(短編小説)全国特産品フェスティバル

 今回、都内某公園で開催が決まった全国特産品フェスティバルの企画の一つとして、特産品コラボイベントが開かれることになった。
 抽選の結果、青森県と沖縄県がペアを組み、お互いの特産品を使った新しい商品を開発することとなった。
 青森県からは工藤さん、沖縄県からは比嘉さんが代表として選ばれたが、工藤さんは青森弁しか話せず、比嘉さんは沖縄弁しか話せなかった。
 そのため通訳として言語大学を卒業したての新米言語学者である田中さんが呼ばれたのであった。

 工藤さんは、青森の林檎農家の家に生まれ育ち、林檎の魅力を全国に広めたいという強い思いを持っていた。
 一方、比嘉さんも沖縄のシークヮーサー農家の出身で、シークヮーサーの素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらいたいと考えていた。

 最初の会合では、まず始めに工藤さんが青森弁で話し始めた。
「んだば、林檎とシークヮーサーでジュース作るべな。林檎の甘さとシークヮーサーの酸味が絶妙に合うべ。」
 比嘉さんも沖縄弁で応じた。
「うん、シークヮーサーはいい感じさぁ。林檎の甘さとシークヮーサーの酸味がマッチするはずよ。これで爽やかなジュースができるさぁ。」

 田中さんは一生懸命通訳しようとしたが、経験不足も合間って、いつの間にか『にんにくとゴーヤーのミックスジュース』を作ることになってしまった。
 工藤さんと比嘉さんは何故か会合の内容に満足しているようで、田中さんが口を挟めるような雰囲気ではなくなっていた。

 試作品が完成し、試飲会が開かれた。工藤さんと比嘉さんはもちろん、田中さんと開発工場の責任者である山田さんも試飲することになった。
 工藤さんがゴーヤーのジュースを飲んで一言。
「んだ、こればっちりだべ。ゴーヤーの苦味がにんにくの風味と合わさって、なんとも言えない味わいだべ。」
 比嘉さんも満足そうに 「うん、これで決まりさぁ。ゴーヤーの苦味がにんにくの風味と絶妙にマッチしてるさぁ。」と答えた。

 田中さんと山田さんも、『ゴーヤーとにんにくのミックスジュース』を恐る恐る口に運んだ。二人は一瞬顔を見合わせ、微妙な味に苦悩しつつも、必死に顔に出さないように堪えた。
田中さんは心の中で「これは…なかなか厳しいな」と思いながらも、笑顔を作り出し、「うん、美味しいですね…」と、ぎこちなく言った。
 山田さんも同様に、「ええ、とてもユニークな味です」と、なんとか言葉を絞り出した。

 田中さんと山田さんにはその味が合わなかったが、工藤さんと比嘉さんには好評だったため、そのまま「全国特産品フェスティバル」で販売されることになった。

 イベントの開始と共に、とうとう『にんにくとゴーヤーのミックスジュース』の試飲が始まった。
 一般客の反応は予想通り悪かった。ある女性が一口飲んで顔をしかめ、「これは…ちょっと独特な味ですね」と言った。
 隣にいた男性も「うん、これはなかなかチャレンジングな味だ」と苦笑いを浮かべた。
 しかし、会場にはユーモアを理解する雰囲気があり、誰も本気でクレームをつけることはなかった。
 ある若者が友人に向かって冗談を飛ばした。
「これ、罰ゲームに使えるかもな!」
 その場にいた人々は笑い声を上げ、和やかな雰囲気が広がった。

 その時、たまたま会場に居合わせた有名なシェフが興味を持った。
 シェフはジュースを一口飲んで目を輝かせた。
「これは面白い!この味を活かした料理を考えてみたい。」

 シェフはこのジュースを使った新しい料理を考案し、それが大ヒットした。
 シェフは自分のレストランで新メニューを発表することにした。
 新メニューには、ゴーヤーのにんにくしょうゆ漬け、ゴーヤーとにんにくの炒め物、ゴーヤーのにんにくスープ、ゴーヤーのにんにくマリネが加わった。
 シェフは自信満々に語った。
「このミックスジュースを使った料理は、今までにない新しい味わいです。ぜひお試しください。」

 さらに、シェフはこれらの料理を動画投稿サイトで一般公開することにした。
 動画では、シェフが料理の作り方を丁寧に説明し、試食するシーンが映し出された。
「皆さん、こんにちは。今日は特別なミックスジュースを使った料理を紹介します。まずはゴーヤーのにんにくしょうゆ漬けから始めましょう。」

 動画は瞬く間に話題となり、多くの視聴者が興味を持った。
 コメント欄には「試してみたい!」「こんな組み合わせがあるなんて驚き!」といった声が溢れた。

 田中さんは自分のミスが新しい食文化を生み出したことに驚きつつも、同時に誇りにも思うのであった。

―――
明らかに「工藤さん」と「比嘉さん」の会話が足りていないのは分かっています。
でも、今の私の実力だと2人に会話を続けさせるのは難しかったので……。

文才の話ではないですよ。
もちろん文才も無いですけど、不足してるのは「青森弁」と「沖縄弁」に関する知識です。
どういう会話をさせれば、「林檎とシークヮーサー」が「にんにくとゴーヤー」になるのか、両方言の知識がないと、分からないですからね。

なので、もっと勉強して、いつか「完全版」を作りたいと考えてます。

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曳舟次郎
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