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Jewels & Things 店主 沼崎真白さんにお聞きしました

山梨県甲府市の中心街で、ジュエリーショップでありながら、同時に、カフェ・バー・ギャラリーなど、様々な表情を持つJewels & Things(ジュエルズ アンド シングス) 。店主はジュエリーデザイナー兼バイヤーでもある沼崎真白(ぬまさき ましろ)さん。

仕事を楽しむことが同時に人生を充実させるという、沼崎さんの生き方そのものが表現されているようなこのお店には、やはりその様々な魅力に惹きつけられた人が集まってきます。

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ー “Jewels & Things ”をオープンするまでの、沼崎さんのお仕事について教えてください。

小さい頃から絵を描くのが好きで、高校卒業後は絵を描いて生活できないかと思ったんだよね。

でも自分の絵が商品になる仕事を考えたら、例えばイラストレーターや、服のデザイナーって、下積みの時間が長くて、なかなか自分の絵を描けなさそうだなあと思って。

その時、山梨には宝石の専門学校というものがあることを知ったんだよね。

山梨にはジュエリーメーカーがすごくたくさんあって、当時は商品がどんどん売れている時代だったから、学校を出ればすぐデザインをさせてもらえるんじゃないかという安易な考えで、宝石の専門学校に進学して。

就職活動の時には、面接に自分で描いた絵を持って行って、「僕はデザイナーとしてやりたいんです」と言って、一番反応が良かった会社にデザイナーとして就職して。当時はバブルで、実際すぐデザインをさせてもらえて、それがすぐ商品になってすぐ売れた、そういう時代だったんだよね。

ー ジュエリーメーカーの会社員として15年。独立して事務所を構えて15年。後半15年のうち、ここ3年間はこのお店も並行してやっているということですね。いつから独立したいと思っていたんですか?

ジュエリーメーカーの仕事は、大きく分けると、デザイン・製造・営業の3つになると思うんだけど、就職した時点でいつかは独立したいと思いつつ、デザインだけ独立っていうのは難しくて。

独立のためには製造もできなきゃと思って、製造メインの会社に再就職したんだけど、そこで自分の限界をすぐ感じて...

デザインをしていたので、デザイナーの意図を汲むことや、「こうした方がきれいに仕上がるよな...」といったイメージをすることは出来るんだけど、それが思うような形に出来なくて、「あぁ...僕には職人は向いてないな、センスがないや」って思ったんだよね。

そこで、自分の意志をちゃんと汲み取ってくれる職人さんと出会おうと思って、自分が職人になることは諦めて、最後は営業を学ぶために別の会社に就職して、そこで営業を徹底的に学んでから独立しました。

ー 会社員時代のお仕事について教えてください。

県内のジュエリーメーカーは基本的に出張が多いんだけど、僕がお世話になっていた会社は、その中でも特に多い方だったんだよね。

特に僕は、北海道・北陸・東京と3箇所のエリアを担当していたこともあって、家には月のうち1週間もいられればいい方。

ー すごいビジネスマンだったんですね。意外!

社畜だったね。と言っても、やらされてる感はなかったけど。

お客さんと会えるのはもちろん、それこそ会社の経費で海外も含めていろんな所に行けるのなんて最高じゃない?

デザインを描くだけじゃなく、営業職として、自分のデザインした商品を自分が売れるのも楽しくて、営業成績も良かったし、給料もそれなりに貰えていたし。

でも、上の子が生まれたのをきっかけに「このまま子供の成長を、出張帰りのたまにしか見られないのって悲しいな...」と思って。子育てにも積極的に関わっていきたかったし。

でね、カミさんに「給料半分になっちゃうかもしれないけど、独立してもいいかな?」って言って。

ー 自信があったんですね。

うーん・・・自信、とはまた違うかな。まだ三十半ばだし、やってダメでも命まで取られるわけではないし、何かあっても子供とカミさん食わしていけるくらいはできるでしょって思っていたかな。

タイミングが良かったっていうのもあるけど、何よりお客様に恵まれた、それに尽きるね。

仕事で大変なことは数えればきりがないけど、どのタイミングでも楽しんで出来たのは、周りの環境のおかげだと思う。

そのおかげで、目一杯子育てにも参加できたしね。

ー 独立してからの仕事はどんな感じなんですか?

事務作業からデザイン、仕入れ、営業活動から事務所の掃除まで基本的に一人、完全なるワンオペだよ。

自社工場があるんだけれど、ジュエリーって分業制だから、作るものによって依頼する先も、職人さんも違ったり...。

自分のところで企画デザイン、製造したものを卸したり、お客様から企画をもらったり、逆にこちらから企画の提案をしたり。それ以外にはオーダーメイドやリフォーム、リメイクが多いね。あと、異業種さんとのコラボレーションも積極的にやってるよ。

独立をして12年後にこの店(Jewels & Things)を作って、最初の1年間は本当に大変だったね。

ここをオープンして3年経つけど、ジュエリーメーカーとしての仕事は、独立当初から変わらず続けているけどね。

毎朝事務所に寄ってからその日の仕事内容のチェックをして、工場に行って段取りを打ち合わせして、昼前にここに来て、日によってだけれど18時~20時に店を閉めて工場に寄って帰るっていうのが平日のスケジュール。

金・土曜の夜はDJが入るイベントを毎週やっているので、それを切り盛りするって感じ。DJとして参加もしたりね♪

ー お店を持ちたいと思ったのはいつ頃からですか?

独立して11年ぐらい過ぎて、なんとなく店舗を持てたら面白いかなと思っていた時に、たまたま新聞で、商工会議所が空き店舗を紹介するサイトを立ち上げたっていう記事を見て、そこからこの店舗を見つけたんだよね。

ここオリオン・イースト通りは、昔からすごくおしゃれで個性的な通りだったから、ここの店舗が空いてるなら!と、その日のうちに迷わず決めたんだよね。

ここはジュエリーと、音楽や本やお酒など、色々なカルチャーを結びつけるコンセプトショップにしたくて、逆に言うと、カフェやバーとして訪れた、本来ジュエリーに興味がない人にも、ジュエリーに興味を持ってもらえる場所であったらいいなと思っています。

店舗って、開いててこそ意味があると思っているので、出張でどうしても...という日と年末年始以外はオープンしてます。

自分の休日はないけど、出張で東京のお客さんの所へ行く時は、今は1箇所か多くても2箇所にして、残りの時間はギャラリーや美術館を見て、楽しんで帰ってくるっていう日帰りのスタイルを基本にしていて。

店は出張で考えたことを咀嚼してアウトプットする場所で、自分のクリエイティビティも刺激してくれるし、誰かにとってもそんな場所になったらいいなあと思っています。

ー 最高ですね。

どうなんだろう。でも、若い頃から、絵を描いたり、 DJを やったり、フリーペーパーを作ったりと、自分で何かを表現するのは好きで、それを発表をする場が欲しいなとは思っていて。

アウトプット出来ない(しない)理由を『場所がない』ということで言い訳をしていた自分がいたんだけれど、こうして場所が出来ちゃったからさ、その言い訳も通用しない。

実際は楽しくて仕方がないよね。僕ももう50歳になったけれど、まだまだやりたいことはいっぱいいっぱいあるんだ。

最近は更に、このビルの3階の部屋を借りて、Atmosphere-SPACE-っていう、実験的な空間を作ったんだよね。6坪でベランダがちょっと広くて、本当に何もないコンクリート打ちっ放しの場所なんだけど、ライブができるようにしてる。

ここでは、エキシビジョンやアーティストのプロジェクトスペースとして空間を提供することで、街のカルチャー・ミーティングポイントの一役を担えたら...との思いがあるんだよね。

それと同時に、特に高校生や中学生なんかに貸してあげたいんだよね。

彼らが甲府の中心街に足を運ぶきっかけにもなったらいいなということもあるし、うちの息子もバンドをやっているんだけど、バンドを始めたばかりの頃は、ライブとなると集客がままならなくて。

そうすると自分たちでライブハウス側に結構お金を払わなきゃいけなかったりして...

自分たちが表現したいものも、集客を主軸に考えないと出来ないとか、そもそもあきらめちゃうっていうのをなんとかしてあげたくて。

ここは満足な環境じゃないかもしれないけど、場所代はいらないからとりあえずやってみて、自信がついたら、ちゃんとしたライブハウスで企画をしてみたらいいじゃんと思って。

DJ イベントや、ギャラリーとか、他にもいろいろなことに使ってもらえたらと思うけれど。

ー これからやりたいことはそういう感じなんですか?

ジュエリーに関しては、今置いてあるものはどちらかというとユニセックスだったり、比較的誰にでも受け入れられやすい、取り入れやすいデザインが中心なんだよね。

でも、これからはもう少し実験的なアイテムや、ファッションによりコミットした提案型のジュエリーなど、自社工場があるということをを最大限に生かした商品も扱いたいと思っていて。

販売している音楽に関しても、今よりもっとポイントを絞ったテーマ付けをして、それをより分かりやすいレイアウトで提案出来たらな...とか昼間のライブイベントをやりたいな...とか。

週末のDJイベントでは、ジャンルが偏らないようにするのと、基本的にチャージフリーにして、いろんな音楽のジャンルに気軽に触れられる場所にしたいと思って今までやってきたんだよね。

今の若い子は全然クラブに行かないけど、甲府にもいいクラブはあるので、そういう所に行くきっかけにもなったらいいなと思っていて。

だからイベントは基本的には0時~1時で終えて、その後は市内のクラブに「俺も行くからお前たちも行こうぜ!」って感じ。

ー 人をサポートするのが好きなんですね!

そう言ってくれる人や、「ここでいろんな人と出会えて僕の(私の)人生変わりました!」って言ってくれる子なんかもいて、それは素直に嬉しいしありがたいのだけれど、自分がやっていることは、飽くまで僕自身の表現の一環でしかないと思っていて。

この店でいろんなものをコラボレートしてるのは、誰かのために何かをしようっていうよりは、僕も一緒に楽しみたいし、一緒にこの空間を作ろうよっていう感じ。

ー それを生涯続けたいという感じですか?

店をオープンした時に、10年経ったら違うことをやりたいとは思っていて。

独立したときも10年経ったら何かをやりたいと思っていたんだよね。その時は店とは思っていなかったけど。

自分は、やりたいことをずっと温めてやっと実現させるっていうタイプではないから、また何か思い浮かんだらその瞬間からやりだすと思うんだよね。

店を持つまでも、出会いは多いほうだと思っていたけれど、店舗を持つと、出会いのスピードがもう加速度的に増えていって。

こういう雰囲気の店舗を構えていれば、自然とここに引っかかる人が来てくれて、そういう人との繋がりが3年間で自分の血になっていて、店を持つってやっぱりすごいなって思ってるんだよね。

そういう中で、これからきっとまたやりたいことが出てくると思うから、そういうものに出会えることを、楽しみにしています。

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2年ほど前に、雰囲気に惹かれてふらっと立ち寄ってから、甲府の中心街に行く時は必ず訪れる場所になったJewels&Things 。なんとなく惹かれた雰囲気には、やはり自分が好きなカルチャーや、店主沼崎さんの生き方が醸し出していたものだったんだなあということを、改めて感じました。

沼崎真白(ぬまさき ましろ)
Jewels & Things店主。ジュエリーメーカーで15年間デザインと営業を経験し、独立。12年後の2015年に、ジュエリーとカルチャーのコンセプトショップ Jewels & Thingsを甲府の中心街にオープン。メーカーとしての仕事と店舗の経営を両立しながら、より実験的なカルチャーの交差する場所を目指す。
Jewels & Things(ジュエルズ アンド シングス)
ジュエリーと、音楽・本・カフェ・バーなど、様々なカルチャーを結ぶコンセプトショップ。
山梨県甲府市丸の内1-14-14 オリオン共同ビル109
TEL : 055-232-1628
http://www.jewelsandthings.net

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いろいろな方にインタビューをして、それをフリーマガジンにまとめて自費で発行しています。サポートをいただけたら、次回の取材とマガジン作成の費用に使わせていただきます。