ただ好きだから、ひたすらに描き続けた人
先日、薮内正幸美術館というところへ行ってきました。
12月から3月末くらいまでは毎年冬期休業で、今年オープンしてからは初。(この日は写真を撮り忘れてしまったので、外観は去年の写真です。)
薮内正幸さんは、動物画家で絵本作家です。多くの方が、こどもの頃に薮内さんの絵本に触れたことがあると思います。
これとか、見たことあるんじゃないでしょうか。
現在の展示は「アフリカ サバンナのいきもの」なんですが、この展示の中で、1970年にポプラ社より刊行された『ちーたーのロンボ』という絵本の原画も展示されています。
この原画がですね、なんと、刊行から47年後の2017年に見つかったものなんだそう!!
全27点に欠損はなく、状態も非常に良く、47年前に描かれたとはとても思えないほど、本当に美しい色合いが残っていて、これはとてもめずらしいことなんだそうです。
これまで、薮内正幸さんご本人と編集者さんと印刷屋さんしか目にしていなかった原画。
絵本自体よりもずっとずっと鮮やかな色合いが、とても印象的でした。
現在は絶版となっているこの絵本ですが、現在の技術で、より美しい絵本となって再販してもらえないでしょうか。
薮内正幸さんの絵の素晴らしさは、毛の一本一本から細密に表現された動物から、絵も写真も超えた実物のような躍動感が溢れ出ているところですね。
骨格を勉強し尽くした薮内さんは、写真には絶対に収められないような動物のポーズも、想像で忠実に再現することができたりするのです。
館長である、息子の竜太さんといろいろお話しをしました。
竜太さんは、息子ではあるけれど、その観点からお父様を見ているのではなく、一人の薮内正幸という動物画家が、ただ動物が好きでそれを描くことが好きで、ただひたすらに誰よりも、ありえないような枚数の絵を描き続けてきたこと、
それによって拓かれた、薮内正幸のその後の仕事の功績を伝えていきたい、ファンを増やしていきたいという想いで館長をされていることを、改めてお伺いしました。
私もたまに絵本は見ますが、現代の絵本と比べると、やはり自分がこどもの頃に触れていた70~80年代以前に生まれた絵本は、うまく言えないけれど、なんだか本質的な感じがするんですよね。奇をてらわず、真実のありのままをこどもに語りかけているような、そんな気がするんですね。
原画を見ながら、『ちーたーのロンボ』を読んでいると、50年近く前に出版された作品なのに、全く古い感じがしないんですよね。
時代を反映するものが何も登場していないのと、動物たちの日常ってたぶん、雲や空がそこにあるように、永続的に続いていっているということと(そうじゃない動物や環境ももちろんありますが)、何より、毛の一本一本まで美しく描かれた絵の臨場感に、大人もこどももすっと引き込まれるのではないかなあと思います。
これも、一枚の絵に裏打ちされた、果てしない技術の積み重ね。
ただひたすらに、好きだから誰よりも多く、ありえない枚数の動物画を描き続けた薮内正幸さんの魅力を、淡々と伝え続ける竜太さんにも、いち経営者としての魅力を感じました。
また訪れたいです。