『Infinite Window』窓辺リカ
すっかり最近のアーティストかと思っていたら、もう数年前から出てきているようで、相変わらず最近の自分のアンテナの低さに愕然とするばかりだ。まぁ別にいつのタイミングだろうと良いアーティストとの出会いは良いことなので別に良いのだけど。
まずそもそもにしてVirgin Babylon Recordsの名前を久しく聴いた。レーベルの主催者であるworld's end girlfriendには非常に複雑な感情を抱いている(そんなんばっかり)のだが、やっぱりGo-qualiaを世に放ってくれたことへの勝手な感謝みたいなものがある。
だから、ある意味少し似たところがある、インターネット文化、オタク文化から引っ張ってきたアーティストというあたりで、これは何かあるなと聴いてみることにした。
エレクトロニカを通過してきたブレイクコア、ブレイクビーツというか、強烈なビートの向こう側に美しい音像が見え隠れする。振れ幅も多方面に広いというか、不安定な音程から突然エモーショナルなサウンドになってみたり、少し可愛げを見せたところから突如エグい音の嵐へと突っ込んで行ったり。そしてそこにスッと寄り添う、ウィスパーボイス要素の強いが芯のあるボーカル。危うくサウンドにかき消されてしまいそうな曲もあるが、あらゆる意味でのアンバランスさがはまってくると気持ち良い。歌詞もなんとなくケミカルみが強い、文字通り理科みが強いが、それでいて少し切ない情景が多い感じがするのはなんだろうか。工場から漂う独特の香りに懐かしさを覚える感じにも似ているのだろうか。
サウンド面でも歌詞面でも、所々に感じる懐かしさみたいなものがあるが、半年ほど前のインタビューを読んであまりに納得してしまった。リファレンス元として挙げられるアーティストがどれもこれも好きなものばかり。(People In The Boxを挙げている文章を読みながら聴いていた曲が、ある部分においてそのまんますぎて笑ってしまった。)あらゆる箇所にそのアーティストたちからもらったエッセンスが散りばめられているのだ。そりゃ妙に懐かしくて好きな音ばかり使われている感じになるわけだ。
別にオリジナリティがないとか言いたいわけではない。組み合わせの妙は、ゼロイチで生み出すものに全く劣らないオリジナリティだ。そういう意味では、この多方面に渡るまぜこぜ組み合わせ感みたいなものは全くのオリジナリティだと思う。少なくとも私の低いアンテナの観測範囲ではだけど、こういうやり方をするアーティストの曲はおそらく聴いたことがなかったと思う。複数の要素を組み合わせる上手さは最近のアーティストたちが非常に得意とするところだと勝手に思っているが、これはそういう類の上手さではない。とにかく闇鍋的にごった煮にして、少し味の強い成分(ブレイクビーツ・ブレイクコア)で全体を整えつつも、実はそのごった煮もいい塩梅で調整してある。なんかそういう、綺麗なだけじゃないけど、なんかすげぇぞ感がある。
どうあれ『スープと雲』のローファイギターサウンドからの激エモブレイク→『Lグミ』の圧倒的合法トリップでトんでいく体験だけでもおすすめ。