ジオパークが熱い!
今回の記事は、東海新報2024年5月28日付「初夏の魅力に触れる 碁石海岸ジオさんぽ 次回は7月に開催」です。2013年9月に日本ジオパークとして認定された「三陸ジオパーク」。地質学や地理学の観点での価値があるとされ、三陸復興国立公園でもある当地は新たな観光スポットとして注目されています。
ときどき車で道を走っていると、リュックを背負って歩いている人を見かけるようになりました。そんな中で開催された「ジオさんぽ」。どんな魅力があり、観光振興の新たな一手になるのでしょうか。
(東海新報 https://tohkaishimpo.com/)
記事は、碁石海岸集団施設地区運営協議会が企画したもので本年度は全5回の日程が予定されています。その初回が5月25日に開催され、認知絵ガイドによる説明も含めた散策であったことが報じています。
初めて参加する人もいて、いろいろと講師に質問しながら楽しい時間を過ごしたことが伝えられています。
記事の最後に次回の開催予定が記されていました。
最近、市内でもリュックを背負って歩いている人を見かける機会が多くなりました。ユネスコ世界ジオパークへの登録活動も盛んになっていると聞いています。地域活性化の新たな起爆剤になるのでしょうか。
ジオパークって何?
ジオパークとは何でしょうか?
ジオパークを主催するユネスコのガイドラインには、「ジオパークとは、保護、教育、持続的発展という総体的な観点から地質遺産を扱うある地理的な地域ないし空間です」と定義されています。
地球活動が生み出した地形や地質だけでなく、それらと深くかかわりのある人々の暮らしや歴史、食べ物も対象になるのがジオパークの特徴です。
国内には、ユネスコ世界ジオパークは洞爺湖・有珠山や伊豆半島など10ヶ所が認定され、世界では48カ国213ヶ所となっています(2024年3月28日現在:日本ジオパーク委員会ホームページから)。また、日本で認定されたジオパークは、ユネスコ世界ジオパークを含めて46ヶ所あり、ジオさんぽ会場の碁石海岸のある三陸海岸も認定されています。
三陸海岸 = 三陸ジオパーク
三陸ジオパークは、2014年9月に日本ジオパークに認定されました。青森県八戸市から岩手県を通り宮城県気仙沼市までの220kmにも達します。
三陸ジオパークのホームページでは北部・中部・南部に分けて写真を掲載してみどころを次のとおり紹介しています。
(三陸ジオパーク https://sanriku-geo.com/)
<北部>
・小袖海岸(久慈市) ・種差海岸(八戸市) ・十府ヶ浦(野田村)
・アンモ浦の滝(普代村)
<中部>
・早池峰山(宮古市、遠野市、花巻市) ・浄土ヶ浜(宮古市)
・龍泉洞(岩泉町)
<南部>
・釜石鉱山(釜石市) ・橋野鉄鉱山(釜石市)
・今出山金山跡地(大船渡市) ・大理石海岸(気仙沼市)
今回のジオさんぽが開催された大船渡市は南部エリアに位置し、碁石海岸・穴通磯が知られています(写真は大船渡市観光サイト「おおふなとりっぷ」から拝借しました)。
写真から三陸海岸の造形美が見てとれます。観光名所になるのもうなづけます。
奇岩の連なる碁石海岸
碁石海岸は、大船渡市末崎半島の東南端約6kmの海岸線のことを指します。三陸ジオパークのジオサイトの1つに数えられ、大船渡随一の景勝地となっています。
碁石海岸の名前の由来は、東南に位置する碁石浜に、波で磨かれた黒い玉砂利が敷き詰められていることが名前の由来だというのが一説とされています。国の名勝・天然記念物、日本の渚百選、日本の白砂青松百選にも指定されている結構いいところなんです(写真は大船渡市観光物産協会のホームページから拝借しました)。
どのくらい来訪しているの?
名勝地「碁石海岸」ですが、どのくらいの人が訪れているのでしょうか。
大船渡市の統計書では、観光客入込状況や宿泊状況の数値を把握して公表しています。2000年から2023年までのデータを入手することができましたが、2015年以前とそれ以降では数字の桁が違いすぎるので、2016年以降の数字をまとめたいと思います。
(大船渡市 https://www.city.ofunato.iwate.jp/site/toukeisyo/)
観光客入込状況(前:合計 中前:県内 中後:県外 後:県外の割合)
2016年 131,906人 76,110人 55,796人 42.3%
2017年 133,597人 76,284人 57,313人 42.9%
2018年 119,164人 69,110人 50,045人 42.0%
2019年 123,237人 73,819人 49,418人 40.1%
2020年 71,868人 45,636人 26,232人 36.5%
2021年 64,862人 41,187人 23,675人 36.5%
2022年 77,041人 48,921人 28,120人 36.5%
2023年 100,303人 73,021人 27,282人 27.2%
宿泊者数も整理されていますので示します。
宿泊状況(前:合計 中前:県内 中後:県外 後:県外の割合)
2016年 16,449人 6,267人 10,182人 61.9%
2017年 8,593人 3,214人 5,379人 62.6%
2018年 7,227人 2,522人 4,705人 65.1%
2019年 7,166人 2,085人 5,081人 70.9%
2020年 2,071人 714人 1,357人 65.5%
2021年 1,556人 537人 1,019人 65.5%
2022年 2,043人 705人 1,338人 65.5%
2023年 1,880人 728人 1,152人 61.3%
いずれも2020年から2022年の県内・県外比率が同じなのが気になりますが、観光客入込状況ではすでに減少傾向にあった状態で新型コロナウイルス感染症の拡大に合わせて大きく落ち込んだものの、2022年から回復しています。しかし、コロナ禍前には戻っていません。また、宿泊状況も減少傾向が続き、コロナ禍で大きく減少し、そのまま回復していない状況です。
みちのく潮風トレイルの好影響
環境省では、三陸復興国立公園の雄大な自然を体感できるよう「みちのく潮風トレイル」を設定しました。北は青森県八戸市から南は福島県南相馬市までの太平洋沿岸部を縦断する歩いて渡るルートです。
(みちのく潮風トレイル https://tohoku.env.go.jp/mct/)
碁石海岸もトレイルに含まれており、ジオさんぽは、このトレイルに合わせてジオサイトを身体で感じるための催しになります。
碁石海岸を含む釜石市から気仙沼市までのエリアは、東日本大震災後に環境省が2014年に整備した碁石海岸インフォメーションセンターを拠点に大船渡自然保護官事務所と大船渡市観光物産協会が所管し、トレイルに関する様々な取組みを実施したり、環境を整えたりしています(写真は碁石海岸インフォメーションセンターのホームページから拝借しました)。
(碁石海岸インフォメーションセンター https://goishi.info/)
碁石海岸インフォメーションセンターの利用者数はどのくらいなのでしょうか。環境省と大船渡市の公式データが入手できませんでした。しかし、東海新報 2024年4月25日付の記事にデータがありましたので取り上げます。
利用者数(前:碁石海岸IC 後:観光客入込数に対する比率)
2016年 63,666人 48.27%
2017年 82,833人 62.00%
2018年 59,037人 49.54%
2019年 64,093人 52.01%
2020年 38,561人 53.66%
2021年 42,077人 64.87%
2022年 57,702人 74.90%
2023年 64,258人 64.06%
観光客入込数にカウントされる人たちは碁石海岸インフォメーションセンターの利用者と重複すると思われます。多くの方がセンターを利用しており、単に海岸に寄っただけではなく、センターを入口として碁石海岸を漫喫しているということを示しています。
また、隣接する碁石海岸キャンプ場の利用者も合わせてまとめてみます。
(大船渡市 https://www.city.ofunato.iwate.jp/site/toukeisyo/)
利用者数(前:キャンプ場 後:宿泊者数に対する比率)
2016年 1,162人 7.06%
2017年 1,359人 15.82%
2018年 1,425人 19.72%
2019年 1,970人 27.49%
2020年 1,572人 75.91%
2021年 1,630人 104.76%
2022年 2,483人 121.54%
2023年 3,084人 164.04%
宿泊者数と碁石海岸キャンプ場利用者は重複しないので、比率はどちらが多いのかを示しています。キャンプ場利用者は増加傾向にある一方で宿泊者数は減少傾向にあることから、2021年以降はキャンプ場利用者数が宿泊者数を上回っている状況になっています。
これらのことは勇壮な海岸美を見るだけの観光は減少し続け、みちのく潮風トレイルの玄関口である碁石海岸インフォメーションセンターやキャンプ場といった体感する観光は一定の利用者がいて、増加傾向にあるということが分かります。
みちのく潮風トレイルの設定に加えて、新型コロナウイルス感染症によって、屋外レジャーが志向されるようになったことが利用者増加につながっているものと推察されます。
どんな体験メニューがあるの?
大船渡市観光物産協会のホームページでは、市内の観光スポットや特産品などに加えて体験メニューも紹介されています。碁石海岸を会場とする体験メニューは次の三つがあります。
① 認定ガイドと歩く★三陸ジオパーク碁石海岸ツアー
三陸ジオパーク認定ガイドの千田さんと一緒に碁石海岸の名所を巡るツアーです。勇壮な岩の絶景を堪能できます。
② サスティナブル・トレッキング IN 大船渡
三陸ジオパーク認定ガイドの佐藤さんが案内します。穴通磯から大船渡湾口防波堤までをトレッキングで巡ります。
③ 碁石海岸穴通船
碁石観光遊覧船組合の小型船に乗り込み、穴通磯の穴を船でくぐるツアーです。間近に見る絶景が素敵です。
いずれの体験メニューも碁石海岸の地形を体感できるツアーとなっており、これぞジオパークって感じること間違いなしです。天気が良い日は浜風がとても爽やかです。
最後に
古くから観光地として多くの人が訪れている碁石海岸ですが、レジャーやエンターテイメントの多様化によって人々の時間の使い方が大きく変わってきている中で、単に奇岩や絶景を見るだけの観光は好まれなくなっているのではないでしょうか。
その一方で、トレッキングやキャンプといった自然を満喫できる体感型のレジャーは数は多くはないものの確実なニーズがあるように感じます。
さらに活性化するためには、自然満喫型レジャーの次は食を楽しむ機会をどう提供できるのかにかかっているように思います。
一汗かいた後の一杯のようなものが欲しいところですが、ここに行けば大船渡を堪能できる食の提供する場がパッと思い浮かびません。
どこの飲食店もおいしいとは思いますが、ここに行けば大船渡港の前浜ものがいつでも食べられるといったまちとしての演出が必要と思います。素材はあるので、いかに知られるように広められるかが課題になります。
今後も気になった記事をちょこっと深掘りしてみたいと思います。
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