欲求5段階説(マズロー)とERG理論(アルダファー)、2つの欲求理論の主な特徴
前回、モチベーションとお金の関係について掲載しましたが、このモチベーションを考える上で、あまり面白くない人間の欲求に関する理論について簡単に触れたいと思います。
マズローの欲求5段階説
マズローの欲求5段階説マズローの欲求階層説では、人間は最低時の欲求(最も基本的で強制的)から順番に満たしていき、徐々に高次の欲求を求めていくと定義されている。つまり欲求は階層の構造を成していて、一段ずつ昇って行くことができる「はしご」のようなものである。低階層の欲求が満たされることにより、低階層から高階層への階段を登っていくことになる。しかし、下位の欲求の満足が脅かされた場合、その欲求は即座に重要なものとなる。
その反面、ひとたび欲求が満たされると、その欲求は重要なものでなくなってしまう。満たされた欲求は、行動にモチベーションを与えるものではなくなってしまう。例えば、設備が整ったオフィスなどの環境を与えても一時的にはモチベーションは上がるが、それが当たり前になると重要なものではなくなってしまう。人は多く得れば得るほど、更なるものを得たいとなる。この理論の前提にあるのは、多くの人は放っておくと怠けるといったことがあるようだ。
私の経験でもオフィスを移転し、最新の設備が整った新社屋に移転し、設備が新しくなっても、1年も経たぬうちに当たり前となり、モチベーションは元通りになった経験を思い浮かべる。
ERG理論(アルダファー)
ERG理論のベースにはマズローの欲求段階説がベースにあるが、ERG理論では三つの基本的な欲求が同時に存在することがあるとしている。生存欲求は、基本的な生存欲求であり、例えば「安全、雇用補償、医療給付など」がある。関係欲求は、他者との良好な関係に関する欲求であり、例えば、「人から尊敬されたい」という欲求となる。成長欲求は、自己啓発、創造、達成に関する欲求となり、例えば「仕事を頑張って優秀で稼げる人になりたい」などである。これらの3つの欲求は、同時に存在するとされている。下図が段階的になっているのではなく、行ったり来たりを繰り返すとされている。
マズローの欲求段階説とアルダファーのE R G理論の違い
私の経験と考えでは(先進国を前提に置くと)現代社会において多くの人は、生理的欲求はあまり重要性を持っていない。2つのアプローチのうち従業員などのモチベーションを高めたい場合には、ERG理論を基準に考える方が良いと考えている。E R G理論でいう成長欲求や関係欲求といった自我の欲求がより重要であると考えられる。自我の欲求についての行動の対象は,対物的・対人的・対自我的と分類されるが この3つの環境のいずれかに働きかけることで従業員のモチベーションに効果を得られると考える。
例えば成長の欲求が強い従業員に対しては、資格取得を奨励したり、社内ベンチャーの制度を設けるなどの施策を行えば、モチベーション向上の効果を期待できると考える。仮に従業員が強く持つ欲求を満たせない場合には、より下位の欲求を満たすような施策を行うのも有効な手立てかもしれない。福利厚生を充実させたり、社内交流を活発、社内サークル活動などを実施する企業もある。
ERG理論を用いる上で重要なポイントは、モチベーションを上げる方法は一つではないということである。一人一人の性格や欲求を見極め、最もモチベーションを高めることができる施策を見つけ出す姿勢が重要だと考える。
※本記事は、University of Massachusetts Lowellの授業を参考にし、学んだことの一部をアウトプットのため記載にしております。