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アクティブ運用の基本法則(7):アルファ=IC×ボラティリティ×スコア(クロスセクション)
以下のエントリーでは時系列の線形回帰モデルを使って、アクティブ運用の基本法則(アルファ=IC×ボラティリティ×スコア)を確認しました。クロスセクション(銘柄間)の回帰モデルを使っても同様の結論を導き出すことができます。
まずクロスセクションの線形回帰モデルを用意します。
$${r_i^{Total}=\beta_iR_B+r_i}$$
$${r_i^{Total}}$$が銘柄$${i}$$のトータル・リターン、$${\beta_i}$$がベータ、$${R_B}$$がベンチマーク・トータル・リターン、$${r_i}$$が銘柄$${i}$$のレジデュアル・リターンです。
次にレジデュアル・リターンをスコアを使って予想することを考えます。
$${\alpha_i=a+bS_i}$$
$${\alpha_i}$$が銘柄$${i}$$のアルファ(予想レジデュアル・リターン)、$${S_i}$$がそのスコアです。
最小二乗法でパラメータを求めます。
$${\min \Sigma_{i=1}^N \varepsilon_i^2 =\Sigma_{i=1}^N (r_i-a-bS_i)^2}$$
正規方程式を解くと、
$${a=\bar{r}-b\bar{S}}$$
$${b=\frac{Cov(r, S)}{Var(S)}=\frac{\sigma_{r, S}}{\sigma_S^2}}$$
$${\bar{r}}$$はレジデュアル・リターンの平均、$${\bar{S}}$$はスコアの平均です。これをもとの式に代入すると、
$${\alpha_i=\bar{r}-b\bar{S}+bS_i=\bar{r}+b(S_i-\bar{S})=\bar{r}+\frac{\sigma_{r, S}}{\sigma_S^2}(S_i-\bar{S})=\bar{r}+\frac{\sigma_{r, S}}{\sigma_r\sigma_S}\times \sigma_r\times \frac{S_i-\bar{S}}{\sigma_S}}$$
レジデュアル・リターンの平均が0、レジデュアル・リターンとスコアの相関がIC($${IC=Cor(r, S)}$$)なので、
$${\alpha_i=\bar{r}+\frac{\sigma_{r, S}}{\sigma_r\sigma_S}\times \sigma_r\times \frac{S_i-\bar{S}}{\sigma_S}=Cor(r, S)\times \sigma_r\times z_i = IC \times \sigma_r \times z_i}$$
で、アルファ=IC×ボラティリティ×スコアというアクティブ運用の基本法則が求まりました($${z_i}$$は標準化されたスコア)。時系列の場合、レジデュアル・ボラティリティは銘柄$${i}$$のレジデュアル・リターンの時系列標準偏差$${\sigma_i}$$であったのに対して、ここではレジデュアル・リターンのクロスセクション・ボラティリティ$${\sigma_r}$$になっています。
ご参考になれば幸いです。