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歩いて、エッセイを残す。(大神神社編)

朝8時、起床。
まず、体の違いにびっくりする。

昨日の整体と、最近始めたストレッチが功を奏したようだ。

とにかく体がめちゃ軽い。
二度寝したくならないことってあるんだな。
それだけ、普段のわたしは疲れているということか。

しゃきんと起きて、溜まった洗濯物を回し、出かける準備をする。

今日は奈良県の大神神社に行く。

前厄な上、絶賛☆体調不良中なので、体にくっつき倒している、ありとあらゆる良くないものを全力で祓いに行こうと思い立った。
これからはじまる、新しい生活へのゲン担ぎも兼ねて。

いつも必ず身に付けるアクセサリーは今日は付けない。飾るものは、何となくいらない気分だった。
歩きやすい靴を履いて、お気に入りのリュックを背負って、余裕を持って家を出た。

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MILLETのロゴが可愛い。


仕事の日、さいきんは特に二度寝をギリギリまでして粘るもんだから、駅までの道を短距離選手と同じフォームで駆け抜けてばかりいた。
お出かけする今日くらいは余裕を持って向かいたかった。


今日行く大神神社は、日本最古の神社で、神社の中にある「三輪山」という山そのものに神様が宿っているらしい。とても神聖な場所で、昔は人が立ち入ることすら許されなかったそうだ。

9時40分、電車へ。
余裕で電車に乗り込む。順調、順調。



わたしは毎年、ご祈祷をしにこの神社に行っ…

毎年…?はっっっ…!!!!
電車に揺られながら大きな忘れ物に気がついた。
前にご祈祷してもらったときのお札やら買った御守りやら全部、家に忘れてきてもーてる。順調剥奪だバカヤロっ!!
あれ返すために行ってるところもあるのに!

思い出した今は絶賛、電車に揺られているし、なんならもう乗り換えの駅に着く。いやだ、戻りだぐないっっ!!!

聞けば、大神神社に向かう日に起こることは、神様からのお知らせなのだそうだ。
『確認を怠ることなかれ』ということか。普段の諸々から思い当たることが多すぎて、手を頭にあて、天を仰いだ。
神様…確認はとても苦手ですが、これからはきちんとします…。
お札や御守りのことは、ご祈祷してもらうときにでも聞こう。

10時4分、鶴橋駅着。
気を取り直して、鶴橋から近鉄に乗り換える。
ノンカフェインコーヒーがよかったのになかったので、ふつうのコーヒーを買う。

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ここで、若干の便意を覚える。
乗り換え時間約7分。乗車時間約40分。どうする。片手にはコーヒー。
あかん、ぜったいトイレ行きたなるやん。


しかし、この電車を逃したら到着時間が30分以上遅れてしまう。
今日は三輪山に登ろうと決めていて、入山受付は12時まで。到着がギリギリすぎる!

大腸や諸々と相談した結果、「電車に乗っちゃう!」を選択。黒のズボンで来たし、最悪、何とかなるので。



のんびり電車に揺られる。
電車の窓からさす光が心地よい。癒される。
コーヒーも美味しい。
電車の優しい揺れに、思わずうとうとする。


『お手洗いは、2両目と3両目の間にございます』
ここで、吉報すぎる車内アナウンスが飛び込んできた。

なんや、トイレあるんやないか、ワレェ!
無敵じゃないか。怖いものはもう、何もない。そう感じるとすぐに睡魔取り込まれ、10分くらいぐっすり眠った。


起きてすぐ、目がカッ!っとなった。便意だ。
おのれ、急にきたな。
でも、慌てる必要はない。この電車には備え付けのトイレがあることを、わたしは知っている。

電車の振動に歯を食いしばりながらトイレに向かい、鍵が空いていることに安堵しながらセットポジションに入り、全集中する。

お通じがあまり良くない方なので、この出来事だけでも、素晴らしい一日のスタートが切れた、そう感じた。


意気揚々と座席に戻り、時計を見る。
次は、桜井駅で10時53分に乗り換えか。
時計を見る。10時54分だった。


…過ぎとんな?????

めちゃくちゃうんこしてたら、めちゃくちゃ降り忘れてた。
神様、これはなんのお知らせですか?
『うんこはしたくなったときにすぐするのが吉』。そういうことですか???


慌てても仕方がない。過ぎちゃったんだもん、仕方ないよね。ってことで、空(くう)を見つめ、次の駅で降りた。

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どこやねん。(失礼)

だーーーれもおらん。
あ、でも次の駅の長谷寺って、確かアジサイが有名なお寺だった気がする。奈良だったのね。
意図せず、有益な情報が得られてよかった。
梅雨の時期に来よう。



11時29分、三輪駅着。
けっきょく、入山受付ギリギリ。
間に合えばいっか〜。

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御守り売り場の方に受付場所を聞き、少し急いで向かう。

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不憫な名前の植物。

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より端的で不憫な名前の植物。
ボケが隣同士、仲良く生えてた。


入山の受付をする。
「往復で2〜3時間かかりますが、よろしいでしょうか?」と言われ、前回登った4年前のことを思い出す。
そんなにかかった記憶はなかったけれど、2,3時間というワードに少しのけぞる。
「はいっ!」つったけど、心の中では「…へぁい(小声)」くらいの感じで返事をした。


11時55分入山。

軽くお祓いを済ませ、いよいよ入山する。
前回、入山前に備え付けてある杖を見て、「いやw杖てwwいらんいらんww」と嘲笑しつつも念のため1本持って上がったのが大正解だった。
たしかあのときは、割とすぐに杖に頼り、杖に体重を預けまくって登った。
今回は2本。増やしといた。ウケる。



御神体に入山してからは、撮影禁止なので、携帯は触らずリュックの中へ。
いつもあれこれ考えを巡らせてしまうので、山に登っている間だけでも無になって、目の前のことだけに集中しようと決めていた。


ここからは、記憶を頼りにお届けしていく。

入山開始、5分後。
あれ?こんなしんどかったっけ?
早くも杖2本で体を押しながら進む。読んでくださってるそこのあなた、杖をナメちゃいかんよ。まぁーじで捗る。
山と杖って、こんなに相性いいの?これまで、山にはおにぎりがいちばん相性いいと思ってた。



登り始めて15分経たないうちに、早くも汗ばんできた。ダウンを着てきたことを猛烈に悔やみ、引きちぎりたい衝動に駆られたが、大人だし、長女なので我慢できた。


屋根付きの休憩所を見つけ、一片の迷いもなく足を伸ばしてベンチに座る。ダウンはリュックに詰め込んだ。ダメだ、もうしんどい。


でも、山っていいな。空気が澄んでいて、鼻の奥がツンとして。頬が冷たくなるのもいい。

これから酷使することになるであろう足腰を中心にストレッチする。
靴を脱いで太ももの前や外を伸ば…足クサっ。
え、もう?もうクサいの??

神様、こちらも一緒に清めてください。

意を決して、山を登る。序盤にも関わらず急勾配な山道が続いたので、はちゃめちゃに杖を使いながら登る。釜爺やん。って思った。



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少し想像してみてほしい。長い杖を両手に携え、忙しく動かしながら山道をガニ股で駆け上がる姿を。なっ?

三輪山は、登山道と下山道が同じなので、登り終えた人たちが下りてくる。
すれ違うには少し狭い道もあるので、善人のふりをし、立ち止まって譲った。
ただ休憩してるだけで、先ゆく人たちにお礼を言われる。この仕事だけして、月50万円欲しい。

釜爺で山道を行く途中、カップルがイチャつきながら下山してきた。「あゆにゃん」と呼ばれるその女は、男と手を繋ぎながら内股で山道を下る。
こんな急勾配にその内股で転ばないって、おまっ…、見た目によらず体幹エグいんか?と思いながらも、今回ばかりは決して道は譲らず、強い気持ちで歩みを進めた。杖と手を繋ぎながら。

山の中には何地点か、お詣りができる場所が設置されていて、見つけたら手を合わせて、頂上へと進んでいく。


これより先は、「しんどい」「木の幹太い」「しんどい」「切り株座りやすい」「岩も悪くない」「しんどい」という記憶しかない。


キツい勾配の山道を登るたびに、釜爺が脳裏をかすめる。
ぜんぜん無になれんのだが??????
まぁ、あれこれ考えるより釜爺の方がぜんぜんいいか。

目線を少し先にやって歩いた方が楽なのかなと思い、顔を上げて進んだけど、つまずいてこけそうになった。そらそうか。
未来ではなくて、今の自分がどうしたいかが大事なんだよ、じゃないと結局いつか失敗しちゃうよって、なんとなく教わった気がした。こじつけだけれど。


途中、しんどすぎて「しんどっ…デュフw」って声に出して、にまにまと笑いながら登った。人は本当にキツいとこうなります。大丈夫。山しか見てないから。



しんどいけど、楽しい。

竹でできた杖がカポンカポン鳴って、風に細い枝がギィギィしなって、土を踏む音がザッザッと聞こえる。上がる体温。山に登っている実感がわく。


頂上まで、もう少し。立ちはだかる急勾配。
足もしんどいし、息も切れる。
ほとんど何も考えられない状態で、ついに到達した。1時間かからないくらいで着けただろうか。


ここには大きな木々の前に、小さな賽銭箱が備え付けてあって、お詣りができるようになっている。
スッキリとした神聖な気持ちで手を合わせ、少し休憩してから下山する。


下っていると、山道が急だったことを改めて実感する。こんな道、登って来たんだな。偉いな。嬉しいな。


前を歩いているご夫婦と、わたしより少し年上っぽい娘さんの会話が聞こえる。

「膝、めちゃくちゃ笑ってるわ!」
ガハハと笑うお父さんの言葉に、そんなにキツいんやな…お疲れ様です…と他人事のように耳を傾けていて、ふと気が付いたけれど、わたしの膝も、ちょっと笑ってた。
爆笑とまではいかないけれど、「デュッ、デュフッ、デュフフフw」くらいには笑ってる。
それを見て、わたしも同じように笑った。


体から何か湧き出るようにワクワクする感覚があったので、比較的平坦な道に出るたびに、少し走りながら下った。

山賊か?
武器(杖2本)も持ってるし、傍から見たらそれに近いものはあるけれど、達成感みたいなものが背中を押して、デュフデュフ笑う膝をものともせず、登山口までわたしを誘った。


13時50分、下山。
はぁ、疲れた。でも楽しかった。
自律神経不調の影響で出ていた喉の詰まりも、幾分、マシに感じた。


さて、腹ごしらえだ!
今日は、三輪山の他にもうひとつ行きたい場所があった。
知人から美味しいと聞いていた和惣菜屋さん。
有名な三輪そうめんとのセットが絶品なんだそう。

撮り忘れたが、そこに向かうまで、びっっくりするくらい急な石畳でできた下り坂が立ちはだかったので、ちょっと引いた。足腰にくる。

「雨の日注意!!!」「滑りやすくなっています!!!」みたいな鬼気迫る看板が何個もあった。死人出たんとちがうか、ここ。



14時15分、花もり到着。

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少し外れたわかりづらい場所にあるのに、お客さんが3組くらいいた。
いいお天気なので、外で食べている人が多かった。


中もいい感じ。

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メニューはこんな感じ。

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どれも美味しそうで迷ったけれど、花もり野菜膳(御神饌にゅうめん付き)にした。
お値段、1,350円。


BGMとかはいっさいかかっていなくて、風にそよぐ葉の音と、野菜を切る音、天麩羅の揚がる音だけが店内に響いた。遠くでうぐいすも鳴いている。いいなぁ。

そうこうしている間に、お料理が到着。

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うわぁーーーー!!!
めちゃくちゃ美味しそう!!!

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お野菜たっぷり!!

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お出汁の香りがすごい!!


あのね、本当にすっごく美味しかった。
お野菜そのものも美味しいし、味付けも優しくて深みがあって。
にゅうめんも、いろんな素材から出汁をとった味がして、冷えた体に染み渡った。

丁寧さとこだわりが込められていて、ちょっと感動した。本当に。
そのくらい、わたしは大好きな味だった。

この辺りに来ることがあったら、ぜひ立ち寄ってほしい。

お店を切り盛りする女性の方に、「本当に美味しかったです。ぜったいにまた来ます」と伝えて、店を後にした。



さて、続いてはご祈祷をしてもらうために祈祷殿へ向かう。
なんにせよ前厄な上、実はいま、あまり体調が良くない。

いろんなことが重なって、昨年9月から喉の詰まり、動悸が慢性的に続いていて、ついに2月末くらいから、耳も聞こえづらくなっていた。
頼むぞ、神様。

ご祈祷の受付を済ませ、ついでに、古いお札やらを家に忘れたことを、神妙な面持ちで伝えたら「近くの神社にお返しください」とのこと。
どこでもいいそうだ。よかった!


ご祈祷、ここ5年くらい毎年してもらっているのに、毎年笑いそうになる、いや、ちょっと笑っちゃうのなんでだろうな。バチが当たれ。


最後に、おみくじを引いて帰ろうと思ったのだけど、このご時世。あの、六角形の筒状のものを振り回してくじを引っ張り出す形式のものはなく、代わりに小さなモニターが設置されていた。名もなきリスのキャラクターがこちらに向かって微笑んでいる。

『リスに向かって手を振ってください』

なるほど。なんか味気ないなぁと思ったけれど仕方がない。
リスに向かってぶんぶんと手を振る。
…が、リスは、笑いながら筒状のおみくじを上下にシェイクするだけで、ぜんっぜんおみくじを引っ張り出さない。
おちょくってんのか?

すぐ奥に巫女さんが座っているので、羞恥心もプラスされる。ヤケクソで手を振った。

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末吉。くそっ!
でもね、結構いいこと書いてる。
『自分を信じる』か。確かにそういう部分、欠けてたかもなぁ。
これからリセットして、しばらく仕事をせずゆっくり過ごすから、新しい自分として、心に留めておこうと思った。

おみくじをくくりつけて、深々とお辞儀をし、大神神社を後にする。

タイミングが悪かったのか、笑けるくらい電車が来ない。40分くらい待たねば。

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日が落ちはじめて、少し冷えてきた。寒い。山も近いしな。

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座布団が引いてある。優しい。
座ってみて、綿のあたたかさに感激した。


17時3分三輪駅出発。

けっきょく、一日中外にいたな。
こんなに自由で、充実した休日はいつぶりだっただろう。
休みの日は昼前まで寝ていることが多かったから、たった数時間早く起きただけで、こんなにも一日が長く感じるものなのか。



それから数日、心なしか体調がいい。
ただ、ぎっくり腰にはなった。
ご祈祷中に笑ったからか、リスに強く当たったからかもしれない。
奈良の方面に、深々と頭を下げておくことにする。


今年は、どんな一年になるだろう。
何もしないことから、まず目標に掲げている。
どんな自分に出会えるか、とても楽しみだ。

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