【70】北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周 24日目 恵山岬〜函館② 2017年11月5日
ロードバイクでの「週末北海道一周」、2017年の最終日。津軽海峡に沿って、恵山岬から函館へ。バイパスを離れて、渚に沿う旧道を走っています。
次第に向かい風が強くなってきました。
▼ ここまでの記録はこちらです。
◆ 日浦岬
歳のせいか、3日続けてのロングライドになると、疲労感がスピードやケイデンスに正直に現れます。粋がってみても、残念ながらそうなってしまいます。
そんな日は、よく整備された道を突っ走るより、サンタロナカセ岬、道南金剛、日浦洞門と続く、まるで自転車乗りのためにあるようなこの旧道をのんびり走るのが、適度な感じで良い。爺むさいこと言ってるなあ、という自覚はあるけれど、事実だからしょうがない。
間もなくバイパスと合流。その先、やや長いトンネルが待ち構えています。ここへ突入する前に、サンタロナカセ岬あたりから見えていた半島の先端にある、白い灯台へ寄り道してみることにしました。本当は、そのまま海岸線を走る道があれば良いのですが、海沿いの旧道は今では放棄されてしまっている様子。
行止り地点まで走ってみました。この辺は海釣りの好ポイントらしく、釣り人が何人も、分厚いゴム長に着替えています。
東の方を見ると、入江の向こうには、先ほど通り過ぎた道南金剛の断崖の全景を見ることができました。その向こうには、まだ恵山が見えます。ここからのパノラマはなかなかのもの。恐らく、夕陽を浴びる様など荘厳で、もっと見応えがあることでしょう。
バイパスに戻り、緩やかにカーブした815メートルのトンネルを抜けました。この先は、小さな入江が連続しています。
札幌を出て以来、ここまでの行程ではあまり出会うことのなかったロードバイクと、すれ違う頻度が増えてきました。
函館のロードバイク乗りのみなさんにとって、ここは日常的なトレーニングコースなのでしょう。市街地から恵山まで往復してちょうど100Kmほど。こんな美しい海岸線が身近にあるとは羨ましい。内陸に入れば駒ケ岳をのぞむ湯ノ岱や大沼公園があります。冬は厳しいとはいえ、道内としては積雪が少なく、シーズンは長いほうでしょう。
わたしもかつて新潟に住んでいた頃は、北の笹川流れ、西の寺泊や出雲崎など美しい海岸線に恵まれ、たまにヒルクライムをやりたくなれば弥彦山がありました。仙台にいた頃は、その後震災で様相が変わってしまいましたが、奥松島や牡鹿半島がお気に入りでした。美しい海岸線を持つ地方都市に住める機会がまたあるでしょうか。
◆ 汐首岬〜戸井のアーチ橋
旧・戸井町に至り、静かな旧町内を抜けていきます。かつての町役場のあたりだったでしょうか、本州との間の架橋を祈願する看板がありました。
旧市街地の先にある汐首岬は、本州との間は17.5Km。北海道と本州の距離が最も近い地点です。
正直、ここに架橋したとしても、北海道と本州の間の人の移動は主に航空機。物資の移動は海上もしくは青函トンネルを利用した鉄道輸送の方が、コストも環境負荷も抑制できるのではないでしょうか。第一、運輸業界は人手不足、かつ「働き方改革」でドライバーの労働負荷も減らさねばならず、多少時間がかかったり欠航のリスクはあるにせよ、休憩時間を確保できるフェリー利用の方が現実的でしょう。
しかし、そんなことは、恐らく地元の方々も承知の上だと思います。
それでもこういう看板を掲げ続けるのは、人口流出が続き、若者が減り、学校も次々廃校になる過疎の町の、活性化への切なる願いの表れなのでしょうか。
汐首岬を回ると、いよいよ函館山までの海岸線の全容が視界に入ってきました。同時に、西からの向かい風がどかんと、まともにぶつかってきました。
岬の少し先に、未成線である旧国鉄戸井線のアーチ橋があります。岬を回る手前にも、小規模なアーチ橋やトンネルの跡を見られる箇所がありますが、よく知られているのは汐首岬から少し函館寄りに走ったところにあるものでしょう。
10時55分、そのアーチ橋に到着。頭上に覆いかぶさるようなアングルなので、なかなか見応えがあります。観光客らしき姿はなく、車が走り抜けていくばかり。
このアーチ橋の由来はあちこちに紹介されている通り、戦前に函館と戸井を結ぶ鉄道が計画され、工事が進められたものの、結局完成することなく計画は放棄され、このような構築物だけが残された、というものです。
◆ 立待岬へ
厳しい向かい風に加えて、昨日までの疲れが溜まっているのか、踏んでも踏んでも進みません。
函館山に向かって、湾曲した海岸線が伸び、彼方には函館の市街地も見えてきて、ちょっとは元気が出ても良いはずなのに、空は灰色、風も味方してくれず、これじゃどうにも覇気が出ない。
バイパスを外れ、静かな旧道を、高揚感もないまま、よたよたと走ります。時折、函館空港へ降下する飛行機が、上空を通過していきます。
ようやくその函館空港の脇あたりに到達しました。このあたりからは函館山が障壁になって風が遮られるのか、少し楽になりました。
連休最終日の真っ昼間故、がらんと人気のない湯の川温泉を走り抜け、漁火通りを西へ。この辺は、以前、ブロンプトンを持ってきて走ったことがあります。温泉街の先、終末処理場、少年刑務所、競輪場など、敬遠されがちな施設ばかりがな集められた一角を通り抜けます。
12時20分、海辺に立つ石川啄木像に到着し、しばし脚を休めました。
この辺は風が穏やか。浜ではカモメが餌をついばみ、沖にはオーロラのような光のカーテンが海面へと降り注いでいました。
函館駅前通りを右に分け、立待岬へ向かいます。
しばし家並みの間を走り、海岸線に出ると、車も少なく、快適な走行。函館山が眼前に迫り、立待岬の手前にある墓地もはっきりと視認できます。わだちを繋いでここまできたのだなあ、と思うと、多少は感慨深いものもあります。
立待岬の手前にある激坂を登り、岬へ。
岬に立った途端、強風がどかんとぶつかってきました。空港からここまでは、函館山が障壁になって西風を防いでくれていたのが、断崖のきわから外れて遮るものがなくなったのです。
誇張ではなく、本当に吹き飛ばされそうな強風でした。
寒々しい岬には人影もまばら。たちまち身体が冷え、お腹が空いてきました。
早々に退散。
◆ 家路へ〜2017年の行程を終えて
ここからは函館山の山麓の道を走ります。山肌の急坂をもうひと登りして、下ったところが函館公園、紅葉がちょうど見頃でした。しかし、立待岬の強風と、その後に続いた急坂で元気を使い果たし、横目で眺めるだけで通り過ぎます。
今日は朝食はしっかり食べたし、途中で補給もとってきましたが、エネルギーが枯渇し、太ももが悲鳴をあげている状態です。向かい風がかなり堪えているのでしょうか。
帰りの新幹線は、函館新北斗駅を17時21分発。まだまだ時間に余裕はあり、七重浜経由で新幹線の駅まで自走することも考えてはいました。だが、もはやとてもそんな気力はありません。
取り敢えず観光客で賑わう元町地区を横切り、外人墓地のある函館山北麓まで走りました。人影は少なく、丸々と太った猫ばかりが目に付きました。
とにかく、何か腹に入れないことには、次の行動の気力も湧きません。
函館のB級グルメといえば、ラッキーピエロとハセストの焼鳥丼が双璧と思っているのだけれど、連休なので大混雑が予想されます。
以前、北海道の情報誌に、弁天町のカフェが二軒ほど紹介されていました。そのうちの一軒に入り、オムライスとコーヒーで一息つきました。
中途半端に時間が余ってしまったので、金森倉庫をブラブラして時間を潰し、16時過ぎに、早くもすっかり暗くなった函館駅駅前でロードバイクをたたみ、満員の「はこだてライナー」で新函館北斗へ向かい、家路につきました。
週末北海道一周 3年目は、目標にしていた函館には何とかタッチして終了しました。
1年目、2年目は、行く先々で待ち受けている風景との出会い、旅先の美味しい食べ物とお酒、またそこで出会う人々との束の間の触れ合いなどに心躍らせながら走っていました。
しかし、3年目は何だか、前年までのような歓びを感じられない日が多かった。
なかなか天候に恵まれなかったこともあるでしょう。本当に爽やかな自転車日和といえるのは、日高を走った2日間くらいでした。それに、道北•道東の日本離れした超然とした感すらある風景の中から、道央•道南に入り、見慣れたチェーンストアの看板が並ぶ交通量の多い道を走る日が増えたこともあるかもしれません。
でも多分、それだけではなく、海外生活から北海道に戻ってきて、四季の移ろいの美しさが素直に感じられた2年前からの、自分の心持ちの変化もあるのでしょう。何だかんだで、この年も5回、北海道へ走りにやって来て、マンネリ化も否定できません。自分の中で気持ちが熟すのを、少し待つべき時期なのでしょうか。
ー 第24日 以上 ー
【本日の走行記録】
走行距離 79.8Km 走行時間 4時間04分
平均時速 19.6Km/h Max. 52.6Km/h
獲得標高 1240m 消費カロリー 1996kCal
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24日目は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
その後、2018年は「週末北海道一周」は1年間中断。平成から令和への移行を前にした2019年春に再開しました。宜しければ続きもご笑覧ください。
私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、そのほかの自転車旅や海外旅行の記録などを綴っています。宜しければこちらもご覧頂ければ幸いです。
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