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効率的ポートフォリオの導出(4):最小分散ポートフォリオの導出と最適条件
前回、ポートフォリオのウェイトの合計が1という制約条件下でリスク控除後リターンの最大化問題を解いて効率的なポートフォリオを導出しました。
今回は最小分散ポートフォリオを導出して、その最適条件(全ての資産の期待リターンが一定)を確認します。
まず最小分散ポートフォリオの定式化です。
$${\min \frac{1}{2}\bm{w}'\Sigma \bm{w} s.t. \bm{w}'\bm{1}=1}$$
いつものようにラグランジュ関数を用意します。
$${L=\frac{1}{2}\bm{w}'\Sigma \bm{w}-\lambda( \bm{w}'\bm{1}-1)}$$
偏微分して0とおきます。
$${\frac{\partial{L}}{\partial{\bm{w}}}=\Sigma \bm{w}-\lambda \bm{1}=\bm{0}}$$
$${ \bm{w}=\lambda \Sigma^{-1}\bm{1} (1)}$$
制約条件を使うため$${\bm{1}'}$$を両辺にかけます。
$${ \bm{1}'\bm{w}=1=\lambda \bm{1}'\Sigma^{-1}\bm{1}}$$
$${ \lambda=\frac{1}{ \bm{1}'\Sigma^{-1}\bm{1}}}$$
これはかなりすっきりしていますね。(1)式に代入すれば最小分散ポートフォリオが得られます。
$${ \bm{w}_{MV}= \frac{\Sigma^{-1}\bm{1}}{ \bm{1}'\Sigma^{-1}\bm{1}}}$$
$${\bm{1}}$$と$${ \Sigma }$$だけでできている非常に美しい解ですね。分子で$${\bm{1}}$$を共分散行列の逆行列で引き戻しているので、すでにこの解に最小分散ポートフォリオの最適条件(全ての資産の期待リターンが一定)が垣間見えています。目的関数にも制約条件にも期待リターンが入っていないので、最適解にも期待リターンが入っていません。当たり前ですが、最小分散ポートフォリオは期待リターンの影響を全く受けない最適化になります。
さて、同じ制約条件下の最適ポートフォリオは以下でした。
$${ \bm{w}_{Opt}=\Sigma^{-1}(\bm{r} -\frac{\bm{1}'\Sigma^{-1}\bm{r} -1}{\bm{1}'\Sigma^{-1}\bm{1}} \bm{1})}$$
全ての資産の期待リターンが定数$${r}$$の場合を考えます。
$${ \bm{w}_{Opt}=\Sigma^{-1}(r\bm{1} -\frac{r\bm{1}'\Sigma^{-1}\bm{1} -1}{\bm{1}'\Sigma^{-1}\bm{1}}\bm{1})}$$
$${ =(r -\frac{r\bm{1}'\Sigma^{-1}\bm{1} -1}{\bm{1}'\Sigma^{-1}\bm{1}})\Sigma^{-1}\bm{1}}$$
$${ = \frac{\Sigma^{-1}\bm{1}}{\bm{1}'\Sigma^{-1}\bm{1}} }$$
はい、最小分散ポートフォリオになりました。全ての期待リターンが一定の場合は最小分散ポートフォリオが最適ポートフォリオになることが示せました。
今後のエントリーでリスクパリティや最大分散度ポートフォリオも同様に最適性を確認してみたいと思いますが、最小分散ポートフォリオのようにきれいには示すことができず、少しトリッキーな証明になります。