私のたからもの
私が最も影響をうけたのは、吉野裕子先生の本で「陰陽五行思想からみた日本のお祭り」「陰陽五行と日本民俗」「陰陽五行と日本文化」「十二支」「扇」「蛇」などなど陰陽五行思想から日本の民俗を研究した本である。
陰陽五行思想と言われても一般的にはあまり馴染みがないが、私たちの日常の生活の中にいまだに息づいているようである。陰陽は夜と昼、生と死、明暗など対立する二つの気であり、五行は古代中国に端を発する自然哲学で、万物は木、火、土、金、水の5種類の元素からなり互いに影響し合いながら循環するという考えである。
陰陽五行という考え方に出会ったおかげで私が幼い頃より感じていたお祭りやしきたりの疑問が自分なりに納得できる事があった。例えば陰陽については、ご飯を食べる時にご飯は左側に置くと教わってきたがなぜかわからなかった、地球から見ると北極星は動かないので中心と考え北を頭にして寝っ転がると東が左側になり西が右側になる、日が昇る東側(左)は陽で西側(右)は陰になる、日本では稲作はとても重要なのでお米も左の陽の手に側に置くように決まっているらしい、また茶道のお稽古で右足から茶室に入り左足で茶室から出ることの意味や、普段は着物の合わせ目を左上に着るが亡くなった人の場合は右上に着る、これらの風習も陰陽思想と考えられる。 また数字にも陰と陽があり偶数は割り切れるので陰、奇数は割り切れないので陽と考えられている、9は割り切れない最も大きな数字なので中国では無限と理解され縁起の良い数字とされる、蒔絵のデザインで九貢図という像が背中に宝物を運ぶデザインがあるが、これは沢山のまたは無限の貢物を表している。
五行は木、火、土、金、水が季節、方位、色にも配当されていて木は青春東、火は赤夏南、土は黄土用(季節と季節の間)、金は白秋西、水は黒冬北となる、北は黒で大黒様は頭巾を被り打出の小槌を持ち米俵の上に立ちネズミを配し10月子日には大黒を祀る子祭りがあるらしい、北は干支では子の位置で子の漢字は初めの一と終了の了が一体化し十二支の最初と最後を表して循環すると感じられる。 私が陰陽五行思想について説明することは不可能であるが、そのような考え方があることを知る事で江戸や明治の蒔絵や漆器のデザインの意図を知る事ができる、そのため私が制作する作品にも陰陽五行思想を反映する事で飛鳥時代に中国より伝わり日本で大切に育まれた思想を漆芸作品を通して未来に伝える事ができると考えている。
彦十蒔絵主宰 若宮隆志
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