設けられるものでもないので、こういった具体例をもとに各自の基準を擦り合わせていくしかありません。バリューについて話しても結局最終的な意思決定は変わらない場合もありますが、それでもメンバーがバリューについて話し合う時間は長期的に強いチームづくりに活きてきます。

外向けに公開してミスマッチを減らす

会社のバリューを外に示すことで採用のミスマッチを減らすことができます。このあたりはミッションやバリューも同じかもしれません。ミッションやバリューが会社の目指すところに共感できるかの試金石になるのに対し、バリューはどういう人・振る舞いが歓迎される会社なのかを確認するのに役立ちます。

転職面接は何度も時間をとって話す必要があり、候補者からしてもエネルギーが必要なイベントです。あらかじめバリューを見れば、すべてを判断できるわけではないにせよ、明らかに合わない会社は見分けれるでしょう。ただ、実際にどれくらい組織にバリューが浸透しているかは外からは判断しづらいものです。テキストよりもう少し雰囲気が伝わる方法はないかと考え、microCMS FMというPodcastを会社で始めました。チームにどういう人がいるのか、制度はどれくらい活用されているのかなどを雑談的に話しています。ほとんどノーカットの生の雑談を配信していて、会社の雰囲気を知るひとつの切り口にはなるかと思います。興味があればぜひ聞いてみてください。

おわりに

組織のバリューについて、その価値や浸透、活用について書いてみました。バリュー浸透のために人事評価をバリューベースで行う話もよく見聞きしますが、この良し悪しは自分には判断できなかったので今回の整理からは省きました。

組織文化というのは曖昧で目に見えないものですが、それが備わると一貫性のある強いチームになれると思います。文化は誰かがもたらすものではなく時間をかけて全員で作り上げるものです。自分も組織の一員として、意識して行動していきたいと思っています。



プロダクトマネージャーをやりながら学んだことを「PdM日記」と名付けて書いてます。よければ読んでみてください:)

X (Twitter): @himara2

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