★誕生日の物語#21
――傾国の姫君。
羨望と悪意とを込めてそう囁かれていた私はいま、従者ひとりを供に、剣を携え、旅を続けている。
かつて聖国の姫として望まれたのは、偶像崇拝としての神聖。
ただ微笑むだけの平安の象徴。
でも、この魂に刻まれた天命が、女神がこの身に与えてくれた聖魔力が、飾りであることを赦さなかった。
「姫さま、キャラバンによれば、あの峠を越えた集落の近くで魔獣溜まりができているとか」
「そう……被害が出るのも時間の問題ね」
「では迅速に」
「ええ」
この地上には、浄化すべきモノがあまりにも多すぎる。
教会で祈りを捧げるだけでは、城で宰相の報告に耳を傾けるだけでは、追いつかない。
だからあの日、礼拝堂で己の無力さと、身分ゆえのままならなさに打ちひしがれていた私の前にあなたが現れ、そして、命と剣を捧げると誓ってくれたから。
どこの誰とも知れない、けれど女神が遣わしたのだと分かるあなたが跪くのをただ眺めるだけで終わらせるはずもなく。
伸ばした手が届かないのであれば、届く場所まで自ら行けばいいと結論付けた。
私の存在が国を傾けるというのなら、それすらも己の誇りとして、私は私の責務を全うしよう。
*誕生石・誕生日花*
ハス:清らかな心・神聖・離れゆく愛・雄弁
ヒメユリ:誇り
クリスタル:調和・純粋・完璧・浄化・能力
ルビー:情熱・勇気・自由・威厳
Copyright RIN
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あなたの誕生月&日の石と誕生日花をキーワードにつづる少し不思議な物語
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