コーチングで活用するマインドの仕組み
こちらのページでは、コーチングは「人がゴールに向かって生きていくことをマインドの仕組みを使って支援すること」だと説明しました。コーチングで活用するマインドの仕組みはたくさんあるのですが、今回は、その中から特に重要な2つの仕組みについてコーチングとの関わりと合わせて解説していきます。
1.エフィカシー(自己効力感)
まず、はじめにご紹介する重要な仕組みは、「エフィカシー」です。
コーチングでは最初にゴールを設定します。
コーチがお手伝いしますが、最終的にゴールを設定するのは自分自身です。
前回ご説明したようにコーチングでのゴールは「現状の外」にあるので、映像で明確に見えるものではありませんし、そこにたどり着くためのプロセスも設定前には見えません。本当にやりたいこと(=want-to)に基づいていることが前提なので、「確かにやりたい」のだけれど、現状の外なので「やり方が分からない」。だから、「ちょっと怖い」。でも、「自分にはやれる気がする、やるぞ!」と設定することになります。そのときに必要な力がエフィカシーです。
エフィカシーは「明確な根拠はないけれど、自分ならできる気がする!」、という感覚です。少しかしこまって定義すると「自分はまだやったことのない現状の外の未来のゴールを達成する能力があると自分が評価できる能力」
です。やったことなくても、やれるだろうと思う、他の人に認められなくてもそう思える力です。挑戦しては結果出す、あきらめずにやってきた人のほうがエフィカシーが高い傾向にあります。日本語だと自己効力感と言います。
似た言葉に自己肯定感(エスティーム)があります。こちらのほうが一般的にはなじみのある言葉かもしれません。自分自身の価値を尊重し、自分自身を大切に思う感情です。自分で自分のこと愛せてますか?、という話です。もちろん、この感覚も生きていくうえでは必要ですし、自己肯定感が満たされていたほうがエフィカシーも高めやすいとは言えますが、別の概念です。コーチングにおけるゴール設定に必要な力はエフィカシーの方です。
誰しもエフィカシーが高かった経験を何かしら持っているものです。何か挑戦的な課題が出てきたときに、自分にはやれると根拠無く思えた体験。新しいミッションやタスクを任されたとき、新しい役割にアサインされたとき、大きな根拠があったわけではないけれども、なぜかできると思えたことが何かありませんか?その時に働いた力がエフィカシーです。現状の外のゴールを設定し、達成しようとするには、このエフィカシーが重要になります。
2.スコトーマとRAS
さて、エフィカシーの力を感じ、現状の外のゴールを設定しました。
しかし、ゴールは現状の外ですから、どうやって達成したらいいか、そのプロセスはまだ分かりません。では、どうやって達成したらいいのでしょう?
コーチングにおいては、
脳が何とかしてくれる
が答えです。ゴールを持てば自己認識が書き換わって、徐々にやり方が見えるようになります。
急に、スピリチュアルや、神頼み、ぽく、聞こえたかもしれませんね!(それらも、けして否定しませんが、、、)。ですが、コーチングでは、認知科学的に、マインドの仕組みとして、ゴールを設定し、そのゴールに責任感や臨場感を持って生きていくと、だんだんとその達成方法が見えてくる、と考えています。このときに機能する重要なマインドの仕組みがスコトーマとRASです。
スコトーマ
スコトーマというのは日本語で言うと心理的な盲点のことです。
人は目からも、耳からも、日常的にたくさんの情報を浴びていますが、その全てを認識し、頭の中で処理できているわけではありません。たくさんの情報から自分が重要な情報のみを取り入れて処理しています。自分が処理していない、見えない部分をスコトーマと言います。
スコトーマは、固定的なものではなく、自分の中で重要なものが何か?が変われば、変わります。
たとえば、例として、車を買いたい人がいるとします。それまでは気づいていなかったのだけれども、車を買おうと思い始めると、街中の車が今までよりも目に飛び込んできて、車種も気になってきます。ベンツを買おうと思っていればベンツが見えるようになってきます。EVだとか、その中でもテスラを買おうと思っていると、あれ、実は日本の街中でも結構、テスラ走ってた!と気づくようになります。テスラを買おうと思う前には、街中のテスラはスコトーマの中に隠れていたのだけれど、自分の中でテスラの重要性が上がったことでスコトーマが外れ、目に飛び込んでくるようになったのです。
赤ちゃんを授かるとベビーカーを押すお母さんの姿に気づくようになる、などの現象も同じ仕組みですね。
RAS
この、自分が重要だと認識しているものが見えてくる人間の脳の仕組みがRASです。RASはRecutilar Activating Systemの略で日本語では網様体賦活系(もうようたいふかつけい)と言います。RASは、積極的に情報を入れない機能です。RASがあるこそ、脳の計算量が爆発しません。情報をフィルタし、自分が重要だと認識している情報だけを処理する機構です。
RASとスコトーマはセットの概念です。RASがあるからこそ、自分が重要だと認識しているものだけが見えるようになり、それ以外はスコトーマとなります。
さて、ゴール達成のプロセスの話に戻ります。はじめに書いた、「脳が何とかしてくれる」、という意味は、自分の無意識の中でゴールを意識して生きていくと、RASの仕組みが発火し、今までスコトーマに隠れていたものが徐々に見えるようになる、ということです。
ゴールやその周辺は、設定前はスコトーマの中にあり、よく見えません(見えにくいので、設定する際にはコーチが手伝います)。
ゴールをコーチと支援の下で設定し、重要性を認識すると、RASの働きにより、ゴールに関する情報が徐々に頭に入ってきます。スコトーマが外れてきて、到達するための道筋も少しづつ見えてくるようになります。
RASの発火は、本音のゴールを持ち、そのゴールに自分で責任感を持ったときにのみ起こります。自分の中で、特に自分の無意識の中でゴールの重要性が上がった時に、はじめてこの現象が起きてきます。
まとめ
コーチングで活用している重要なマインドの仕組みの2つとして、「エフィカシー」と「スコトーマとRAS」があります。
want-toに基づいた現状の外側のゴールを設定するには高いエフィカシーが必要です。コーチはエフィカシーを高めることを手伝います。
ゴールの世界は、はじめはスコトーマに隠れています。ゴールを設定し、そのゴールに臨場感を持って生きていくことで、自らの自己認識が書き換わり(RASが発火し)、スコトーマが外れ、ゴールを達成するためのプロセスが見えてくるようになります。そのために必要な、自分では見えにくいゴールを設定すること、ゴールの臨場感を高めること、をコーチはコーチングを通じて手伝います。
最後に
私自身、コーチングの学習をしている途上ですが、本記事を読んで、コーチングに興味を持った方、コーチングセッションを受けてみたい方、セッションを受け付けています。
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