君子は豹変(ひょうへん)し、小人は面(おもて)を革(あらた)む。
易経
この言葉は、『易経』という書物の文脈で重要な意味を持ちます。
君子(くんし)は、古代中国の儒教思想において「道徳的に高潔であり、知恵と徳を備えた立派な人」のことを指します。君子は学び続け、自己を高め、常に正しい道を歩もうとする人物像です。
小人(しょうじん)は、その反対に「道徳心が欠け、浅はかで利己的な行動をとる人」のことを意味します。彼らは自分の利益や外面を優先し、内面的な成長や道徳的な進歩を軽視する傾向があります。
「豹変」とは、豹(ヒョウ)がその体の模様を素早く変える様子を指しますが、この表現が象徴するのは、「君子が劇的に成長し変化する能力」です。
彼らは新しい知識や経験を通じて、自分の誤りや限界に気づき、必要とあればすぐに自らを正すことができる。ここでの変化は、内面的で深い変革を意味します。
具体的には、君子は柔軟な心を持ち、常に現実を見つめて学び続けます。
たとえこれまで信じていたものや習慣が誤りであることに気づけば、その瞬間に大きく変わる勇気を持っている。彼らの変化は、表面的なものではなく、本質的で内面的な成長を意味します。
これに対して、「面を革む」の「面(おもて)」は「顔つきや態度」を指します。つまり、小人は、表面的には態度を変えたり、言葉遣いを変えたりして、外見上の変化を見せることができますが、内面的な成長はありません。
彼らは周囲の状況に応じて、取り繕うような行動を取るだけで、本質的な考え方や心の持ち方は変わらないということです。
人生や社会の中で、人は変わることが求められる瞬間が多々あります。その際に、君子のように内面から変化を受け入れ、成長していく姿勢が大切であるという教えです。
反対に、小人のように外見だけを変えることに執着するのではなく、より深い意味での変化を目指すべきだという戒めでもあります。
#易経 #君子 #小人 #豹変