【第０章｜四人と夕陽と（空飛ぶ？）乗り物】〔第０章：第２節｜薇字名〕

『後ろ！』
　物心付いた頃から、わたしの頭の中では声﹅がしていた。
　声﹅と言っても、わたしの声﹅﹅﹅なのだから、これはきっと、一般的には「理性﹅﹅」と呼ぶ精神を指すのだ。そしてわたしはその理性﹅﹅を、どうしても静かにさせられない。
　理性。
　記憶や推測や経験に基づいて冷静に、的確な指示や感情の整理を手助けしてくれる、一種の思考システムの事。……だったはず？
　一般的には良い言葉で、だから今回もわたしより先に、危険に気付いて警告してくれた。

　ギャッシャアアアアアアン！！！！！！！

　振り向いた直後。
　齢十七年で、訊いた事の無い轟音と振動が響いた。
　正門と並行に立つ校舎――わたしたちよりも一学年上の先輩たちが使っていた教室を、まるで押し込むように、無鉄砲にも豪快に強く、自動車が深く突き刺さった﹅﹅﹅﹅﹅﹅。
　自動車。
　普通乗用車。
　乗り物。
『――なにッ！？』
　警告をくれても、理性さえ驚く出来事。
　突き刺さった自動車からの衝撃で、近くの教室のガラス窓が割れ広がる。
　いつも何気無く見ていたはずの白い校舎。ひしゃげた外壁から、破片や瓦礫が次々続々と崩れ始め、金属や鉄骨も露わになり、落ちていく。
「あっ、あれ……車、ですよ、ね……？」
　いつもなら考えてる事を口に出すのは苦手だけれど、いつもよりほど遠い光景に、無意識に漏れ出てしまっていた。
　誰でも良いから、誰かに、誰からでも、明確な答えが欲しかった。
「見えてるの、あたしだけじゃないよね？」
　驚きと疑いが、墓終さんと同調する。
『また来る！』
「離れよう！」
　理性が叫ぶと同時に、最初に動き出したのは絲色さんだった。
　右手で琴石九先生の手を握ると、正門から外へ。その動きに流されるように、墓終さんが続くと、勿論わたしも続く。
『危ないッ！！』
　絲色さんはすぐに急ブレーキ。
　正門の先は横一線の道路。
　直後、軽自動車が暴走したように、二人の前を高速で通り過ぎた。絲色さんも先生も、既すんでの所で轢かれずに済む。一歩遅れていたわたしたちも、肌に風を感じてしまうほどには、通り過ぎていった車との距離が危うかった。

　心臓が喚き始める。

　さらに続けて、数台の暴走車両が左から右へと走り抜け、バイクや軽トラックや、バスまでもが通過していく。わたしたちは慌てて、半開きの正門の影に身を屈めた。
『急にレース場になった？』
　文言はトボけたようだったけど、理性の言い様はわたしらしく、しっかりと焦っていた。
　全身から冷や汗も出始める。
　両足が熱い。背筋で波打つように、鳥肌が立って広がっていくのを感じる。わたし自身、体感よりも直感的に、自分が震えてる事もわかっていた。
『落ち着きなって』
　ジェンナ﹅﹅﹅﹅はそう言った。
　いつだったかは忘れたけど、小学二年生くらいの時に、わたしは自分の理性に「ジェンナ」という名前を付けた。「字名」と「ジェンナ」。恵まれてはいても、純粋に楽しかったとは言えない幼少期で、安直ながらも人生で初めての「名付け」だった。少しだけなんとなく嬉しかった事を覚えている。……小学三年生の時だっけ？
『小学二年生であってるよ！　それよりも見て！』
　左からきた車たちが、例の如く右へと。
　そして――、

　ぁアッ！

　悲鳴が出ないよう口を抑える。それがやっとだった。逃げ出したかったけど動けなかった。
『動かなくて正解！　…………詰まったんだろうね』
　ジェンナは焦りながらも、冷静に言葉にする。
　衝撃。
　振動。
　悲鳴。
　見たくはなかったけど、顔を動かす事もできない。震えが止まらない。目を逸せない。
　爆発や焦げる匂い。鉄の匂いや、塵芥の感触。
　数十メートル、右手側の先。
　潰し合って止まった車。血相を抱え、血塗れで出てくる人たち。
　立ち上がれるも足を引きずる人。もう息をしていない体に懸命に呼びかける人と、それを助けようとする煤だらけの家族。投げ出されて動かなくなった足。大破し、炎上するバイク。衝突し合った車。
「……なにが……なにが…………ど、どうして？」
　先生が、掠れた声で呟いた。
「逃げた方が良い」
　絲色さんが告げた。その声はいつもの朗らかなものではなく、真剣な深刻さを乗せて。
　わたしたち三人は絲色さんを見る。
　墓終さんは唾を呑んでから、
「……どこに？」
　と。震えていないけど、震えたがっているような口振りだった。
「どこでも良い。ここじゃないどこかに」
　絲色さんは、顎でクイッと先を示した。わたしたちは言われるがまま、視線を正面から遠くへと。
　天九ヶ丘高校は、街中にある。
　周辺はちょっとした住宅街を挟み、大きな通りとビル群に囲まれ、その先は街並みが広がっている場所に。
　利便性が高く、昨今の日本情勢を加味しても、街中にしては治安もそれほど悪くない。
　――はずだったのに、わたしたちを囲むように立ち並び、夕陽に照らされた高層ビル群は、轟々と黒い煙を上げていた。意識するとわかる。薄く聞こえる狂騒や音。
　どこか現実に感じない。
　見えないけれど、周りは火の海なのだと悟った。
『また来る！』
　また――わたしは上を見る。正門から向かって、右斜め前。
　今度の軽自動車は、回転はしていなかったけど、わたしたちはすぐさま首を引っ込めた。
　頭上二メートルほどの、かなり近くの上を飛び越した車は、校舎と正門の間に潰れるようにして落ちた。
　裏返った自動車。小さな「ボフッ」という音と共に、赤っぽい炎が上がる。
「逃げろ！」
『逃げて！』
　絲色さんとジェンナの声が重なった。
　振り返ろうとした瞬間。

　――――。

　視界が反転。
　そして暗転。

　車の爆発は思ったよりも衝撃が大きい。昔見た映画では、数メートル離れていても多少の問題はなさそうだったけれど、実際に体感してみればわかる。
　規模や威力は車種によるのかもしれないけど、離れていても吹き飛ばされてしまいそうなほど、体勢が大きく崩されてしまう。
　それをかなり近くで受けた。具体的には、ほんの数メートル先で。
　それも伏せさせられる直前に、もう一台別の車が落ちたのを見た。車二台分の爆発だった。
　わたし――わたしたちは、熱くて固くて肌に痛い、さっきまでレース場のようだったアスファルトへと投げ出されていた。
　呼吸がしにくい。口の中が気持ち悪い。
『大丈夫！　身体は動くよ。早く起きなって！』
　理性ジェンナの言う通り、体は痛くとも、立ち上がりは意外にもすんなりとだった。左腕は熱いし、右膝も痛い。靴下の中で、右足のどこかは切ってると思う。血が出てる痛みを如実に感じてる。
『右のくるぶし！　動けるうちに動いた方が良い！』
「薇さん！　大丈夫！？」
　先生が隣で立ち上がる。頬を少し切ってるけど、血は滲んでるだけ。流れ出たわけじゃないみたい。先生越しには、墓終さんが絲色さんに起こされているのが見えた。
　良かった。二人とも意識がある。
　煤塗れだけど。
『ボクらもだよ』
「……だ、大丈夫……です……」
　言いながら思う。なにが大丈夫なんだろう？
（何分経った？）
『一瞬だよ！　いいから逃げよう！　君が死んだらボクも死ぬ！』
　奥にいた二人が、満身創痍ながも駆け足で来た。
「大丈夫か？」
　わたしと先生が頷くと、絲色さんは無事な眼鏡の鼻当てを押した。
「こういう時の避難所って、どこだ？」
　わたしたちと同じくボロボロの男女三人が、わたしたちの横を走り抜けて行った。車が詰まって玉突き事故のようになってしまった方から、わたしたちを無視して、逃げるように。
「……学校、公民館、なんとかホール、なんとかセンター……とか？」
　墓終さんが苦々しく、自動車が突き刺さったままの校舎を指して言った。
『昔、こういう映画あったよね。月にロケットだったけど。――ボクらも、あっちに逃げるべき？』
　ジェンナは余裕を取り戻したらしい。
『そうでも無いよ。わけわかんないけど、逃げるなら急いだ方が良い』
「でも、あっちは街の方でしょ？　却って酷い様になってるんじゃない？」
　先生が言った直後。
　ブウウン。
　振動音だ。全員が気付いた。
　すぐ隣に立つ絲色さんが、ポケットから携帯画面端末を出した。画面は明るく、横からでも内容が見えた。
　メッセージアプリのアイコンの横に、文面が表示されていた。

　絲色寿：宴さん、無事ですか？

　絲色さんはポケットにしまうと、三人の視線に気付いた。
「――いもうと﹅﹅﹅﹅だよ。みんなもたぶん、家族からメッセージが――ッ！？」
『まだ来る！』
　絲色さんが顔を上げると同時に、ジェンナが頭の中で叫んだ。
　本日三度目の飛翔物体。
『「また」じゃなくて「まだ」！！　――三度目以上、だよ！　走って！！』
　まともに視界に収めたのは、一瞬だけだった。
　けど、その光景は永劫的に忘れないと思う。
　どこから飛んできたのか――どれほど遠くから飛んできたのかわからない、無数無差別の車たち。隕石のように次々と降ってきて、気付いたらわたしたちは、さっき逃げて行った人たちとは逆方向に、正門の右手側の詰まっていた車たちの方へと、走り出していた。
　凹んだり壊れている車の間を、隙間を縫うようにしてわたしたちは走る。
『右！　左！　そっち！』
　余裕があったらジェンナの声に従っても良かったけど、背後からの破壊音から、一刻も早く離れたかった。無我夢中で、わたしはとにかく前へ前へと走っていた。
『そっちじゃない！』
　先に前を走ってる絲色さん――器用にも右腕だけで、道路上に転がっていた瓦礫を飛び越えた。わたしも続…………。
　…………。
　足が止まった。
　……運動は、あまり得意じゃない。
『言ったでしょ？　さっさと迂回しなよ』
　大人しく従う。迂回がてらに振り向いた。正門からはもう遠く、車の雨は止まったらしい。
『雨っていうか、隕石だったね』
　逃げ惑う人も、わたしたち以外はもういない。
　生きている人は。
　見たくなかったし、見ないようにしていたけど…………足もとに、血溜まりや体の破片も見えていた。
　絶対に、ただの事故、じゃない。
「大丈夫？」
　先生が傍に。口呼吸も鼻呼吸もしたくないわたしに、先生は肩をさすってくれた。わたしはそのまま手を引かれるのに従って、壊れて動かない車たちを二人で迂回する。墓終さんは絲色さんと前に。わたしたちは――わたしは、出遅れだ。
『かもね。早く合流しよう』
　二人で並んで、焦りつつも軽めのペースで走る。今気付いたけど、先生もわたしも荷物を持ったままでいられている。背後から爆音が聞こえてこないだけで、多少、安心を感じていた。
『変なフラグ、立てないでよ』

　――その言葉は、少し遅かった。

　前を走っていた絲色さんと墓終さんが、急に立ち止まった。あと十数メートルで、学校沿いから離れられそうなのに。
『君が一番落ち着いてない』
（うるさい）
　この状況。全部意味が分からなくて、怖くて消えてしまいたい。
「……どうしたの？」
　先生が絲色さんに尋ねると、絲色さんは「しーっ」とわたしたちを制した。
『……君はこういうの、気付かないよね』
　ジェンナは気付いているらしい。わたしの理性とわたしのなにが違うのだろう。
　耳を澄ませて、目を凝らす。一人で動けないよりはマシだった。
　と、思いたかった。
「……」
　耳も目も必要は無かった。
　足の裏から響いてきたから。
　何か大きな振動。踏み締めるような、足音のような。
「静かに。こっちだ」
　絲色さんは凄い。小さくも冷静さの張り詰めた声で、すぐ近くの、ドアが開けっ放しのバスを示した。
『ボクも、冷静といえば冷静だけど？』
　理性にしては――冷静にしては、感情的な文句だ。
　言われるままに静かに素早く、わたしたちはバスに乗り込んだ。墓終さんが入り、先生が入り、続いてわたしと絲色さんが。
　奥まで進むと、バスが小さく揺れた。他には誰も乗っていないはずなのに。
　わたしたちはそれぞれ座席の隙間に身を屈め、バスが振動する度、割れた窓の小さなガラス片がパラパラと落ちていくのを見ていた。身を屈め、窓枠の端からその先の外を見る。

「……なにあれ……？」

　座席越しに、墓終さんが呟いた。
　わたしも、学校沿いから通りへ出る境――その先に覆う影を見て、同じ事を思った。

『…………嘘でしょ？』

　わたしたちに見えていたのは……………………なに？
　なんて言うか…………信じ難い、「何か」の生き物。
　半裸で青黒く、遠目からでもわかるほど荒い質の肌。額からは湾曲した二本の大きなツノ﹅﹅が突き出ていて、人の形に似ているけど、筋骨隆々のその身長は三メートル以上はありそうだ。
　その体は重そうに、しかし堂々と、一歩進むごとにアスファルトを揺らす。

「…………鬼﹅？」

　先生が呟いた。
　学校沿いの道の、十数メートル先。
　正門が向いていたのは、南の方角。わたしたちはその前の道を、西へ向かってきた。
　そして西には、南から北上する校庭の外周沿いの道が。その左から現れた、その大きな生き物（？）は、わたしたちのいる南の道には脇目も振らず、北へのしのし﹅﹅﹅﹅と歩いて行った。その姿は、校庭の柵越しに消える。
『動かないでよ』
　言われなくても。
　一生動きたくない気分だった。
　信じられないのか、わからないからなのか。
　誰も動いていない。
　バスの揺れは徐々に小さくなり、そして。
「……なにあれ」
　先生は、墓終さんと同じ事を呟いた。なんとなく絲色さんを見たけど、答えは誰も知らなそうだ。
「それよりもどうするか、でしょ」
　頼もしい墓終さんだったけど、あの鬼なにかは、すぐには忘れられそうにない。
『君には無理。忘れる事も、考える事も特に、ね』
　誰の所為だか。
「少し落ち着きたいな」
　先生がゆっくりと深い溜め息を吐いた。わたしも同感だ。
『そうやって呑気な事考えてると――！？』
「マッズいッ！！」
　絲色さんの叫び声が、聞こえた直後。

　――影が降り迫ってきた。

　巨大で、ちょうどこのバスほどの長さと大きさの。
　それが、この状況の最後の記憶だった。
　ちょうど――ちょうど、バスが。
　衝撃。
　激痛。
　暗転。

『――』
『――――マ――――って！』
　…………遠い。
　ボヤけた頭と、見えない視界。

『――――――――マジで起きなって！！』

　痛い！　右足首が痛みに騒ぎ、わたしは意図せず、わたしの意識が起きた。
（なに！？　なにが、どうなったの！？　ジェンナ！）
『ボクにも見えない！　まず目を開けてよ！』　
　わたしもジェンナも、視点は違えど、視野は同じ。
　言われたまま目を開く。
　見える光景は…………地獄絵図。
　横転したバスの中。
　――わたしは横たわっていた。
　ぼこぼこに潰された車体の側面――今のわたしたちが頭上にしている部分。
　そこに、別のバスが融合するように、潰し合うように歪み重なった、僅かな隙間にて。
　煙臭い。
　熱い。痛い。
　気持ち悪い。
　視界には煤が降り、火花や黒煙が揺らいで見える。思わず咳き込む。
　ぁっ！！　痛ッ！！
　反射的に動いた足首に、何かが鋭く突き刺さった。見えないけど、感覚が明瞭。
　細い！　深い！
　伏せた体勢で足を見る。バスの車体から突き出た金属片が、わたしの足首――たぶんちょうど、アキレス腱辺りに突き刺さっていた。

　痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い！！！！！！！！！！！！！！！！

　血が滴る。どくどくどくどくと。
『わかってるって！　痛いよ！　さっさと抜きなよ！　痛い痛い！！』
　理性が悲鳴を上げるほどの激痛。お尻に力を込めて、左足を一気に抜き下ろす。足首から盛大に血が噴き出す。
『痛いって！！　痛い痛い痛い痛い！！！！！！！！』
　伏せたままわたしは膝を曲げ、失いかけた我が子のように足を抱き寄せた。
　痛い！　怖い！　嫌だ！　痛い！
　動悸と汗と恐怖が止まらない。
　どうしようどうしようどうしようどうしよう！！！！！！！！

「……薇、字名……？」

　声が聞こえ、痛む背筋を無視して顔を上げると、少し先に絲色さんがいた。
　瞬きを意識すると、その姿がよく見えるようになる。
　血塗れ、煤まみれ、傷塗れ――火に囲まれ。
　眼鏡は掛けていなかった。
　わたしと同じように、横転したバスの割れたガラス窓に伏せ、右手を前に投げ出しているけど、その背中にはひしゃげたバスがのしかかっていて、とても動けそうには見えない。
　揺らぐ炎に鉄の焼ける匂い。見えている中で、火種の炸裂が無数に起こっており、油の臭いまでし始めた。
　業火に囲まれた、わたしたち。
「……ァ……」
　絲色さんのすぐ傍には、先生がいた。仰向けで手足を投げ出している。
　虫の息だけど、胸が僅かに上下していた。
　……墓終さん、は？
『……奥、見てみなよ…………』
　ジェンナの声は小さかった。
　肘を立て、体を持ち上げる。足に力が入らない所為で、これ以上は動けそうにない。
　意識が無い先生の奥に、墓終さんはいた。

　墓終さんは、いた﹅﹅。

「……ぁっ……あっ…………あぁっ……！？！？！？！？」
　墓終さんは――右肩から左腰に掛けて。

　完全に切り裂けていた﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅。

　先生と同じように、仰向けに。
　光を失った瞳は、開かれっ放しで。
　今にも身体を潰しそうな、ミシミシと音を立てるバスを見上げる。
　全身から血を流して。

　動かない。

「……薇、字名……」

　絲色さんは、右腕だけでバスの車体から這い出ようとしたけど、ボロボロの全身に力を込めても、その場から動けはしなかった。

「……動ける、か…………？」

　肩で息をし、額から血を流し、吐血しながら、絲色さんは言った。

「……先生を、連れて……逃げろ…………！」

　絲色さんの右腕が、割れたガラス窓に落ちた。
　空気が熱くなるのを、肌が強く感じる。
『…………無茶、言うよね…………』
　ジェンナがぼやいた。
　シューッとした音が聞こえる。

　潰し合うよう重なっていた、二つのバスが爆発した。