CHANELのミラー
スマートフォンというものが発明されてから、持ち歩くものがずいぶん減ったと思う。
カメラもいらない、手帳もなくてもへーき、メモ帳もいらないし、小説を持ち歩かなくてもいい。
好んでアナログなものを使いたがる人もいるが、大体の人は便利なものがすきだ。
私はコンパクトミラーをほぼ使わない、自分のメイクの調子や顔のコンディションを見たい時は携帯のカメラをひらけばいいから。
コンパクトミラーはほぼ使わないのだ。
なのに、ポーチの中に必ず入ってる。
ポーチの整理をする時毎回出すかそのまま入れておくか迷う、そしてやっぱり使わないけど入れておくのだ。
わたしはCHANELのコンパクトミラーをもっている、ほかのミラーだったらとっくのとうにポーチから出してたかもしれない、だって使わないから。
それなのにずっと入れてるのにはちょっとした私だけの秘密があるのだ。
わたしはこのコンパクトミラーに運命を感じているのだ、だから使わないけど持ち歩く。
だいすきな友達にもこれと同じものをプレゼントした、友達もたいして使わないだろうとわかっていてもなお、これをプレゼントにした。
ただお揃いのものをプレゼントすることでわたしとあなたの絆は深いものだよ、なんていう浅い証明をしたいわけではなく、理由がある。
このコンパクトミラーの値段が重要なのである。
5170円。
そう、わたしの誕生日と同じ。
5月17日生まれのわたしはこのCHANELのミラーに勝手に運命を感じてしまった。
もともとCHANELがすきだったっていうのもあるけど、わたしの誕生日の値段のものをプレゼントするって、プレゼントしたともだちには伝えてないけどある種の呪いみたいなものなのだ、私の人生をまるっと預けてる気持ちになる、別に本当に呪いかけてるわけじゃないよ、そのくらいこれからも一生よろしくねって意味なわけなのである。まあ言ってないけどね。これは私の秘密だし、(ここに書いてる時点でもはや秘密にもなってない)、別に一生死ぬまで気づかれなくてもいいし、実はこんな気持ちなんだよってわたしが思ってたいだけ。
だから、わたしからこのミラーをプレゼントされた人はこっそり喜んでおいてね、とっても大切に思ってるよ、という証拠なので。