個々の問題を全て解決すれば、全体は良くなるのだろうか?(現実はいつも対話から生まれる)

ケネス・J・ガーゲン、メアリー・ガーゲン著「現実はいつも対話から生まれる」を読みました。

コーチングや対話に関連する本を数冊読んでいるうちに、この本と出会いました。

本書を読んで、社会構成主義について、学んだことや感じたことを整理した。

社会構成主義(=Social Construction)とは

社会構成主義とは、私たちが現実だと思っていることは、「社会的に構成されたもの」であり、そこにいる人たちが「合意」することで初めて「現実」になるという考え方だ。

例えば、わたし自身について。
・家族にとって私は、娘である。
・高校時代の友人にとって私は、バスケ部の子である。
・アルバイト先のお客さんにとって私は、店員さんである。
・病院のお医者さんにとって私は、患者さんである。
・ティッシュ配りに人にとって私は、通行人である。

このように、どのコミュニティに属するか、どういう関係性を他者と結ぶかでわたしが何者かは決まる。

なにを「現実」とするかは、常にある一定の文脈・文化・伝統によって定められるのだ。

社会構成主義の概念では、唯一無二の真実は存在しないと考える。もう一つの声、ビジョン、構想、アイデアなどが加えられて新たな「関係性」が生まれれば、同時に新たな「意味」が生まれる。したがって、他社との新たな関係性が生まれ続ける限り、絶対的な真実は存在しえない。

プロブレムトーク/アプリシアティブインクワイアリ―

社会構成主義に関連して、物事をネガティブに捉えるか、ポジティブに捉えるか。捉え方によって、それはネガティブな現実にもポジティブな現実にもなる得る。

例えば、コロナウイルスが流行して、「家から出れない…」「やりたかったことが出来ない…」とネガティブに捉えれば、コロナはネガティブな出来事だ。一方、「家での時間を充実させるチャンス」「新しく勉強や趣味を始めるチャンス」とポジティブに捉えれば、コロナはポジティブな出来事だ。

前者のように、問題の指摘ばかりするような捉え方をプロブレムトークと呼ぶ。一方、後者のように物事のポジティブな側面を見出すことで最も効果的で高い能力を発揮しようとするプロセスをアプリシアティブ・インクワイアリー(AI)と呼ぶ。

プロブレムトークを選択して現実を構成すれば、解決すべき問題は溢れ出てくる。しかし、個々の問題を全て解決すれば、全体は良くなるのかは疑問である。一方、アプリシアティブ・インクワイアリ―を選択して現実を構成すれば、強味やリソースにフォーカスすることで全体は良い方向へ変化していくだろう。

*  *  *

社会構成主義について学んで、重要だと感じたのは、社会構成主義の考え方をすれば、自分が信じる真実や正しさは、絶対ではないと認識することだ。

自分の主張が絶対ではないと認識できれば、他者の主張する真実や正しさの背景にある文脈・文化・伝統に耳を傾けて、自分と他者とで生み出す新たな関係性によって、新しい主張を生み出すことが出来るだろう。

技術の進歩によって、社会の価値観の変化スピードが倍々に加速しているとも言われている現代。自分の価値観をアップデートし続けるためにも、今持っている自分の主張が絶対ではないという認識が重要だと感じた。


また、プロブレムトーク/アプリシアティブインクワイアリーに関しては、「個々の問題を解決すれば、全体は良くなるのか?」という問いがとても印象的だった。

簡単に言えば、「出来ないコトや苦手なコトを克服する」という考え方ではなく、「出来るコトや得意なコトを活かし、伸ばす」という考え方へ自分も、自分が所属するコミュニティや社会も変化すると素敵だなと思った。

そのために、アプリシアティブインクワイアリーについては、更に以下の2冊で勉強してみようと思う。

※過去の関連記事