⑭必ず迎えに行くからね『独りぼっち』
夏休みが終わる前
離婚が成立した。
『離婚しました』
姉と私は
喜んだ。
これでもうお父さん来ないね
皆で暮らせるね
楽しみだな
と、
幸せな生活を想像していた。
でもある日
父が来た。
「行くぞ」
なんで?
どこに?
「お前お母さんとは居れないからな」
「暮らせるわけねーべや、暮らせると思ってたの?○○になんにも聞いてねーのか?」
「お母さんと暮らしたらお前学校も何も行けねーぞ。義務教育だ。早く準備しろ」
頭の中は
グチャグチャ。
話をされてる時
姉の旦那さんが迎えに来た。
姉は、
私より先に
出て行った。
姉は、
こうなる事を
分かっていた
みたいだった。
『またね、遊びにおいで』
と言った。
私は母と
洋服をまとめて
準備した。
母は、
『必ず迎えに行くからね。』
『お金貯めて、また一緒に暮らせる様にするから、それまで待ってて。』
『連絡するから、電話、とってね』
『頑張ってね』
『泣いたら負けだよ』
必ず迎えに行くからね。
その言葉を
信じた。
玄関を出ると
父はエンジンをかけて
車で待っていた。
母と
名残惜しそうにしては
いけないから
『バイバイ』
と言って
助手席に
乗った。
車はすぐに
発進した。
サイドミラーに
小さくなっていく
母は
手を振っていた。
私は
振り返す事も
窓を開ける事も
出来なかった。
サイドミラーを
ずっと見つめていた。
車が角を
曲がる直前
家に入るのが
見えた。
私は
母の
姿が
見えてるうちは
泣く事を
我慢した。
母と
離れるのが
嫌だった。
凄く凄く
悲しかった。
なんで?
こんなに嫌なのに。
もう
許してください
地獄に帰る
気持ちだった。
幸せになりたいと
思った。
頭の中で
そんな事を考えてたら
涙が出てしまった。
「何泣いてんの?」
「泣く事じゃねーべ」
「婆さんに謝れな」
父は
そう言った。
走る車から
今すぐ
飛び降りたかった。
信号で止まった時
何度も
降りて
逃げよう
と思った。
すぐに迎えに来る。
そう信じて
洋服の荷物を
バッグに入れたまま、
好きな番組も
録画をせず
学校から帰って
かかってきた
電話は
全てとった。
その電話は殆ど
借金取りの
電話だった。
『いません。分かりません。一緒に暮らしてません。』
と、
言い続けた。
[学校に行くからな!]
と脅迫された。
この家にいるより
捕まった方が
マシかな
とまで思っていた。
ある時から、
借金取りの電話は
来なくなった。
母は、
自己破産を
したのだ。
そして
中1の
夏から
中学校を
卒業するまで
母からの
連絡は
一度もなかった。
姉の所に
泊まりに
行った時
『お母さん
いつ迎えに
来るかなぁ』
と姉に言ったら
“迎えに来ないよ。
お母さんとはもう一緒に
暮らせないんだよ”
『だって必ず迎えに来るって
言ってたよ?
だから荷物もそのままで、
スマスマも
録画しないでるんだよ』
”お母さんね今○○県にいる。
会える様になったら、
お兄ちゃんに連絡する、
遊びには行けるけど
一緒には暮らせないからね。”
その後
何度か泊まりに行ったが
母と会う事は
出来なかった。
姉は旦那さんと離婚をし
他県へ引っ越して
シングルマザーになった。
そして兄も
結婚し
家を出て行った。
兄が出ていく時、
ホッカイロを渡した。
何もあげる物が
無かったから。
兄は
『死ぬなよ』
『殺すなよ』
と言った。
兄の車が
見えなくなるまで
二階の窓から
見送った。
皆
いなくなった。
皆
離れて行った。
私は
独りぼっちになった。
毎日
学校に行った
でも、
話せなくなった
声が
出なくなった
父は
何も
言わない私を
施設に入れよう
とした
祖母と父が
相談を
しているのを
聞いていた
施設に
行きたかった
ここにいるより
マシだと
思った。
私に出来る
精一杯の
心からの
抵抗だった。
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