テアトル吉祥寺と高校教師

#高校教師 #1993 第5話「#衝撃の一夜」、サブタイトル通り、二人がとうとう一線を越えてしまうエピソードで、そのために陰に隠れてしまいやすいが、発端は「体育の時間に持久走で一位になったら、週末一緒に映画に行く」と #繭 が強引に提案し、既に動物園に一緒に行ってしまった羽村は反論できず、その無謀な賭けを受け入れる。
陸上部のエースが体育の授業にも出ており、誰も彼女が一位を取ると思わなかったからだ。
謀ったのか実力なのか不明とはいえ、授業の前から靴箱には前売り券が二枚入っていた。実際に一位を取って #テアトル吉祥寺 に行くので分かるが、「名作シリーズ(『第三の男』や『知りすぎていた男』などのポスターも映る)」みたいな特集上映をやっているのだ。
繭が予め選定していた前売り券は #シドニーポラック の「追憶(1974/ #TheWayWeWere )」である。ロマンスを通して冷戦や赤狩り、WASPやユダヤ系の壁を描いた作品なので、いくら早熟で多感でも、高校生には堅くて難しいんじゃないかと思うが、作品を選定して靴箱に入れておいたのは繭だ。
主役の #ロバートレッドフォード が好きだった可能性もあり、ならば既に内容も知っていた気配も窺える。俺にはこの作品、全く思い入れはないが、どうも作者や製作サイドが、ポラックの「#ひとりぼっちの青春」を見ていたらしく、監督に起用されたらしい。大恐慌下の非人間的な催しに対し、暴力をもって人間性を表出させるしかない青春の悲劇を、無駄を省いた文体で描出し、ハードボイルドの初期傑作として知られる原作は、#ホレスマッコイ「#彼らは廃馬を撃つ(邦訳は今も割と簡単に手に入る)」だ。ドラマ自体の元ネタである #アランドロン の「高校教師(1972)」も暴力的な結末だけど、拳銃が出てくる「#もうひとつの繭の物語」といい、1993年版はさりげなくハードボイルドへの言及も多い。#桜井幸子

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