ソシュールの「ラングとパロール」
【ラング】
ソシュールは、文化に内在する「言語習慣の体系」を「ラング」と呼びました。ラングは、各要素間の「差異関係」によって成り立っています。それは、我々と世界を媒介する関係の網の目のようなものです。我々が見ている世界は、ラングによって「分節化」されています。もし、文節化されていなければ、世界は意味を持ちません。人々は、これまでラングに基づいて世界を解釈してきました。そのラングは、文化現象の基本原理として働いているとされています。
【社会的存在】
人間だからと言って、もともと会話が出来るわけではありません。会話をすることが出来るのは、ラングが社会に内在しているからです。ラングは、一つの言語共同体のメンバーが、頭の中に共通に持つものとされています。例えば、日本人同士、お互いに話が通じるのは、日本語を共有してるからです。ソシュールは、ラングが、言語行為に先立って、潜在的に存在する社会的な事実だとしました。それが、人々が日常的に行う言語活動の基本的な条件になっているとされています。
【制度】
ラングとは、言語のルールのことです。それが、言語活動の規範になっています。ラングは、個人の外側にある社会的な制度のようなものです。それは、自己完結的で、それ自体で存在してるとされています。ラングは、言葉の項目を組織的にまとめた「一覧表」や「倉庫」のようなものです。会話をする時は、この一覧表から選択してるとされています。そのため、言葉というものは、完全に自由なわけではありません。ラングとは、複数の言葉を結びつけ、意味を持たせるシステムのようなものです。人々は、そのラングを使って会話をしています。
【パロール】
パロールは、会話を行為としてとらえた概念です。ラングは、そのパロールの実践によって具体化します。パロールとは、個々の具体的な会話のことです。ラングだけがあっても、実際に会話が行わなければ、それは具体化しません。パロールとは、特定の場面で行う「発話行為」のことです。その発話行為は、特定の話者によって行われます。例えば、ある日本人が、日本で具体的に何か日本語を発することなどです。 ソシュールは、その一回限りの出来事をパロールと呼びました。
【制約】
言語活動とは、ラングとパロールを含む概念です。ソシュールは、ラングとパロールは区別しました。しかし、それらは相互に依存し合う関係にあります。ラングがパロールに先立って存在し、その条件となっているからです。そのため、パロールは、ラングのないところでは機能しません。なぜなら、パロールを可能にしているのがラングだからです。仮に、ラングを無視して会話した場合、言葉の意味が通じなくなります。
【時間】
ラングは、各自のパロールの実践を通して構成され、変更されてきました。パロールには、ラングの構造を変化させる力があります。ラングとは、時間の流れをある一点で区切って、固定化した概念です。そのように、時間の流れを無視することを「共時的」と言います。ラングは、時代とともに変化してきました。そのため、ラングが変化した場合、パロールも変化します。例えば、日本語も歴史とともに変化してきました。その時代ごとに話し方が違うのは、そのためです。