短歌はアスリートを詠めるのか
(一)はじめに 現代スポーツ短歌の前夜 昨年、新型コロナウイルス感染症が人々の生活を苦しめる中で開催された東京オリンピックとパラリンピック。開催に賛否の意見が飛び交う夏の日々に、多くのスポーツファンは複雑な思いを抱きながら観戦した。それは一九六四年の東京オリンピックとはまったく異なる状況だった。戦後復興におけるオリンピック事業への注力に対して批判はあったものの、夏の大規模な水不足を乗り越えた一九六四年十月の東京は、「平和の祭典」への賛意が高まる中でオリンピック開幕を迎えた。