#45 ハムエッグ×わかたまスープ
登場人物
・宗太郎(20):大学2年生。料理が得意で、毎日必ず朝ごはんを作る。
・真悠(20):大学2年生。宗太郎の彼女。ひとり暮らしをする宗太郎の家にたびたび泊まっている。
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朝7時。スマホのアラームが鳴る。5分刻みでアラームを設定しているために、すぐに目を覚ます僕。隣で寝ている真悠は、まだ起きない。僕は顔を洗い、朝ごはんの準備に取りかかる。
僕の得意料理はハムエッグ。と言っても、中火で熱したフライパンに油をひいて、ハムと卵を入れて塩コショウをかけるだけの簡単な料理だ。白身が白くなる前に、少しだけ麺つゆを入れるのが僕のこだわりのハムエッグ。今日も完璧なハムエッグだ。美味しそうだ。
真悠が目を覚ました。机にはすでに2人分のハムエッグ。顔を洗ったのにも関わらず、まだ眠そうな真悠。一緒にハムエッグを食べる。
相変わらず真悠は可愛い。それにしてもハムエッグが美味しい。僕のハムエッグは確実に世界一だ。
ハムエッグを食べ終わり、ゆっくり準備をして、真悠と一緒に家を出る。大学でたくさん講義を受けて、家に帰る。晩ごはんを食べながらバラエティを見て、風呂に入り、寝る前に大学の課題を終わらせて、眠りにつく。僕のいつもの何気ない日常だ。
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朝7時。スマホのアラームが鳴る。いつものように目を覚ました僕は、顔を洗い、いつものように朝ごはんの準備をする。
今日は真悠がいない。実は真悠に内緒で、ハムエッグに並ぶくらい美味しい朝ごはんを開発中だった。
「わかたまスープ」だ。
ワカメと卵が入ったスープ。ただそれだけなのだが、僕はやけに気合が入っていた。真悠に美味しいと言ってもらいたい。真悠の笑顔が見たい、その気持ちだけで、僕は究極の「わかたまスープ」を追求した。
真悠がいない日は必ずわかたまスープを研究していた。試行錯誤しながら、調味料を絶妙に変えていく。醤油がいいのか、麺つゆがいいのか、はたまた顆粒だしがいいのか。研究を重ねた結果行きついたのは、「牛骨でとったダシ」だった。
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家の近所にレトロな商店街があった。そこの一角に、昔からやっている精肉店がある。僕はそのお店によくお肉を買いに行っていた。店主のおっちゃんと仲良くなり、いつもお肉をサービスしてくれたりしている。
おっちゃんが牛骨を大量にわけてくれた。僕は家に帰ってすぐに牛骨スープを作り始めた。
水を入れた鍋に、綺麗に洗った牛骨を加え、アクを取りつつ30分ほど煮込む。30分経ったら、牛骨を取り出し、鍋の水を全て捨てる。再び鍋にたっぷりの水を入れて、再び綺麗に洗った牛骨を加え、玉ねぎも加えて一晩寝かせる。水を継ぎ足しながら毎日煮込むと、3ヶ月ほどは牛骨の旨味が出てくる。僕は最強のスープを手に入れた。
牛骨スープを鍋に入れ、そこに鶏がらスープの素を小さじ1入れ、沸騰させる。沸騰したら、ワカメを好きなだけ入れて、溶き卵を入れる。そして、よくかき混ぜる。最後に胡麻をひとつまみ加えれば、完成。
ついにたどり着いた最強のわかたまスープ。果たして真悠の笑顔を見ることはできるのか……。
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朝7時。スマホのアラームが鳴る。目を覚ました僕は、顔を洗い、隣で寝ている真悠を起こす。
僕の隣に立ち、やけに張り切る真悠だったが、真悠に仕事はない。僕が最強のわかたまスープを作る姿を見ていてくれればそれでいい。
慣れた手つきで牛骨スープを鍋から鍋に移し、鶏がらスープの素、ワカメ、しっかり溶きほぐした卵を入れてかき混ぜる。胡麻をひとつまみ加えて器に盛り付ける。
最強のわかたまスープをひと口飲んだ真悠は、満面の笑みで僕を見つめる。すぐに全て飲み干してしまった。これこれ。僕は真悠のこの顔が見たかったんだ。そう思いながら、僕もわかたまスープを飲み干し、いつものようにふたりで大学に向かうのだった。
fin.