23/03/21/17:22 (日記)
雨の日、スターバックス、テラス席。雨が降っているからか、テラス席にいる人はほとんどいなかった。パソコンを開けて何かしらの作業をするパーカーのフードを被った男性、「席全然ないね」と言いながら座りにこやかに会話をしている初老の男女、小中学生くらいの娘と母親、兄弟だろうか数年程度の年齢差を感じる男の子一人と女の子二人。三組とも出て行ったあとに煙草をふかしながら雑誌に目を通す女性。そのくらいしか人はいなかった。店内は暑いし騒々しい、だからテラス席に来た。
風はほとんど吹いていないので、雨は真下に落ちていっていたように思う。しかし時折鋭く穏やかな風が左から流れるので、腕で壁をつくり雨粒から本を守りながら読んでいた。せっかくのアールグレイブーケティーラテのホットがとうとう冷めてしまった。本を読む集中力もなくなってしまったので、鞄にしまおうとする。雨で本が濡れないように、家にあったビニール袋に入れて来ていた。その袋に本を入れようとしたとき、涙が出そうになった。こういう生活の知恵みたいなものを、自分が、こんな自分が、発揮しているのが惨めだった。この世界の中で、みんなそれぞれの立ち位置に応じて社会の波に乗り、そしてその波が弱まらないように活動しているのにも関わらず、私は何もしていない。健康体でまだ若く働く条件は揃っているのに、いやそもそも働く必要があるのにそれをせず、懸命に社会貢献をしている両親がつくった家庭の中で、何もせず、ただ生きているだけの自分が、。
やりたいことはある。でもそれを始めてしまうと、私はとうとう普通の生活を送れなくなる。失敗する可能性が圧倒的に高い中で、失敗すると未来が詰むその世界が始まってしまう。それでも別にいいぜという強気な日もあれば、どうしようもない未来にいる自分がなんでこの道を選んだんだと責められる日もある。一度きりの人生、それならばやりたいことをやった方がいいのは確かで、だから悩んでいる。両親に心配をかけたくないし、それ以上に、両親に否定されることが怖い。真っ暗な未来も怖い。そうなると、とにかく今は就職して地盤を築き、その上でやりたいことに手を出す、それが妥協案として上がってくる。だが、やるならとことんやりたいし、就職をしてしまったらいよいよ時間と余裕がなくなるのではないかという懸念が一番大きい。今のこの状態が一番手を出しやすいが、今のこの状態は一刻も早く切り捨てることが望まれている。つまり、ただのバイト生活に未来はないということだ。
そもそも、仕事なんて自分に務まるのか?自分が働ける場所はあるのか?自分を必要としてくれて、信頼してくれて、心に余裕をくれる仕事はあるのか?そんな人はいるのか?自信がない。いやそれよりも、まず"自身"がない。自分は何もできないとしか思えない。まだ25年しか生きていないのに、何かアクシデントがない限りまだまだ続くであろう人生が真っ暗に見える。いや、何も見えなくて怖い。
自分が気持ち悪い。普通じゃない自分が気持ち悪い。普通になるための行動を拒否している自分が大嫌い。大切な家族を不安にさせている自分が大嫌い。早く安心させたい。そして早く離れてあげたい。でも自分の願望とそれが相反する場所にあってしまうので、どっちつかずのことしかできない。時間はない。決断は自分でしなければならない。でも"自身"がない。誰かに聞いてほしい。でも同情されたくない、否定もされたくない。優しくされたい。でも優しくされたくない。助けてほしい。でも突き放してほしい。感性が求めるものは理性で否定しなければならない。でも心は感性に近い。どちらか死んでくれないかな。
私以外の全人間が、高尚ですごい存在だと思う。いや、人間じゃなくても例えば実家の猫や色んな動物たち、植物、生き物、生き物、生き物。自分以外の全てが逞しくて尊くて、みんな社会を作り上げることに貢献している。自分以外。
こんな文字ばっかり打っててもどうにもならないのに何にもならないのに、これを打っているときだけ、私は許されているような気持ちになる。頼むからこれだけは奪わないで欲しい。店内は暖かかった。気温にも天候にも心配する必要がなく、それどころか心が落ち着くような音楽(というかミュージック)が流れている。こんな場所で、この人たちは暇(いとま)を過ごしていたのかと思うと少し腹が立った。あっ、システム手帳だ。思い出せなかった言葉はシステム手帳だ。
この世に溢れる物たちが、自分のためにあるのではないと思ってしまう。私には相応しくない。私が手に取ってはいけないと思ってしまう。このノート欲しいな、このペンかわいいな、と思っても、私が持ってはいけない、と悲しくなる。自分の願望と周囲の願望の境目が分からなくなる。これがある種の洗脳なのかどうか、もうわからない。