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限られた大人による大人のためのルールメイクを、あらゆる人々による共創へ。(Chico.)

 日本が直面する少子高齢社会、中高年男性が多くを占める政治の場に、より長い未来を生きる若い世代の声はなかなか届いていません。そこで、2023年7月10日、東京地方裁判所に、10代・20代の原告6人が「立候補年齢引き下げ訴訟」を提訴しました。若い世代の声が届く社会に向けて、立候補年齢の引き下げを求めるものです。
提訴にあたっては、全員が、声をあげた理由を意見陳述書にまとめて提出しました。彼ら彼女らのメッセージをぜひご一読ください。

 今回は、Sophies 代表のChico.さんの意見陳述全文(一部加筆修正)です。

 私は今回の訴訟で原告となりました。訴訟を提起するに至った経緯をお話しします。

  私は長崎県長崎市で生まれ育ちました。地元は価値観が古く、男性はいわゆる九州男児・亭主関白で、女性に対する蔑視が強い家庭が多く、物心ついたときからずっと違和感を抱いていました。親族の集まりでも、男性陣が上座に座って女性に酒をつがせていて、なぜ女性は座ってご飯を食べてはいけないんだろうとか、なぜ男性は自分でお酒をつがないんだろうと思っていました。これらの経験から、「女性たるもの」「女性らしさ」といった性別分業的な倫理観は現代に適していないし、生まれた時から生き方が決められてしまっているのは嫌だとずっと感じていたため、ジェンダーに関する問題意識をもつようになりました。
このまま長崎に居続けてはいけないと思い、カナダやアメリカに留学したり、大学から上京したりして、長崎以外の場所で、家族のあり方やジェンダーに関する価値観に触れました。これまで生きてきた社会とは異なる価値観に触れて、長崎での価値観は絶対的な正解だったわけではなく、歴史的に馴染んでしまっただけのもので、それまで抱いていた違和感は間違っていなかったんだと確信しました。それからは、より一層、その経験をもとにジェンダーに課題意識をもって取り組むようになりました。
大学生の時には、働く女性をエンパワーメントするBtoCのファッションブランドを立ち上げたりもしました。このブランドのコンセプトは「働く女性を一番近くでつつみこむアパレルブランド」であり、服は自分に自信を持たせてくれるものなので、服を通じて働く女性を応援したいと思っています。現在は、このブランドを個人事業として継続しつつ、株式会社arca (アルカ) という会社のコミュニティマネージャーとして、自社事業の運営を行っています。arcaは女性向け商品のプロモーションやブランディングを行っており、「Social Coffee House」というジェンダーや環境問題などの社会問題について語り合うオンラインコミュニティの運営もしています。私自身も、これまで培った知見を生かして仕事に取り組んでいます。

 これまで、ジェンダー・アクティビズムの活動をする中で、色々な人たちと繋がったり、仕事をしたりすることを通じて、いわゆるエリートの人たちだけではなく、多様な属性の人たちとみんなで議論しながら社会を前進させることができることや、一つ一つの社会政策が私たちの生活に密接に関わっていることに気づくことができました。一方で、ジェンダーに関する課題の解決にあたっては、ビジネスとして取り組めることの限界を感じることがあり、政策提言をするなど自分たちが議員になった方が早いのではないかと思うようになりました。
そのような時に、友人からこの訴訟のことを聞きました。私は、これまで何度も選挙の投票をしたり、選挙に関するイベントを開いたりもしていましたが、正直なところ25歳以下では立候補することができないということを知りませんでした。成人していれば立候補できることが当たり前だと思っていたからです。そのとき、率直に「いや、おかしくない?」「年齢で区切るなんてダメでしょ」「能力って年齢で測られるものではないじゃん」「年齢は関係ない」と思いました。
ジェンダーの分野でも、十分な素質や実績を持っているのに、女性であることなどを理由に不当に昇進を阻まれてしまうことを指す「ガラスの天井」と呼ばれる状況があったり、仕事で成功してしっかりと評価を得られているにもかかわらず、自分自身を過小評価してしまう「インポスター症候群」という問題が指摘されることがあります。本来は性別によって能力に大きな違いはないにも関わらず、様々な偏見が社会構造や圧力によって助長され、弱い立場にある側がさらに抑圧されてしまっているのです。この立候補年齢の問題についても、ジェンダー問題と同じ側面があると思いましたし、これまで私が取り組んでいたジェンダーの問題の延長にあると思いました。
そのため、すぐに私も原告として参加することに決めました。政治の世界に女性が増えなければ女性の意見を踏まえてルールを変えることができないのと同様に、若者が増えなければ若者の意見を踏まえたルールのアップデートは難しくなり、より良い社会を創ることはできないと思います。

  私は今回、2023年4月16日、市議会議員選挙に立候補するため、供託金を30万円納付しました。供託のために法務局に行ったとき、職員の方々が慌てだして、「貴方が立候補するんですか」「お金(供託金)はあるんですか」と言われました。このとき、私はこのような場所にもともと想定されていない存在なのだということを実感し、私の見た目や年齢の全てが「場違い」だと認識されていることを改めて思い知らされました。それだけ日本の選挙が、限られた人たちによるものになっているのだと思い、大きな違和感を覚えました。その後、立候補届を提出しにいきましたが、満25歳以上ではないことを理由に受理してもらえませんでした。

 社会に多様性が欠けてしまうのはとても大きな問題だと思っています。海外では、若者が活発に議論をしたり政治活動に取り組み、LGBT+αやカルチャー界隈の人達が、既存の枠組みにとらわれない新しい価値観を生み出したり、積極的に政治に関わることで実際に社会を動かしている様子を見てきて、政治は社会全体で多様な人達が交わりながら行われるべきだと感じました。
それなのに、日本では若者が政治に参加することすらできません。限られた大人による限られた大人のためのルールが作られているのでは、民主主義として明らかに失敗していると思います。また、私が幼少期から感じていた違和感と、この立候補の年齢要件について感じる「もやもや」した想いも、根は同じだと感じています。若者も立候補して、自分の意見を政策として社会に反映できる社会、また、あらゆるセグメントの人たちが集い、対話をし、価値観やカルチャーの違いを受容しながらアップデートし続ける社会が、日本の未来であって欲しいと思います。

以上

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