本日閉店。雑貨屋としての10年。
今日、姉と私のお店が閉店した。
私は18歳の終わりから現在の28歳になるまでの約10年間、雑貨と家具の販売をしていた。
こうして見ると長かったな、と思うが体感的にはあっという間で終わったという実感もない。
最後のお客さんのお見送りをし、レジの処理をして、お店を見渡すとあまりにもガランとしていてびっくりしてしまった。それだけ商品が旅立っていったのだからとてもいい事だけど、あーでもないこーでもないと頭を悩ませて納得いくまで作り込んできた空間がとても静かな状態になっていた。
今までに感じたことのない気持ちだった。
開店当初からある2種類のカップボード。シンプルであたたみのある無塗装のものと、フレンチ系の大人っぽい雰囲気で扉の色ガラスがとても美しくて私は特にこの白いカップボードがお気に入りな存在だった。このカップボードたちはお店の顔だった。
(2年目くらい、当時のお店の様子)
開店準備の時、まだダンボールだらけだった場所に、大きなトラックに乗って毛布に包まれた状態でやってきた。80坪の広い店内、一番メインの場所に設置をしてもらった。その姿はとても美しかった。きらきらとしていた。アンティークという存在に馴染みがなかった18歳の私はとにかく感動していた。本当に昨日のことのように覚えている。
ホーロー、アイアン、チャーチチェア、ステンドグラス。今まで見たことの無かったものが明日から自分の日常になる。とてもどきどきしていた。とにかく、この商品たちに合う空間を作ろうと、なんでもやろう思った。
(成人式が終わり、すぐにお店へ)
仕入れからディスプレイ、商品管理、イベント企画、本社の工務店と絡めたイベント開催、移動販売車…とにかくなんでもやった。
塗料メーカーさんとコラボをしてマンションのリノベーションなどもやった。他にも、モデルハウスのディスプレイや照明や内装コーディネートなど少しずつ工務店側の仕事も並行してできるようになった。
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大好きな洋館、近代建築を見る時も建材に目が行ってしまう。このドアノブやスイッチプレートは…似ているのは仕入れられるかな、などルートなども考えてしまう。いろいろなブランド、メーカーの商品を見て想像し、実際に見て、ストーリーを知る。自然と視点の開拓をしていた。
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自由だけど苦しい時もあった。楽しいけど次からどうしていこう、どうしたらお客さんは楽しいと思ってくれるだろう、雑貨屋なのにイベント屋になっていないか。実験、失敗、成功の繰り返しだった。すべてが手探り状態で、少しでも良いと思ったらとにかく実践した。体が勝手に動くくらい夢中だった。
(漆喰塗りイベントの時)
様々な人との出会いがあった。
お店に通ってくれる常連さんはありがたいことに沢山いてくれた。私はそこまで外交的では無く『中の人』(という言い訳)姉は太陽のような人で、お客さんからも好かれていた。カフェスペースもあったので姉とお客さんがレジからカフェスペースへ移動したらそこから約3時間コースのお話タイムだった。
友達も増えた、お客さんとして来てくれたハンドメイド作家さん達とはお店のイベントを通して仲良くなり、飲みに行ったり相談にも乗ってもらっていた。
大工さんがお友達と一緒に遊びに来て、アトリエで小物や家具を作っていると聞いたらお店で販売しないか?と声をかけたりした。お家でも作品作りをしている大工さんが多く、本当につくることが好きなんだなあと感じたり、お店という窓口からどんどんと温度ある繋がりができていく。
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本社から連絡があったのは数ヶ月前。
お店のある場所は更地になり、いずれマンションが建つ予定らしい。
『そうか。』
わからないけれど、あまりにびっくりすると人は無になるようだ。
だんだんと顔が熱くなる。
仕事的には本社の中に仕事もあるし続けられる。営業もあれば、図面関係やWEBデザイナーなど。人間関係もとても良い。大好きなメンバーで、上司にはすごくお世話になっているしとても尊敬している。
けれど違うと思った。私はお店があってこそで、ここにしか今もこれからも愛を向けられないと思った。贅沢かもしれないけれど、正直にそう思った。
私はお店と一緒に、閉店と同時に辞めようと思った。あほみたいにカッコつけてると思われてもいい、私は一から作り上げてきたお店と一緒に終わる。皆、理由を話すと納得してくれた。
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そろそろ帰ろうと、お店の顔だったカップボードを写真に撮る。
途端に切なくなってしまった。離れ離れになる。お店にあるものたちは全部自分たちで決めて並べたもので、どこに何が並んでいるなどもすぐに思い出せる。脳内棚卸しできるくらいお店の商品は頭に入っている。
今日でお店は閉店。
明日からお客さんは来ない。
お客さんが帰り際に商品の入った袋を指差して「一生大事にするからね!」と言ってくれた。涙腺がいっきに緩みそうになって我慢をした。
初めてお店に来てくれた赤ちゃんは小学生になっていた。お店で追いかけっこやかくれんぼをした子は中学生になっていた。最後、会いに来てくれて本当に嬉しくて、そしてとても切なかった。一生のお別れではないかもしれないけど、そうなるかもしない。お店には、生命力があった。そんなちからがあった。出不精で、自分の世界に入り込みすぎてしまう自分と外の世界をつなげてくれる存在だった。
(開店して1週間くらい)
私の心の拠り所で、居場所だった。
本当に楽しい10年をありがとうございました。
2020.3.1
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