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チクタク、チクタク
時計は〈チクタク、チクタク〉と正確に時を刻む。
その速度は、"時間"という概念が誕生した大昔から、一定のリズムを保ち続けている。1年は365日、1日は24時間、1時間は60分、1分は60秒、1秒は....
〈チクタク、チクタク〉。あの1秒1秒を数える音は、少しの狂いもなく几帳面に、万国共通で等間隔に刻まれている。
しかし人間とは不思議なもの。世界中で毎日同じように刻まれ続ける〈チクタク、チクタク〉に対し、ひとりひとりが瞬間ごとに、まったく違う感覚を持っている。
遠距離恋愛で月に1度しか会えぬ恋人と過ごす、甘いひととき〈チクタク、チクタク〉
時限爆弾の解除で手に汗を握る、シークレット・エージェント〈チクタク、チクタク〉
西日が差すデスクに山積みになった書類と、過ぎゆく終業の時刻〈チクタク、チクタク〉
半年前から楽しみにしていた映画の上映までの、あと5分〈チクタク、チクタク〉
一世一代のプロポーズで指輪を差し出し、相手が口を開くまでの3秒間〈チクタク、チクタク〉
どれも同じ1秒、それでいて、どれも違う1秒。
人々は今日も同じ間隔で時間を刻みながら、〈チクタク、チクタク〉のあいだに、色とりどりの物語を編み込んでいく。
・・・
卓上ゲーム「Dixit(ディクシット)」の絵カードをランダムに1枚に引いて、短時間で作品をつくります。
たくさんぶら下がった時計が奏でる秒針の音を想像し、詩のようなものを書きました。今日は日曜日、時刻は深夜12時30分を回ったところ。あなたが刻む〈チクタク、チクタク〉と、私が刻む〈チクタク、チクタク〉も、同じようで、違うもの。
前回の作品はこちら。