ななこのきもち。
ななこ、いっさい。
すずき家にきてからは、
はじめてのあきまつり。
おひるからよるまで、
かんかん、どんどん、わいわい、
しらないおとがたくさん聞こえてきた。
きんちょうした。
すこしこわかった。
しらない人もうちにやってきた。
おにいちゃんといっしょに
うちにかえってきたから、
あたらしいかぞくかもしれない。
もしそうなら、めんせつしないといけない。
といれのばしょもおしえなきゃだ。
そのために、いろいろ、
おかあさんにきこうとおもったけど、
おかあさんは、「大丈夫よ」といった。
こわくないよ。ともだちだよ。
それでも、すこしこわかった。
はっちゃんはほえていた。
くーちゃんはときどきのぞいてた。
しかたがないから、
すみっこにかくれてみた。
かべとものにはさまれたら、
すこし、おちついた。
いえのなかにしらないひとがいた。
おひるになって、おねえちゃんが
ちゅーるをもってきたけど、
ひとくちしかたべなかった。
おねえちゃんは、ただただ、
だいすきなちゅーるだよ といいながら
こまったかおをしていた。
はいたつ とだっこの
とくべつあつかいもしてくれたけど、
ぜんぜんきぶんじゃなかった。
そのあとも、ときどき
「ななこー」とよばれた。
よばれても、でていかなかった。
かくれていたら、
かぞくみんながさがしはじめた。
おかあさんにみつかったとき、
おかあさんは
すこしほっとしたかおをしていた。
でも、めをぬすんで、またかくれた。
まよなかにおねえちゃんがおきてきた。
また、きがえて、そとにでて
おでかけするらしい。
おねえちゃんは、ないていたかもしれない。
ななこのきもちがわかったのかも。
ただ、ますからがうまくいかなくて、
めにはいっただけかもしれない。
おねえちゃんは、ななこをだっこした。
すこしだっこして、しんこきゅうして、
いってきますといって、でていった。
つぎのひのちゅーるのじかんも、
なんだかきぶんじゃなかった。
あいかわらず
とくべつあつかいしてくれたけど、
それでもきぶんじゃなかった。
それでも、ふたくち たべた。
のこりは、はっちゃんがたべた。
おかあさんは、わらっていたけど、
すこししんぱいそうなかおをしていた。
はっちゃんはえらいねといった。
くーちゃんははつよいねといった。
ななこはわるいこだけど、
おかあさんはなにもいわなかった。
おねえちゃんがあたまをなでた。
でまどから、
しゃららっと、
かぜがふいた。
ちらっと、
おねえちゃんのよこがおをみたけど、
ないていなかった。
いつもとちがうすずき家のなかでも、
せんたくものはゆれていた。
おかあさんのふとんは
ふかふかだったし、
おとうさんのくつはくさかった。
ゆうがたになって、よるになって、
おかあさんが、また、
ななこをさがしているらしい。
きょうは、はっちの小屋の うら。
あしたも、あるなら、
あしたは、つくえといすのあいだ。
あさっては……
またかんがえよう。
おねえちゃんがいなくなった
ざぶとんのうえにも、
すこしつめたい
かぜがふいていた。
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