運命は我々の行動の半分を支配し、残りの半分を我々自身にゆだねている。
ニッコロ・マキャベリ
ニッコロ・マキャベリは、16世紀初頭のイタリア、特にフィレンツェで活躍した政治思想家です。
当時のイタリアは、数多くの都市国家に分かれており、フランスやスペインなどの大国にたびたび侵略されていました。また、国内では権力争いや陰謀が絶えない不安定な状況が続いていました。
こうした中で、国家をどのようにして安定させ、強固なものにするかが、政治に携わる者にとっての最重要課題となっていました。
マキャベリは、政治を現実的に捉え、理想や道徳だけで物事を判断しない「現実主義者」でした。
そのため、彼は『君主論』などで、権力の獲得や保持のためには非情な手段も必要だと説き、良い結果を得るために行動することの重要性を強調しました。
マキャベリは「運命」(fortuna)と「能力」(virtù)の2つの要素に特に関心を持っていました。
「運命」とは、人間がどうにもできない外的な力、すなわち天災や社会情勢の変化、予測できない出来事を指します。彼はこの運命を川に例えて、次のように述べています。
「運命は時に川のように荒れ狂い、人間の営みを押し流すことがある。しかし、その運命をただ受け入れるのではなく、堤防を築いたり、川の流れを変えたりすることによって、危険を最小限に抑えることも可能だ」と。
一方で、「能力」(virtù)は、人間の勇気や知恵、決断力、柔軟性などを含む力を指し、逆境に対する対処力や工夫といった人間の行動的な側面です。
マキャベリによれば、たとえ運命が半分の力を持っているとしても、残りの半分は人間の努力と工夫にかかっており、運命に完全に従う必要はないと考えていました。
「運命は我々の行動の半分を支配し、残りの半分を我々自身にゆだねている」
この言葉には、運命を完全に避けることはできないものの、人間の行動や選択が未来を変える力を持っているというメッセージが込められています。
運命を運河のようにコントロールするのではなく、むしろその変化に適応し、工夫していくことで、自らの道を切り開くことができるという考え方です。
マキャベリは、現実の厳しさに向き合い、無力に感じる場面でも自らの力で状況を変えられるという希望を説いています。
私たちは人生の多くを外部の力に左右されるものの、それでもなお、自己の意志や行動によって運命に挑むことができるというマキャベリのメッセージは、時代を超えて人々に勇気を与える考え方と言えるでしょう。
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