見出し画像

とみさわ昭仁 著『無限の本棚~手放す時代の蒐集論~』

山下陽光さんのこの記事を読んで、キンドルで読みました。

『無限の本棚』と『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』

さらっとタイトルを読んだら真逆の意味のようでいて、たくさんリンクする場面がありました。

とみさわさんは、ライター業などの傍ら、古本屋『マニタ書房』を経営されています。そこでは、とみさわさんが全国の古本屋を訪ねてまわって見つけてきた変な本だけを並べているそう。

元々とみさわさんはコレクターであり、多くのコレクターがはまるように、切手,テレカ,ジッポーライター,野球カード,ダムカード,レコードなど、あらゆるジャンルにわたって様々なものを集めていました。

でも、ザ・ドリフターズに関するグッズを集めていた時に、日本一のドリフグッズコレクターの方と出会ってしまった。この方は収入の半分をグッズ蒐集にあて、残りの半分をグッズ蒐集に使い、また俳優という職業柄、メンバーと知り合いになり、グッズを譲り受けていた。これに勝てるわけがない・・・と思ったときに、日本一になることの意味を考えたそうです。

~コレクションで日本一になるということの意味は何か。相手を負かしたいのではない。~

・・・あれ、なんかどこかで聞いたような気がする。。。これは佐々木さんが『ぼくモノ』の中で言っていた、モノが少ないことを競ってもしかたないというようなことと、考え方は同じなんじゃないかなあと思います。

~コレクターというのは、どうしてもコレクションの量を基準に優劣をはかりたがるところがある。(中略)だが、ふたつしかジュース缶を持っていない人が、コレクターとして劣っているとは、ぼくは思わない。(中略)コレクションの価値というのは、他者との比較論ではないのだ。~

~何度も言うように、コレクションは優劣ではないのだから。むしろ、数ばかりを誇るようなコレクションは恥ずかしいと思ったほうがいい。それなら、資金力のある者だけが勝つ世界になってしまう。~

ジッポーライターもずっと集めていたけれど、詳しくなるにつれ、マニアなら持っておくべきモデルがわかってきます。そうすると、コレクター仲間のコレクションは次第に同じようなものになってしまう。

~「他に誰も集めている者のいない、孤高のコレクター」でありたい~

とみさわさんは、まだ誰も集めたことがない、気づいてない蒐集テーマを自分が最初に発見することにコレクションの醍醐味があるとも仰っています。

また、エクセルでチェックリストをつくり、既に持っているものをダブって購入しないようにしています。それはならびに、たとえば自分が集めているものが全部で100種類世の中に存在するとしたら、今自分はどの位置まできているのかを確認して、蒐集の意欲を維持させるためにも必要だそう。


私は、2003~2006年くらいまで、インディーズバンドのライブを観にライブハウスに通っていた時に、いつどこでどのバンドのライブに行ったのかを記録して、更にそのライブレポートを書くサイトを作っていたことを思い出しました。

これは、モノを集めるということとは違うけれど、自分の経験を記録してかつ人にも見せたいという想いとしては、ほぼ同じことだったんじゃないかなあと思います。

当時はまだ個人のホームページを趣味で持っているという人は、自分の周りにはあまりいませんでした。

パソコンがとても苦手だった私が、ホームページビルダー(8だったかな?)を駆使して、ソフトを使ったとはいえ、なんとか自分でホームページを作り上げたことを今振り返ると、強い自己顕示欲は強い苦手意識をも凌駕するんだなということを深く思います。

時間もものすごくかかりました。泣きたいくらい大変でした。というかたぶん何度か泣きました。そして、ソフト自体も、今考えても死ぬほど使いづらかったと思います。今だったら当時のスキルでも、web上の無料ソフトを使って、10倍くらいクオリティの高いものを、30分くらいで作ることができると思います。

もうそのサイトは無いのですけれど、全部印刷して記録を残しておきました。(これはたぶん断捨離してないと思う。。。)死ぬほどショボいホームページでしたが、当時掲示板には凛として時雨のメンバーの方とかが、私の拙いライブレポートを読んで、感想を書き込んでくれていたりしました。嬉しかったなあ。。。

ライブハウスで働き始めたとき、同僚にそのサイトを見せたら、「へー。ライブの見方が違うね。だって俺同じくらいライブ見てるけどこんなふうに記録に残したいとか一切思わないもんね。」と言われたときに、すごく衝撃を受けました。

その時にたぶん、「自分が100%純粋に好き」と思っていたものの中には、自己顕示欲みたいなものも入っているんだなあということがよく分かりました。

今だとブログに、『今年読んだ本』とか連ねて書きたい気持ちも、近いものがあります。趣味を知ってほしい、分かる人と繋がりたいとも思っているんだけど、私のコレクションを見て欲しいという気持ちに近いものがあるんだと思います。


ちょっと話がそれましたが、とみさわさんは、最も仕事が充実していた時に住んでいた広い部屋では、仕事が充実していた分コレクションもどんどん増えていったそう。でも、その後、仕事が減り始めたり、家庭の事情があったりして、最終的に奥様と一緒に、実家の松戸に戻ることになります。

その時には、家財道具が全て入らないのはもちろん、自分のコレクションを置くスペースはどこにもないので、引越しをする前に身を切られるような思いでそれらを手放していくことになりました。

ここで注目したいのが、この言葉。

~コレクションの処分を繰り返すうちに、段々と愉快な気持ちになってきた。ものを手放すって、案外と気持ちのいいものだ。(中略)生まれてから、おおよそ四十年間、重度のコレクターとして生きてきたぼくは、この引越しを機にすっかり身軽になった。処分したのは本やガラクタといった、「物質」だが、それと同時に全身に取り憑いていた業のようなものが剥がれ落ちてしまったのだ。~

なんと!

ここまでこの本を読んできて、趣味が高じて物が多いとかいうレベルでは全然ない、あらゆるジャンルにわたり、筋金入りのコレクターであるとみさわさんが、こんなふうに思ったりするのです!

その後、とみさわさんは怪獣映画の魅力に目覚めたそう。レンタルビデオ店で、ありったけの怪獣映画のDVDを借り、毎日見続け、チェックリストを作ったとのこと。

いつしか映画を仕事にできないかと考え始めたけれど、怪獣映画のエキスパートはすでにたくさんいる。だから、『人の喰われる映画』というジャンルに特化したらどうかと考えて、ブログを始めたそう。

その中で、DVDが増えることよりも、チェックリストを埋めていくことに快感があることに気づき、コレクションの本質について考え、”コレクションとは、「物欲」と「整理欲」のふたつから成り立っていた”ということに気づいたそう。

そこで、現在の自分の欲求は「整理浴」だと分かり、それを「エアコレクター」と命名します。


・カードを発見しても、カードの名称と番号を手帳にメモするだけ。「カードを発見したという事実」を記入。

・物欲でなく、整理欲だからできる。集めるのはあくまで「情報」


私は自分自身をコレクターと思ったことはなかったけれど、実は「エアコレクター」だったんだなあと思いました。


また、とみさわさんは「日本一ブックオフに行く男」を自称されています。

『マニタ書房』の在庫の中には、ブックオフでせどりされたものも多い。

そして、とみさわさんは仕入れに行くだけではなく、日本全国に約900店舗ある「日本全国ブックオフ全支店リスト」を作った、そのことで、ブックオフに行くことが、エアコレクションになったのです。

とみさわさんがエアコレクターという概念を発見して、それが何故古本屋につながるのかというと、本棚は有限であり、でも、溜め込むことさえしなければ、永遠に本を買い続けることができるということが分かったからなのです。

本を売る、そのお金で旅に出たりお酒を飲んだり、また本やレコードを買い、また売る。見つけた本を読み、原稿を書く。そしてまた旅に出る。そういうサイクルを繰り返すことで生み出されるものは『無限』であるということなのです。

ああ、『無限の本棚』というのは、そういうことかと腑に落ちる。

なんて素晴らしい考え方なんだろう。

羨ましさを感じつつも、自分の生活にも置き換えることができないかと考えてみます。

これは、ミニマリストの人がよく言っている、ひとつ買ったらひとつ手放すということにも似ている部分があって、今手元にあるものをいかに大事に思うかという点は、量の多少という差があるだけで、たぶん同じ概念なんだと。

重要なのは、自分の好きな空間に、自分の嫌いなものや不要なものや意味不明なものがないということだと思うのです。

私はいつも、佐々木典士さんが好きだ・ファンだと言っているけれど、実は自分はミニマリストではないんですよね。。。。

そうは言っても、単身引越しくらいの物を処分したし、服に至っては40kgくらい、キロ単位で買い取ってくれる店で売りました。

かなりの断捨離はしたけれど、そんな部屋にもまだ不要なものはあるんです。(不思議でしょうがない。)

それでも、佐々木さんの本を読んで、ここ3年弱くらいの間、人生の中で最も多くの物を捨てて、その中で自分が好きなものや必要なものが見えてきたこと、また、これからも減らしていける楽しみがあること、そうやって暮らしている今の部屋や環境がとても好きになれたことは大きいと思っています。

『無限の本棚』を読んで思ったことは、私も自分の生活の中に今、無限の本棚を無意識のうちに見出していたのかもしれないということです。

今手元に有るものを、時間をかけて厳選していきたい。そう思っている中で、自分は新しい趣味や好きな本や人にもどんどん出会う。

それを取り入れながら、あるものを減らしながら、日々何かを一つずつ選んでいくような生活を、私はすごく愛しているんだと思います。

実際今、自分がいちばん好きなペースで生きている実感があって、その中で出会う人や物に、すごく縁を感じています。

私は私の無限の本棚を整えていくことが、きっとこれからの生活を豊かにしてくれるのだと思いました。

#とみさわ昭仁 #無限の本棚
#山下陽光 #バイトやめる学校 #途中でやめる #佐々木典士 #ミニマリスト #ミニマリズム #ぼくたちにもうモノは必要ない #ぼくモノ #ぼくたちは習慣でできている

=========================
~私のイベントお知らせ~
5月19日(土)@高円寺素人の乱12号店
山下陽光×佐々木典士 対談『これからの生き方』
対談・バイトやめる学校1,2時間目共に、まだお席あります。
どうそ宜しくお願いいたします。(投げ銭制です。)
【ご予約】
maricommu82@gmail.com
【イベント詳細】
http://www.3banme.net/entry/519


いろいろな方にインタビューをして、それをフリーマガジンにまとめて自費で発行しています。サポートをいただけたら、次回の取材とマガジン作成の費用に使わせていただきます。