「父親として、今伝えたいこと」
娘へ。
最近、ふと気づいたんだ。孫の笑顔を思い浮かべるたびに、ある後悔が胸に浮かぶ。「もっと稼いでおけばよかった。そうすれば、あいつらに何かしてやれたのに」って。
男として、父親として、やっぱり自分の力で家族を支えたいという気持ちは、どんなに歳を重ねても消えることはないらしい。でも同時に思うんだ。それだけが親の役目なのか、と。
振り返れば、お前が小さい頃、豪華なプレゼントを買ってあげた記憶はほとんどない。でも、釣りに行って泥だらけになった日や、一緒に自転車で遠くまで走った帰り道。そういうささやかな思い出のほうが、何倍も強く心に残っている。
きっと孫も、そういう時間の中で成長していくんじゃないかと思う。プレゼントやお金は、一時の喜びを生むかもしれない。でも、それ以上に大切なのは、「一緒に過ごす時間」や「どれだけ愛されているかを感じる瞬間」なんだと思うんだ。
だから、今の自分にできることを考えるようにしている。たとえば電話一本で孫の声を聞くこと。短い手紙を書いて、ほんのひと言でも思いを伝えること。そういうささやかなことでも、「父さんの愛情」は届くんじゃないかと思っている。
娘よ、父親としていつまでも力になりたい気持ちはある。でも、これからは肩肘張らずに、もっと心を込めたやり方で、家族との絆を深めていこうと思う。
「おじいちゃんには何も買ってもらわなかったけど、一緒に過ごした時間が何よりの宝物だった」と、いつか孫が思ってくれたら、それで十分だ。
愛情を伝えるのにお金は必要ない。大切なのは、心が伝わることだ。そして、娘よ。いつも頑張っているお前がいてくれることが、何よりの誇りだ。
父親として、これからもずっと見守っているよ。