多世代での臨床美術体験
臨床美術とは、独自のアートプログラムを用いて、絵やオブジェなどの作品を楽しみながら創作します。写真を見たり、触ったり、匂いを嗅いだり、味わったり、音を聴いたり、先生の話を聞きながらイメージを膨らませながら、五感を刺激し、感じる事によって表現します。
本日のプログラムは「軍手鳥」です。
手に軍手をはめたら、絵の具を3色選んで、指先に絵の具をつけて羽を描くように鳥を描いていきます。
小さい子も、子供用の軍手をはめてダイナミックに色を付けていきます。
「臨床」というと医療的なイメージをもちますが、臨床美術と学校の美術との違いは、「アートプログラム」です。臨床美術のアートプログラムは、料理でいうと、レシピのようなもので、ひとつひとつのプログラムにステップがあるので、それに沿って臨床美術士が声かけをしながらプログラムを進めていきます。
臨床美術の考え方は、子どもの興味や関心、気持ちのおもむくままに表現できることです。絵を描くことが目的ではなく、表現しながら遊ぶ要素、何かを伝えたいという感情が強くなり、自由でのびのびとした作品に仕上がっていきます。
また、臨床美術は認知症の予防や改善、心の解放や意欲の向上を目指しています。絵が好きな人だけではなく、誰もが楽しめるアートです。
自由な自己表現によって、自分自身の気づきも生まれてきます。
大人は、苦手意識があったり、上手い下手といった評価にとらわれますが、
感じたままを表現したり、作ったりすることは今までならってきた美術とは明らかに違います。自分の心の中を表していくような、自身との対話にもつながり、気が付かなかった自分に出会うことが出来ます。
3色を使って、点々、または線のように羽根を描いたら、軍手を外し、目とくちばしを描きます。一気に鳥らしくなってきました。
軍手鳥が出来上がったら鑑賞会を行います。
参加者全員の作品を並べて、臨床美術士がそれぞれの表現の素晴らしいところ、個性的な部分などを具体的な言葉で伝えます。
鑑賞会というのは、評価や講評ではありません。他の人の作品を眺めながらそれぞれの作品の魅力を聞き、自分だけでなく、他の人の個性を受け止め、認められるようになってきます。
鑑賞会のあとは、みんないい顔をしています。全力で作品を描き、集中した後の、緊張の糸が緩んで全身の力が抜けたようで、表情も柔らかくなって、
子供たちの手を見て、みんな大笑いしました。