風歌いの草原
今日も木こりが歌をうたう。
「晴れた日の木漏れ日は
美しいかな 美しいかな
まどろむ羊の子守唄
美しいかな 美しいかな」
山に響く木こりの声。
草原を歩く羊飼い。
「今日もいい声で歌っているね」
心の中で会話する。
木の枝を持ち、山々を眺めながら羊を追う。
祈りを伝えながら。
『美しい木々よ。
どうかさえずる鳥たちを優しく包んであげてくれ。
私たちに多くの糧を与えてくれる植物に
たくさんの栄養が行き渡るように』
夏の風は山々から川へ流れていく。
風の音は夏の葉を揺らし、花々の香りを運ぶ。
「美しいかな
美しいかな」
***
夕日が山に沈むとあたりは静まり肌寒くなる。
さぁ、今日も暖炉で暖まろう。
木こりが帰ってくるまでに豆のスープを作っておこう。
今夜は豆のスープとヤギのチーズ、木こりの友人が作ったライ麦パン。
「ごちそうだ!ごちそうだ!」
***
木こりが帰ると あたたかい暖炉のそばにはスープとチーズ、大きな丸いぱんが並べてあった。
「今日はごちそうだね」
「ああ、きっと美味しいと思うよ」
「もちろんさ!」
ふたりはあたたかい食事を楽しみながら、暖炉の前で語り合う。
窓から見える月が彼らを照らした。
「そろそろ寝よう」
「そうだね」
また朝がくる。
赤と緑の布は、落ち着いた色合いの柔らかな羊の毛で編まれたもの。
「さぁ、寝よう」
木こりは赤い布を、羊飼いは緑の布に包まれ、優しい月明かりに照らされながら夢の世界へと入っていった。