的あてとラーメンパンと【#ガーデン・ドール】
7月某日。
学園祭も始まったばかりの頃。
ぼくはあるごせんせーの開く的あて屋に来ていた。
どうやらここにはラーメンパンというものが景品としてある様子。
パンを作ればガーデンの中で右に出る者はいないと自負するぼくは、
ラーメンが大好きなあるごせんせーがどんな物を作ったのか気になったのであった。
なので、早速的あてをすることにしたのですが…
ルールは簡単。
ボールを投げて的に当てるだけ。
当たった的に応じて景品がもらえる…のですが
「えい」
「おお、コントロール良いなのですね~!」
…当たったのは狙いとは違うラーメンアイスの的。
「つぎ。」
ボールはラーメンパンの的を外れて折り紙のラーメンどんぶりの的へ。
「力抜きすぎましたねー、ではつぎー」
…また狙いを外れて別のものへ。
あれー?銃の狙いはつけられるのに、ボールはあらぬ方向へ。
やはり狙いすぎて力んじゃっているのでしょうか。
その後も何度も的を狙って投げるが、ラーメンパンの的だけきれいに避けるかのように外れていく。
「うーん、難しいなのですね……ここまで本気で頑張ったヒマノさんに免じて、ラーメンアイス3個とラーメンパン1個でトレードしましょうか、なのです?」
何度も外している姿を見て哀れに思ったのか、せんせーは提案してくる。
…今回の目的はラーメンパンのみ。
その提案を受け入れてもよかったのですが、自分の中に残るかすかなプライドがそれを許さず。
…妥協はだめですよね、本気でやらないと。
「いやですー、本気でやるのです。あと2回追加ー。」
「分かったなのです!どうぞなのです!」
ボールを渡される。狙いすぎているのなら、あえて同時に適当に…
…やはり狙いの的には当たらない。どうしてです??
「ラーメンパンに嫌われてますなのですか???」
「なんででしょうねえ…」
負けじと2回追加。
…もう投げ始めて10回は超えている。
ここで当てないと自分の腕に自信がなくなってしまう。
集中する。
…ここかな?
ぼくは肩の力を抜き、真っすぐにボールを投げた。
ぼくの投げたボールは…ラーメンパンの的へ命中した。
「パン来ましたなのです!!!!!!」
「やったあ!」
思わず声が出てしまう。
やっと手にした達成感と、目的を忘れそうになるほどの回数に…我を忘れて。
「景品はこちらなのです!特別報酬目指してまた遊びに来てくださいなのです!」
そういって景品を手渡される。
たくさんのラーメンアイスにラーメンどんぶりの折り紙、それと…ラーメンパン。
「ありがとうございますー。…ラーメンパン、ここで食べてもいいですかー?」
「どうぞなのですー!」
アイスは一旦おいておいて、ラーメンパンを食べてみることにする。
これが…あるごせんせーのつくったもの。
醤油ラーメンの麺をパンにのっけただけのもの。
べちゃっとしていて、パンもスープが染みて食べにくそうだ。
…一口食べる。
味はともかく、少し伸びているのか麺の食感もふにゃふにゃしており、スープが染みてパンもふにゃふにゃになっていて…お世辞にもおいしいとは言えない出来だ。
つい、呟くように、感想が口から出てしまう。
「うーん…やっぱりただ入れるだけだとどちらの強みもなくなっちゃってますねー。おいしくしようという本気が足りないのですー」
そう、折角ラーメンとパンというおいしいもの二つの組み合わせなのに、台無しになってしまっている。
これは…改良しなければ。
「ありがとうございますー。…うん、今のままだとただ汁吸って食べにくくなったパンと麺の食感が足りないラーメンなのですー。ちょっとこちらでも試作してみるのですよー」
この二つをおいしく合わせるには何が必要だ?
何をすれば強みを活かせる?
…焼きそばパンみたいに汁気を飛ばした麺を挟んで、肉や紅ショウガを挟んでみる?
…となると醤油より別のスープの方がいいかもしれない。
「ありがとうなのですよ!試作楽しみにしてますなのです!」
「はーい、では私はこれでー。」
ぼくは手を振って屋台を離れる。
さて、どうしたものか…確かロベルトさんがラーメン屋台をやっていたような。
…次の機会にでもいってみるとしましょうかー。
ぼくは考え込みながら寮へと戻った。